2023/01/25 2023年中小製造業の吉凶ーー【『天気晴朗なれども波高し』DXが貢献する事実物語】ーー
以下は 2023年1月25日のオートメーション新聞第315に掲載された寄稿記事です)

​​2023年中小製造業の吉凶


『天気晴朗なれども波高し』DXが貢献する事実物語』



ーー

あけましておめでとうございます。世界的にコロナ禍は終息に向かっており、昨年の年明けと比較すると、世の中のコロナに対する警戒心には雲泥の差がある。やっと活況を取り戻しつつある良い雰囲気のお正月である。久方ぶりに開催の賀詞交歓会も盛り上がりを見せており、筆者も多くの方々と賀詞交歓会でお会いし、勇気づけられるコメントを多数頂いた。

今回は、製造業界の内外環境を踏まえ、中小製造業界の予測を立てつつ、今年の中小製造業の吉凶を占ってみたい。2023年のキーワードは『天気晴朗なれども波高し』である。今年は総じて受注環境は晴天である。『天気晴朗』、多くの中小製造業は過去にない受注に見舞われるであろう。

自動車のEVシフトによる自動車エンジンの製造衰退など、悲観的な報道も目につくが、円安基調を背景とした「リショアリング(製造の日本回帰)」などにより、中国はじめ諸外国から膨大な仕事が日本に回帰するので、中小製造業には有史以来の膨大な受注が舞い込んで来るのは明白である。

ところが『天気晴朗』といって浮かれているのは危険である。「人手不足」という深刻な課題が存在し、多くの中小製造業がこの課題に直面すると思われる。昨年22年、突然の円安に襲われた。諸物価高騰など、生活圧迫が連日のごとく報じられる一方で、完成品メーカー・大企業は好決算に沸いている。

円安はメディア報道の通り、電気・ガスなどの値上げによる「コストプッシュ・インフレ」により庶民の生活を圧迫する悪影響を否定できないが、1985年のプラザ合意以降、30年以上にわたり苦しめられた円高が、突然霧が晴れるように消滅したことの意義は極めて大きい。今年は、海外に流出した仕事が日本に本格還流する元年となる。

特に中国は、すでに国際的サプライチェーンの製造立国としての地位を失っており、日本企業の中国撤退や日本への製造回帰は必須となった。この傾向は昨年から始まっており、多くの中小製造業はこの流れを察し、国内生産の強化を経営方針とし、国内工場の生産性向上への打ち手を講じている。

この事実を裏付ける興味深い事実がある。日本鍛圧機械工業会は、22年の鍛圧機械の受注実績は、『前年比12.5%増と2年連続増加となり、(過去最高額の)18年に匹敵する高いレベル』と発表した。日刊工業新聞はこの発表をうけて、『コロナ禍からの回復鮮明』『鍛圧機械受注最高額に匹敵』と大々的に報道。補助金での押し上げ効果にも言及しつつ、今後の動向にも楽観的な報道をしている。

昨今の日本には、なんとなく不景気ムードがある中で、昨年『過去最高水準の設備導入が行われた』という発表に驚愕し、イメージとの違いに当惑される御仁も多いと思うが、これが事実である。では日本の中小製造業は、最新マシンの導入で明るい未来が待っているのか? と問えば、その答えはNOである。

『最新マシンを導入すれば経営は安泰』など、そう簡単に問屋は卸さない。少子高齢化により、労働人口の減少は顕著であり、中小製造業の「人手不足」は深刻である。どんなに受注が増えても、最新マシンを導入しても人材なくして成り立たない。人材不足の『波高し』である。数年前、移民法改正を背景に外国人労働者の活用が話題となり、『積極的に外国人労働者を活用しよう』とする風潮が中小製造業に蔓延したことがある。

このトレンドはコロナ禍によって下火となったが、冷静に考えれば、今日の中小製造業の人手不足は外国人労働者で解決できるほど簡単な問題ではない。ここで、筆者が直近で出会った事実を紹介する。静岡県のM社。社長と奥さまに将来の後継者の息子が経営する家族的中小製造業。従業員30人の金属加工の会社である。

