2022/01/27 劣化列島日本/希望と勇気①ーー【NHK大河ドラマとカーボンニュートラル/SDGs】ーー
以下は 2022年1月26日のオートメーション新聞第279に掲載された寄稿記事です)

​​劣化列島日本/希望と勇気①

NHK大河ドラマとカーボンニュートラル/SDGs




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2014年10月から連載が始まった『提言!日本の製造業再起動に向けて』は、月1回の寄稿である。お陰様で8年目を迎えており、初稿から長きに渡り関心を持って読んでいただいている読者も多く、紙面をお借りして感謝申し上げたい。読者には中小製造業の経営者も多いので、22年初の寄稿は『景気動向の考察』から始めたい。

年が明け、多くの中小製造業の経営環境は(一部の業界を除き)足元では明るいが、先行き予想に慎重な経営者が多く、深刻な課題が内包している事が伺える。コロナ禍の先行き不安も相変わらず、半導体や部品・素材の調達難により製品が作れない悲劇に襲われている発注元が多く存在し、この状況がいつまで続くのかを予想するのも難しい。

鋼材価格の値上げなどの影響も計り知れず、半導体製造装置などの継続的受注増加の明るい話題がある半面で、急速な劣化による受注低迷業界もあり、22年の幕開けは「まだら模様」である。

私の今年の寄稿は、劣化する低迷業界の実態と原因を浮き彫りにしつつ、大きなパラダイムシフトの中で、『希望と勇気』をキーワードに『攻めの戦略』を策定し、中小製造業の輝かしい未来の創造を探求する。そのタイトルは『劣化列島日本/希望と勇気』であり、本稿より数回に渡って連載を行う予定である。

コロナ禍に翻弄されている2年間の間に、社会概念が大きく変化している事は皆の共通認識であるが、不幸なことに時代の変化の渦に巻かれ「劣化」の顕在化に苦しんでいる企業も枚挙にいとまがない。特に「メディア業界」の劣化は超スピードで進んでいる。大手新聞各紙を頂点にピラミッドで構成されたメディア業界は、系列下部のテレビ局が強大な力で君臨していた。

テレビの影響力は絶大で、マスメディア系の広告代理店や芸能プロダクションの隆盛を伴い、テレビ局はつい数年前まで栄華をきわめていた。このテレビ局を含むメディア業界が、今や劣化の象徴となっている。今年の大河ドラマ『鎌倉殿の13人』は、歴史上初めて朝廷から幕府による政治が始まった鎌倉時代の誕生を描くドラマである。

筆者も大変興味深く楽しみにしている一人である。ところが、私の会社の20、30代若者社員20人ほどに視聴の有無を聞いたところ、視聴者はゼロ。視聴者は私だけである。今後は見る気あるか?の問いに、全員No。愕然とする結果である。若者のテレビ離れは深刻で、NHKの大河ドラマのみならず、当社の若者社員はテレビを見ることがなく、テレビは要らないと答えている。深刻な若者のテレビ離れの実態である。

数年前に他界した私の母親の安らぎは、テレビであり、NHKの大河ドラマは格別の娯楽であった。NHKへの信頼も絶大で、大河ドラマは、ドラマを見ながら『日本の歴史や日本人のアイデンティティを学ぶ』、そんな役割も担っていたといえる。

本稿は、『劣化列島日本/希望と勇気』の初稿であるので、『NHKの大河ドラマ』を題材に、『カーボンニュートラルやSDGsの潜在的課題』と『中小製造業の希望と勇気』を検証していきたい。大河ドラマとカーボンニュートラルやSDGsとどこでつながるのか?この疑問を抱く御仁は、ぜひこのまま読み進めていただきたい。

短兵急に答えを書くと、蒙古襲来や黒船来航などの外圧を受けると、日本では議論が割れて闘争に発展し、従来組織が崩壊に至るという歴史事実がある。ここから得られる教訓は『日本は外圧によって破壊と創造が始まるのだ!』という認識である。NHK大河ドラマには『聴視者が歴史に目覚める』という良い効能があったのも事実である。

ところが、最近では歴史を知る機会が少なくなった。『川を上れ 海を渡れ』との言葉があるが、若者たちが日本の歴史感をなくし、日本人としてのアイデンティティを失うことに危惧を抱きつつ、外圧による「破壊と創造」を改めて指摘してみたい。

鎌倉幕府の崩壊は「蒙古襲来」がキッカケであり、江戸幕府の崩壊は「黒船来航」がキッカケである。この歴史解説は割愛するが、前述の通り、外圧によって鎌倉も江戸も崩壊したことは歴史的事実である。カーボンニュートラルやSDGsは、明らかに海外からやってきた外圧である。今日の日本では、産学官一体となってこの外圧を強力に推進しており、スーツの胸にSDGsバッチが一種のブームとなっている。

ゼロエミッションを旗印にEV完全移行を宣言するドイツの自動車メーカーは、ひょっとしたら仮面をかぶった偽善者かもしれない。彼らは、ディーゼルエンジンの失策で日本の自動車勢に破れ、敗北を隠した戦略が「苦肉のEVシフト」とも考えられる。カーボンニュートラルやSDGsの本質を理解し、自社の明快な経営戦略をもとにSDGsバッチを胸に光らせる経営者は尊敬に値するが、これがキッカケで社員同士の結束が緩み、結果として経済的敗者や組織崩壊となる危険が内包している事も事実である。

