2021/04/28 茹でガエル危機② ーー【チャイナ・クライシス/中国依存への警鐘】ーー
以下は 2021年4月28日のオートメーション新聞第252号に掲載された寄稿記事です)

日本の製造業再起動に向けて

茹でガエル危機②『チャイナ・クライシス/中国依存への警鐘』

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コロナ禍により、人々の行動様式や価値観が大きく変化した。ニューノーマル社会に適合する中小製造業の経営は、好むと好まざるとに関わらず大きな戦略変更が余儀なくされている。IoT・DX化などによる業態転換の必然性もさることながら、工場経営を取り巻く外部環境も激変しており、多方面からの情報収集が必須となっている。

ところが連日のテレビニュースは新型コロナ関連で占められ、コロナ危機を煽る報道に終始している。主要なテレビ局が世界の重要な潮流変化を取り上げ、丁寧に解説を加える事は少ない。テレビだけの情報では、世界情勢に鈍重となり『茹でガエル』となっても不思議ではない。

前回から中小製造業経営者の『茹でガエル』を回避し、将来のあるべき姿(To-Beモデル)への検討を目的に、『茹でガエル危機』と題する12回の連載をスタートした。副題は『NNF(ニューノーマル工場)への変革』である。

NNFとは、New Normal Factory(ニューノーマル工場)の略であり、アフターコロナ時代の価値観に合致した高収益企業を目指し、デジタル変革(DX)による業態転換を実現した『中小製造業の未来工場』を意味する言葉でもある。今回は、連載の第1回でも触れた中国依存への警鐘を取り上げる。

『コロナが終息したら景気は急回復する』との楽観的論調が多く見られるが、国際社会では中国共産党の野心が地政学的危機となって我々を襲ってきている。日本人にとって(経済的な)中国依存はわが身を滅ぼす悪魔であり、中国依存への警鐘が『茹でガエル回避』の必須条件である。現在の日本経済は想像以上に中国依存で成り立っている。

中国なしでは日本の経済成長は望めない。ところが、米国・EUを始めとした国際社会は、中国の政治的横暴に強く反発し中国包囲網を強めて、強烈な中国離れに舵を切っている。中国は『チャイナ・ドリーム』の対象から、一変して『チャイナ・クライシス(危機)』に変わった。チャイナ・クライシスは、日本経済に大きな影響を及ぼす事は必至である。

中国に進出した大手製造各社のリショアリング(国内への製造回帰)が加速し、国内中小製造業の受注が急増するプラス期待も大きく、すでに中国からの撤退企業からの受注が増大している事例も出ている。半面、チャイナ・クライシスは、中国をマーケットとする輸出産業が全滅し、大不況に陥る危惧がある。

特に工作機械・建設機械・ロボット・半導体・FA機器などの業界は、チャイナ・クライシスの直撃弾を受ける可能性が高い。これらの中国依存業種が発注元である中小製造業は、今の内に発注元の追加・変更を検討しないと、突然の受注減少に巻き込まれる可能性も否定できない。

今の中国には、チャイナ・クライシスの欠片も見られず、『チャイナ・パラダイス』の真っただ中である。コロナ禍に悩まされる世界各国を尻目に、経済は垂直的な立ち上げとなって、中国式アフターコロナを謳歌しており、強力な経済力を背景に『核心的利益』と称する覇権主義を強行し、歯に衣着せぬ『軍事力増強』を発表。チベット・ウイグル・南シナ海・香港を強行し、残る尖閣・台湾への侵攻チャンスを画策している。

このような人権無視中国に対し、米国・EUが先導する自由主義国家では警戒心が強まり、中国排除の圧力が増大し、冷戦危機が現実味を帯びている。中国国内も歪な状態が続いており、習近平も国内に多くの反発勢力を抱え、満身創痍と聞く。

国際社会では四面楚歌の中国は退路が断たれているが、共産党独裁のゴリ押しで軍事力の増大とインフラ投資に勢いは収まらず、野心を次々と実現させ、『中国一人勝ち』が避けられない状況である。この中国の動きに、欧米各国は中国離れに大きく舵を切っている。

今日まで比較的親中路線を歩んできた日本も、今回の日米首脳会談の共同声明では、突然中国の尻尾を踏む強烈なサプライズを発表した。米国と共同し『台湾防衛』を発表したのである。案の定、中国は猛反発をしている。衝撃的な台湾重視の背景には、尖閣・台湾の防衛に加え、米国が恐れる『半導体サプライチェーンの毀損』がある。

近年のあらゆる工業製品には半導体が必須となっており、半導体需要は増大の一途をたどっている。しかしその製造は台湾や韓国が牛耳っており、万が一中国が台湾を併合したら半導体の供給が途絶え、重要なサプライチェーン危機が生じる事をバイデン政権は憂慮している。日本はこの防衛に全力を尽くす役割を担う。

半導体や半導体装置産業などの製造が大きく変化する兆しでもある。かつての『オイルショック』に匹敵する『半導体ショック』への警戒が米国の根底にある。今回の日米首脳会談の趣旨は、日米連携による『半導体ショック防衛』であったと言っても過言ではない。

米国は、さらに膨大な国家予算を投入し、半導体製造の主力を米国国内に移動することも戦略の柱に置いている。中国の市場と製造拠点の魅惑から、中国に釘付けとなり『中国依存・中国頼み』となっている日本の製造業が目を覚ます時がやってきた。

中国との経済的協調路線を熱望する経団連も、中国に忖度し『あいまい外交』に終始する日本政府も、覚悟を決めて中国と対峙する時がやってきている。今後米国から『中国への経済封鎖』と『日本の防衛力強化』の強い要請が出されることも明白である。台湾・沖縄への軍事侵攻を狙う中国に、日本の経済が依存しているのは、あまりにも不自然な状況である。

尖閣で軍事衝突が起きても、日本の大手製造業は中国依存を続けるのだろうか? 日中軍事衝突? 日中経済封鎖? 中国自らの経済崩壊? など何が起きるかは分からないが、確実に何かが起きるだろう。その時には日本の中国依存経済は終焉となり、壮大なパラダイム・シフトが起きる。








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著者 高木俊郎
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