昨年はコロナや鋼材価格の高騰で苦しめられたが、近隣の発注元から大量の受注案件が舞い込んだ。とてもうれしい悲鳴であるが、社長の奥さまが仕切っている事務所が大パニックに陥り、工場操業が悪化した。この苦境をDXにより克服した物語を紹介する。事務所では、受注処理や工場への指示書の発行から売上処理と請求書発行・経理処理など、広範囲にわたる仕事をこなしているが、従来のキャパシティーを超える業務が増え、残業が常態化する事態となっており、人材採用を試みても結果は採用ゼロ。

事務所はギリギリの状態で仕事をこなしていた。さらに大量の新規案件が舞い込んだ直後、不幸にして奥さまがコロナに罹患した。事務所は大パニックとなり、工場への指示書も発行できず、工場が稼働できなくなった。事務所の人手不足が招いた災難である。しかしM社では、現在RPA(ソフトロボット)を活用し、事務所工程の大幅省人化を推進し、大成功を収めている。23年の『波高し』の克服は、RPAなどの最新技術活用におけるDX化に実現に尽きる。DX化とは、まさにベテラン人材のアシスタントを、担う仕組みの構築である。













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著者 高木俊郎
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2023/01/12 新年特別寄稿 中小製造業の再起動ーー【チャンスを活かす2023年 『天気晴朗なれども波高し』】ーー
(以下は 2023年1月11日のオートメーション新聞 新年特別号に掲載された寄稿記事です)

新年特別寄稿 中小製造業の再起動




ーーチャンスを活かす2023年
『天気晴朗なれども波高し』ーー


序文・・日露戦争の教訓

ロシアのウクライナ侵攻が世間を騒がせている。実態は、米国・ロシアとの代理戦争との声も多いが、約120年前にも似たようなことが起きている。日本が当事者となった「日露戦争」である。日本はロシアとの死闘を演じたが、裏に控えていたのは米英である。時代は明治の後半。対馬沖の日本海で、日本とロシアの海戦「日本海海戦」が勃発し、日本連合艦隊が勝利した。

歴史をひもとくと、当時のロシア・バルチック艦隊は、戦艦11隻と巡洋艦など計38隻の巨大艦隊で ある。向かう日本連合艦隊はたったの戦艦4隻。日本の勝利を予想する国はどこにもなかったが、結果はバルチック艦隊は全滅。半面、日本連合艦隊はほぼ無傷、という驚愕の結果が世界の歴史に刻まれた。

この戦争結果は偶然ではなく、緻密に練られた日本連合艦隊の戦術的成果である。その詳細は割愛するが、その要因は『個々の力ではなく総合力』の勝利であり、『最新電子技術の活用』の力であることが、歴史上の史実として解説されている。日本連合艦隊の勝利には、中小製造業のこれからの経営に通じる貴重な教訓が潜んでいる。

今回は、2023年の新年特別号としてこの教訓をベースに中小製造業の勝ち残りの『戦略・戦術』を論じていきたい。大型戦艦は大企業に例えることができる。戦艦の周りを囲む巡洋艦などの小型艦が中小企業である。巨大な大企業と言うべき大型戦艦は、すごい攻撃力と防衛力を有する半面で動きが鈍く、大砲を一発打つにも時間がかかる。

ところが、小型艦は動きが速い。戦艦で劣る日本連合艦隊は、巡洋艦の早期建造に着手した。防衛力は弱いが建造までの時間を優先し、日本郵便の船を改造し、数をそろえることを優先した。その結果、高速巡洋艦などを加えた小型艦の数がそろい、素早い動きができる日本連合艦隊が形成された。

日本連合艦隊は、大企業を頂点とするピラミッド構造の「系列」によく似ている。日本連合艦隊はなぜ強かったのか?この理由に、中小製造業の経営に必須となる教訓がある。

明治時代のDX

その答えは、『日本連合艦隊は、最新技術を駆使した唯一の艦隊であった』という事実である。現代用語で言えば『DX艦隊』である。日本連合艦隊は無線通信技術によるDX化の実現で、艦隊としての『つながる』の実現し、無駄のない攻撃を繰り返す『総合力』によって勝利した。日本艦隊は世界で最初の『DX艦隊』である。

当時、どの海軍でも無線通信装置を積んではいなかったが、日本連合艦隊は、駆逐艦以上の全艦船に国産の「三六式(さんろくしき)無線通信機」を搭載し、連携を取りながら戦いを遂行した。無線通信技術は、当時の最先端技術である。マルコーニが大西洋横断無線通信に成功したのは、この海戦の4年前。

たった4年間の間に、国産の「三六式無線通信機」の開発・量産に成功し、日本海海戦時にはすでに各艦船に装備し運用されていた。世界的に驚愕する事実である。現在の中小製造業も、DXなくして勝てるはずがない。

天気晴朗なれども波高し

『天気晴朗なれども波高し』は、日本海海戦前夜の気象予測である。この予想をもとに、高い波を生かした小型艦活用戦術を練って海戦にのぞんだ。明治時代の中央気象台のレベルの高さにも驚くが、気象という外部環境を的確に予測し、小型艦の優位性を最大限に発揮する『丁字戦法』を決断し実行した、日本海軍の実行力には脱帽である。波が高いと、動きの鈍い巨大戦艦より、動きが速い小型艦が有利。

巨大戦艦は、巨大砲を打って修正するのに時間がかかり、高い波では威力が発揮しづらい。半面、日本連合艦隊は小型艦での高速連続掃射の戦術で勝利を得ている。外部環境を予測し対応することの重要性をあらためて認識させられる歴史的事実である。激動する23年において、中小製造業の経営判断にも、外部環境を的確に捉える目が必要である。ここからは、外部環境を俯瞰(ふかん)的に捉え、中小製造業の23年トレンドを予測する。

2023トレンド予測①
『天気晴朗』
※再起動の絶好のチャンス到来

23年の日本の製造業を取り巻く環境は、明らかに『天気晴朗なれども波高し』である。中小製造業には再起動のチャンス到来である。40年近くの月日を経て、日本には超円高不安が一掃された。コストプッシュによるインフレ加速など、庶民生活を直撃する悪弊はあるものの、輸出構造をもつ完成品メーカーは、円安差益による恩恵で好決算が続いている。

23年は、米中の景気悪化で国際経済にはブレーキがかかるものの、日本国内ではさらに需要が増大するだろう。円安によりプラザ合意以降40年近く続いた「製造の海外移転」の巻き戻しが始まっている。リショアリング(製造業の国内回帰)の本格化である。また完成品メーカーは、半導体などの調達問題で、製造できず多くの受注残を抱えている。23年は、国内製造の需要が増大し、高水準の受注環境が続く年となる。『天気晴朗』に疑いの余地はない。

2023トレンド予測②
『波高し』
※変化の津波・パラダイムシフト

「天気晴朗」を手放しで喜ぶのは早計であり、「波高し」の危機がある。昭和の高度成長時代は、「天気晴朗・波低し」であった。受注量が増え『最新マシンを買えばもうかった』時代であるが、そんな時代はとっくに消滅している。『仕事が増えたら機械を買えば良い。それでもうかる』という『かつての常識』は、今は通用しない。


変化の津波をパラダイムシフトと表現しても良いが、その最大の要因は「人手不足」である。熟練工人口は急速に減ってくる。熟練工に依存した「ものづくり」は終焉する。昭和は『機械が希少価値』、そして今は『人が希少価値』である。

2023トレンド予測③
『外国人労働者の危機』
※大量退職に悩む社長様

深刻な人手不足は、外国人労働者では解決しない。人手不足の現象は今日(こんにち)も起きているが、23年からはさらに深刻な課題となる。米国の製造業にはフォアマン(foreman)と呼ぶ専門職が必ずいる。企業によっては、スーパーバイザー(superviser)と呼ぶ場合があるが、日本では作業現場の管理を行う班長さんと同じポジションであるが、職務分掌が全く違う。

米国のフォアマンは、(素人の)作業者が仕事のできる環境を作る役割であり、移民労働者などを2シフト、3シフトで働かせる環境を作り出すのが仕事である。作業段取りを工夫し、実際に段取り作業を行う。加工の実作業をするのは、あくまで作業者であり、フォアマンは「段取り」だけ行う。ところが日本では、班長さん・ベテラン社員から新入社員、そしてアルバイト・外国人労働者まで皆が実作業に従事する。

社長や工場長が現場の実作業を行う企業も不思議ではない。この仕組みでは、これから人手不足がますます深刻化する。日本は単純労働者(素人)を使って製造現場を運営する環境がない。長年続いた日本の中小製造業の労働形態はすでに崩壊している。これを解決しない限り、ある時に「大量退職」、そして新規採用も絶望。23年にはこれに悩む社長様が増殖する。

2023トレンド予測④
『機械イノベーションの終焉』
※最新機械を買っても
もうからない企業が続出

機械の進化トレンドに触れてみたい。精密板金業界では1970年初頭にアマダでNCタレットパンチプレス(通称タレパン)が開発され、70年代・80年代に爆発的に売れ、タレパンが市場に定着した。この機械の生産性向上は驚異的で、従来比の10倍以上を誇っていた。当然導入した企業の生産性は急上昇し、もうかる機械として市場に大いに貢献した。以降90年代に入って、レーザ加工機のイノベーションが本格化し、現在に至っている。

ところが近年、マシンのイノベーションが足踏み状態である。旧型機の入れ替え需要は活発であるが、古くなってメンテナンスができないので入れ替えるといった非積極的な理由が多く、機械を入れ替えても大きな生産性向上に貢献しなくなった。機械のイノベーションが足踏み状態なので、機械の入れ替え・増設では企業発展は望めない。

2023トレンド予測⑤
『量産・大型化の潮流』
※多品種少量・短納期だけでは通用せず

今日まで、日本の中小製造業は「多品種少量生産・短納期」を旗印に、徹底したQCDを実施してきた。『Just In Time』は日本のお家芸として、自他ともに誇りを持って発展したのも事実であるが、その後遺症として「量産」に対応できない中小製造業が多く存在する。23年は、リショアリングを背景に、海外で生産していた「量産」まで日本に戻ってくると思われる。

QCDの、Q(品質)とD(納期)に心血を注いできた日本のものづくり遺伝子は、今後の差別化の要因ではあるが、C(コスト)を意識した「量産」の仕事が増大するトレンドがある。また、半導体製造装置を代表に、製品の大型化が進んでおり、中小製造業に委託される仕事も大型化のトレンドが起きている。

2023トレンド予測⑥
『見積パニック』
※転注の横行

大手完成品メーカーは、大なり小なり海外依存度があるので、22年の円安差益の影響を受けて、史上空前の好決算に湧いている。ところが、新製品や新規市場の開拓など企業努力でつかんだ好決算ではないので、企業体質は変わっていない。にもかかわらず、新規の見積もりが増大している。その背景は、鋼材や原材料の高騰で、下請け各社から値上げ要求を受けている完成品メーカーでは、値上げに応じる半面で、新規の外注探しに躍起となっている企業が多く存在する。

転注(てんちゅう)とは、『注文を競合会社に転じること』のビジネス用語であるが、23年は転注の横行トレンドがある。中小製造業には膨大な見積もり依頼が蔓延しており、見積パニックは23年の重要なトレンドである。

2023トレンド予測⑦
『中小製造業の淘汰』
※廃業、その半面で急成長企業が続出

10年後に半数の中小製造業が消滅する。倒産ではなく消滅である。倒産とは、借りたお金を返せないとか、買った品物の代金を払えない、税金や給与が払えない、となり、経済活動を続けることのできない(資金ショート)となる「経営破綻」を指す。昔は、多くの倒産があったが、これからは廃業・M/Aなどで消滅していく企業が激増する。その理由は人手不足や後継者不足が原因である。一方で、積極的な企業展開を行い、どんどん発展させる企業が台頭する。二極化という言葉がかねてより使われてきたが、存続のできない企業と急成長する企業に分かれる二極化は、淘汰(とうた)の始まりを意味する。23年は淘汰元年である。

2023トレンド予測⑧
『デジタル5Sの普及』
※DXの1丁目1番地

23年は真のDX実施年である。その背景には、人類の英知を絞った最新技術を中小製造業が活用する環境が整った事実を認識しなければならない。その技術とは、①インターネット②クラウド③RPA④AIである。DXを解説する専門家は、デジタルツインとかVR(バーチャルリアリティ)など、さまざまな最新技術を紹介しているが、23年の中小製造業には不要である。前述の4つの技術の活用は、中小製造業に即利益につながる特効薬である。

まとめ

山に降った雨が、太平洋に流れるのか、日本海に流れるのかの分岐点を『分水嶺(れい)』と呼ぶ。中小製造業の経営においても『分水嶺』が存在する。未来の方向を大きく変える節目である。23年は『分水嶺』の年である。再起動による成長軌道に乗るか、衰退軌道に乗るか、重要な分水嶺である。その決めては『DX』。DXしないと消滅軌道。DXの実現こそ23年の最優先経営課題である。






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著者 高木俊郎
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2023/01/12 劣化列島日本/希望と勇気⑫(最終稿)ーー【真犯人/出羽守(でわのかみ)】ーー
以下は 2022年12月21日のオートメーション新聞第309に掲載された寄稿記事です)

​​劣化列島日本/希望と勇気⑫(最終稿)


『真犯人/出羽守(でわのかみ)』



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2022年は、『劣化列島日本/希望と勇気』をテーマに、1月より月1回合計11回連載してきた。本稿は最終稿として、第1稿から第11稿までを振り返り、締めとしての総集編を論じていきたい。22年は突然の円安に襲われ、コストプッシュインフレによる諸物価高騰など、生活圧迫の半面で、完成品メーカー・大企業は好決算に湧いているが、企業内に「劣化列島日本」の現象は存在しないのだろうか? 大企業の内部では、コロナ災いによる勤務形態に大きな変化が生じてきたが、社員のモチベーションが上昇しているとは言い難い。

筆者の知り合いにも、長期のテレワークの影響でうつ病を患い、退職に追いやられた優秀な社員がいる。好決算とは対象的に、残念ながら「劣化列島日本」の現象が散見されるのも現実である。22年1月の第1稿では『カーボンニュートラル/SDGs』を取り上げた。SDGsは外圧である。

ところが、ロシアからのエネルギー供給を止められた欧州を中心に、SDGsの掛け声は声を潜め、SDGsは棚上げ状態である。SDGsを「神の声」として崇拝している日本社会は、出羽守(ではのかみ)に汚染されていないだろうか? 筆者はかねてより、出羽守の弊害を提言してきた。出羽守とは、欧州では……米国では……と、欧米の習慣や言動を常に引き合いに出す事を言う。

出羽守は「欧米は日本より優れている」との前提があり、日本を自虐的に攻撃する事が多く、日本の優れた文化を破壊し、日本のアイデンティティーを消滅させる非常に危険な言動である。SDGs崇拝は、出羽守による日本列島劣化の象徴である。出羽守の弊害は、22年5月の第5稿において、『出羽守に支配されたウクライナ報道』と題し、詳細に寄稿している。

出羽守の象徴のひとつに「ドイツ神話」があげられる。『ドイツはものづくりで優れている。見習うべき優れた国だ』といった認識が日本全体に定着しているが、その認識はかなり違っている。2月の第2稿で『ドイツ衰退に学ぶ劣化の法則』と題し、寄稿した。驚くことに、今のドイツは「国家劣化」に襲われ、ドイツ社会は大きく衰退している。

ドイツ神話はとっくに崩壊しているが、日本ではあまり認識されていない。特に製造業界では、ドイツを信奉する思想が依然として強く定着している。『日本人は働きすぎだ! ドイツを学べ』などと言う御仁は、出羽守の典型であり、あまりにも的外れ発言である。歴史を紐解くと、日本の素晴らしい遺伝子に触れることができる。

7月掲載の第7稿では、『50年前にタイムマシン。日本列島改造論』にふれた。出羽守が闊歩する前(バブル崩壊以前)の日本は、欧米よりはるかに優れた文化とビジョンを持っていた。この歴史的証明が50年前の「列島改造論」である。列島改造論以降の日本では、列島改造論が中心軸となって、日本経済は大いに成長し、安全で豊かな日本が創造されたが、バブル崩壊以降の日本はグローバル主義を標榜し、国家戦略すらも見失った。

かつては世界を席巻した電子技術も、Web1.0、Web2.0の時代の流れに乗り遅れ、GAFAに取って代わり、日本の出る幕もない。列島改造論から50年。今まさに50年前の日本を学ぶ時である。数十年に渡り日本経済を苦しめてきた「円高」が消滅し、「円安」時代がやってきたが、今の日本では依然として出羽守に支配され続けている。これが、劣化列島日本を誘発した原因である。

第3稿では、ソニーの復活を取り上げた。ソニー復活物語は、劣化列島日本で花開いた「希望と勇気」と言っても過言ではない。不死身のように復活を成し遂げたソニーを取り上げ、われわれ日本人の誇りを取り戻す「希望と勇気」を検証した。ソニー復活は日本のものづくり遺伝子に回帰した革命であり、お客さまの「感動」を旗印に、グローバル主義から脱皮した日本の誇りである。

もっと強い言葉を使えば、「欧米からの思想的奴隷解放」でもある。ソニーの復活こそ日本復活のお手本であり、日本の「希望と勇気」がここにある。紙面の都合で1年間に寄稿してきた『劣化列島日本/希望と勇気』のすべてを紹介することはできないが、劣化列島日本が侵された病は、「グローバル」という欧米発のウイルスであり、この病の特効薬は「日本遺伝子への回帰」であることは明白である。

最終稿のまとめ要約は、「劣化列島日本」を作り出した張本人は、「出羽守」であり、「希望と勇気」の原動力は「日本人の誇り、日本遺伝子への回帰」である。日本企業のすべてが、出羽守に支配された「グローバル化」から卒業し、日本にいかりをおろし、日本企業として世界に羽ばたく「インターナショナル企業」となることを祈願し、最終稿の筆を置きたい。















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著者 高木俊郎
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2023/01/12 劣化列島日本/希望と勇気⑪ーー【精密板金業界『淘汰』。真のパラダイムシフト始動開始】ーー
以下は 2022年11月30日のオートメーション新聞第309に掲載された寄稿記事です)

​​劣化列島日本/希望と勇気⑪

『精密板金業界『淘汰』。真のパラダイムシフト始動開始』


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筆者は、1977年4月に東京都調布市にある電気通信大学電気通信学部を卒業し、新卒でアマダに入社。精密板金市場の販売一筋に37年間勤務し、2014年にアマダを退職した。現在、筆者が在籍するアルファTKGは、アマダ退職と同時に筆者が創業した会社であるが、お客さまはアマダ時代と同じ精密板金市場が主流である。45年間にわたり、販売畑を歩んできた。

日本全国をはじめ、アメリカ・欧州・アジア・中国などのお客さまとご一緒しながら、業界の変化を共有し、中小製造業の経営者感覚や国際感覚も体得してきた。耳学問ではなく、肌感覚で体験した経験や知識によって人生が構築できたのは幸せである。これは世界中のお客さまに教えていただいたおかげであり、深く感謝すると同時に、今でも筆者を支える中心軸となっている。

パラダイムシフトとは、一般的概念が大きく変わることを意味する。筆者が精密板金市場で活動してきた45年間の間にもパラダイムシフトが叫ばれたことは枚挙にいとまがない。ところが、今年22年に起きている精密板金業界を取り巻く環境変化は、過去に類を見ない「真のパラダイムシフト始動開始」と断定しても過言ではない。筆者が45年間経験したことの無い「不気味」が起きている。

この先数年に渡り、精密板金業界に「想像を絶する変化」が起きることは必至である。精密板金業界のみならず、日本の中小製造業の共通項であるかもしれない。避けがたい大変化は既に始まっており、方針を誤れば企業の存続が危ぶまれる。『風雲急を告げる』とは22年にふさわしい言葉である。『劣化列島日本』をテーマとした本年度シリーズも第11稿となり、残すところ2回で終了となる。

今回は『精密板金業界・真のパラダイムシフト始動開始』を取り上げたい。筆者は、バブル崩壊やリーマンショックなど歴史的惨事を経験してきたが、これから起こる大変化は、はるかに大きな規模で想像を超えるスピードで、業界全体に襲いかかる「大惨事でもあり大チャンス」でもある。ただ、初めに認識すべきは、『景気が悪くなる』といった景気後退の問題ではない。

精密板金業界は『バブル崩壊やリーマンショックも喉元過ぎれば……で、乗り越えてきた』、『コロナも同じ。影響はあったが、時が解決するさ!』といった客観論が、業界全体を支配している。事実、精密板金業界全体の受注高(日本国内)は、『今後長期間にわたって増える』と予想されるので、需要不足による不景気は考えづらい。しかし、今回の大変化は全く異質のものであり、前述のような楽観論は通用しない。結論を急ぐと、大変化の本質は『淘汰』である。

日本の精密板金業界の総生産高は4兆円、企業軒数2万社、年商2億円、従業員数30人以下の代表的な中小企業群である。精密板金業界の将来展望において、総生産高4兆円は今後も増大すると予想され、年率5%以上の成長余地を持つ「超有望業界」である。ところが、企業軒数2万社は大幅に減少し、10年以内には半数の1万社以上が消滅すると予想されている。

企業軒数が減少する予測は、10年以上も前から指摘されていたが、これから始まる「強烈なパラダイムシフト」が『淘汰』を加速する。精密板金業界には不滅の常識がある。それは、①『マシンへの神話』(良い機械を導入すれば儲かる)②『QCD神話』(短納期・多品種少量生産が差別化である)、そして③『現場ノウハウ神話』(現場ノウハウこそ儲かる源泉である)。

これらの常識は、何十年にわたり継続し成功してきたので、成功体験を強く持つ経験豊富な経営者にとって、このパラダイムを否定するのは相当に困難であった。しかし今、その常識が音を立てて崩れようとしている。その兆候が22年に明確に現れ始めた。最初の兆候は、発注元のニーズ変化から始まった。

今まで多くの小規模板金企業と取引をしていた発注元が、『大量ロッド生産のできる企業に集中発注する』という変化である。円安や中国の状況変化を背景に、国内に製造基盤を移す大手製造業では、大量の生産量を(国内で)製造する必然性から、大量生産のできる板金工場を探し求めている。2番目の兆候は、塗装・溶接設備を持つ精密板金企業に仕事が集中することである。

組み立てに合わせ、必要パーツの艤装(ぎそう)や電子部品の実装作業を一括で発注する大手企業も増えている。そして3番目の兆候は、エンジニアリング・板金設計のアウトソーシングである。3D板金設計力のある板金企業に仕事が集中する傾向が出てきた。

「マシン神話」「QCD神話」「現場ノウハウ神話」のみに支配された精密板金企業は数多く存在するが、残念ながらこの神話だけでは未来の企業存続は難しい。「10年以内に1万軒以上の工場が姿を消す半面で、強い企業がますます強くなり、巨大化する……」。そんな常識が通用しない時代がやってくる。















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著者 高木俊郎
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2023/01/12 劣化列島日本/希望と勇気⑩ーー【沈下する(日本の)完成品メーカー「ピラミッド崩壊」】ーー
以下は 2022年10月26日のオートメーション新聞第306に掲載された寄稿記事です)

​​劣化列島日本/希望と勇気⑩


『沈下する(日本の)完成品メーカー「ピラミッド崩壊」』

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3万人のための情報誌と称する「選択10月号」に興味ある記事が掲載されている。「部材メーカー生き残りの『大転換』」「『トヨタよりテスラ』という潮流」と銘打った記事である。内容の詳細は割愛するが、日本の部材メーカーがトヨタはじめ日本の自動車メーカーに見切りをつけ、米国や中国のEVメーカーとの関係強化を報じる内容である。劣化列島日本を象徴する内容であり、今回はこれを取り上げたい。

日本には「グローバル・ニッチ・トップ」と言うべきオンリーワン技術を持つ部品・素材メーカーが存在するが、これらの優良企業が日本の大手企業(発注元)から離れ始めた悲劇の現実を、具体的な会社名を上げて解説している。トヨタに代表される完成品メーカーは、傘下の部品・素材メーカーの卓越した技術力によって、国際競争力を維持してきた。

これは自他ともに認める事実である。「系列」と称するピラミッド構造は日本独特であり、「KEIRETU」の翻訳英語はない。この日本独特ピラミッドが静かに崩壊し始めている。「選択10月号」の解説では、部品・素材メーカーの日本企業離れを次のように分析している。『その原因は、日本の完成品メーカーの横暴な発注姿勢である。


材料コスト増、人件費増のなかでも値引き要求を恒例化。受注側に知的財産権のある設計図を平気で持ち去るは、発注数量を直前になって変更するはで、(中略)中国企業でも珍しいえげつなさ(後略)』と断じている。ガソリン車の片手間で開発するEVでは、グローバルの激しい競争に太刀打ちできない。

優れた部品・素材メーカーの経営判断は、『トヨタが続ける「半身のEV開発」と心中するつもりはない』と将来的トヨタ劣勢を予測する手厳しい指摘をしている。完成品メーカーは、突然出現した超円安の為替差益により空前の利益に沸き立っているが、系列崩壊は先々の死活問題である。グローバル・ニッチ・トップを誇る超優良な部品・素材メーカーが、日本の完成品メーカーの系列を離れ、米中などの成長企業への依存度を高めることが(不幸にして)現実化している。

では、ここから中小製造業の足元で起きている現実を眺めつつ、系列崩壊の現実を浮き彫りにしていきたい。中小製造業・町工場の代表的業界でもある「精密板金業界」においても前述を裏付ける現象が起きている。数十年前の日本企業全盛期と比べ、国際競争力を失った完成品メーカーは枚挙にいとまがない。ところが、円安効果で競争力低下の現実は覆い隠され、好決算に湧いている。

好決算の半面で出荷台数の減少に悩む完成品メーカーも少なくない。円安効果で利益は出ているものの、実際の生産量が減少しているのである。その結果、板金筐体などの外注への発注量が減少しているため、精密板金業界全体では生産量が下降気味である。半導体製造装置など一部の業界は、膨大な受注残に支えられ長期にわたる活況が続いているが、精密板金業業界は「超・忙しい企業」と「超・暇な企業」のモザイク現象が際立ってきており、俗に言う「二極化」が急速に進行している。

従来の系列に甘んじていた(力のある)優良精密板金企業は、積極的に新規事業の開拓に力を注いでいる。「選択10月号」が記事にしたトヨタの例と同じで、従来の発注元には成長戦略が見当たらず、横暴な値引き要求だけが強い。魅力を失った発注元に見切りをつけて、新たな発注元開拓や事業再構築を柱とした経営戦略を推進している。

以前から、発注元は「JIT」を旗印に、極端な多品種少量生産・短納期を要求し、勝手な都合で発注をキャンセルしたり、即納を要求したりするため段取りやムダが多く、鋼材費の高騰も価格に転嫁できず赤字に追い込まれているところが多い。長年お世話になった発注元からの仕事を断念せざるを得ない精密板金企業が続出している。

完成品メーカーの設計部署や資材部では、(以前からの協力会社に断られ)新規の協力会社の発掘に躍起となっており、新規見積がコロナ前と比較し、倍以上に増加している事実からもこの潮流を確信することができる。

2022年は、37年前のプラザ合意から円高基調を背景に、日本中の完成品メーカーが「グローバル化」に突き進んだ失敗を取り戻すときである。日本経済は、欧米が推奨する「グローバル化」の餌食となった。グローバル化は是正しなければならない基本戦略である。22年こそ円安を背景に、日本国内への製造回帰(リ・ショアリング)を推進し、日本に錨を下ろした「真の国際化(国境なきグローバル化ではない)」に回帰する年である。

劣化列島日本の象徴は、完成品メーカーの30年以上にわたる「グローバル化への挑戦」と「敗北の結果」である。完成品メーカーは、グローバル化により多くの経営資産と国際競争力を失ったが、中堅・中小製造業は幸いにして日本に錨を下ろしており、大半の経営資源を国内に温存している。日本の希望と勇気は、「中堅・中小製造業にかかっている」と言っても過言ではない。













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著者 高木俊郎
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