失われた30年では、グローバル化という外圧に屈した大企業が次々と劣化し、衰退してきたことを我々は知っている。もう一度「外圧による従来組織崩壊」の事実を歴史から学び、カーボンニュートラルやSDGs、そしてゼロエミッションなどに日本はどう向き合うのか? 社員や企業の利益と繁栄、そして国益第一主義を掲げつつ、組織の発展を目指す「攻めの施策」を再考する22年としたい。

日本中の中小製造業が「希望と勇気」を掲げ、日本人のアイデンティティを取り戻し、大発展する22年になることを祈る。









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著者 高木俊郎
15:55 | 未分類 | コメント:0 | page top
2022/01/13 中小製造業の試練 『EV化による破壊と創造』
以下は 2022年1月12日のオートメーション新聞  新年号に掲載された寄稿記事です)

中小製造業の試練

ーー『『EV化による破壊と創造』ーー





『あけましておめでとうございます』とは言うものの、残念ながら昨年に続き2回目の「コロナ禍お正月」となってしまった。 メディアでの主要な報道は「変異株オミクロン」に終始している。人々の関心も強く、コロナ対策が最優先となり、日本人にとって格別の日である「ハレの日」とはどこか違うお正月となった。

伝統的な年末行事の忘年会のバカ騒ぎも、年明けの心引き締まった賀詞交歓会もすべてコロナ禍に奪われ、自粛ムードのなかでオンライン全盛である。オンラインも新しい時代の象徴ではあるが、歴史が育んだ日本人の団結力が失われていく危惧を感じるのは、私だけではないはずである。

忘年会といえば、コロナ以前は終電ギリギリまで宴会が続き、連日の飲み疲れでお正月を待ちわびるのが師走であったが、こんな企業戦士の風習も時代に合わなくなった。 オンラインで『本年もお世話になりました』と言う、こんなことが普通になる時代が突然やってきたこと(コロナ禍がもたらした)幸いか? 災難か?

私の親友でもある大手製造業の販売担当役員は、テレワークを武器に、『自宅にいながらにして年末年始のご挨拶を済ますことに慣れてしまい、面倒な忘年会や賀詞交歓会はもうやりたくない』と本音を明かしている。考えたくないが、大企業神話の崩壊が起きることを危惧してしまう。

【「劣化した業界」と「劣化した経営陣」】、2020年~21年のコロナ禍の2年間で劣化した業界がある。飲食店や観光業界、ホテル業界などコロナに直撃された業界は数多いが、これらの業界は必ずや再興を果たすだろうが、再び戻ることのない劣化が始まった業界がある。 激しいユーザー離れが現実化している劣化業界とは? 

「テレビ業界」と「新聞業界」である。そして、「ガソリンエンジン車の製造業界」も、風雲急を告げる厳しい状況に置かれていると言わざるを得ない。 数年前ドイツ発のインダストリー4.0が猛威を奮った頃、「デジタル変革は“破壊と創造”をもたらす」と言われ、「破壊的イノベーション」と解説されていた。

破壊的イノベーションは、従来からの産業に破壊的な犠牲を払う半面、新規事業が台頭する大変革である。かつて、冷蔵庫の普及で氷売りが消滅した例は有名であるが、『Netfrixによってテレビ局が消滅する』、『YouTubeによって新聞各紙が消滅する』、『EV化によって車エンジンが消滅する』といった単純な論理ではない。

事実、デジタル化やEV化の新技術がこれらの業界を直撃しているのも事実であるが、この難曲を乗り越えるためには、経営陣の強力な陣頭指揮により、「変化の風」を巻き起こすことが必須である。 経営陣の劣化とは、一般的に「変化を好まない事の常態化」を言う。「劣化した業界」と「劣化した経営陣」が重なれば、大惨事を招くことは歴史が証明している。


〜踏み絵となったコロナの自粛〜 

本稿は、22年新春特別号であるので、明るい話題に終始したいのは山々であるが、劣化の浮き彫りなくして未来の創造はないので、しばしご容赦をいただきたい。 コロナ禍の2年間は、自粛要請の連続であったことは言うまでもない。 多くの経営者が、この自粛要請により様々な反応を示した。

この2年間を振り返ると、象徴的な経営者の決断が浮き彫りになってくる。その決断は「自粛期間に次世代への対応を決めた経営者」と「自粛と称し、巣ごもりに徹した経営者」に大きく大別される。前者の意欲的経営者を持つ企業を『A企業群』、巣ごもり経営者を持つ企業を『B企業群』として分けてみると、A企業群はコロナ禍をきっかけに激しい変化に挑戦しており、対面活動にも積極的である。

一方、B企業群においては、テレワークを推奨し、オンライン一辺倒に依存して、従来事業を継続することにとどまっている。 コロナ禍が、経営者に「A群かB群か」を決めさせる踏み絵を強要したといっても過言ではない。A群経営者は攻めを選択し、B群経営者は守りを選択した。不思議なことに、A郡は中小製造業の経営者に多く、B郡は大手製造業経営者に多かった。

大手製造業では、テレワークを指示された従業員も多く、牙が抜かれた企業戦士が大量発生したことは残念な事実である。 巣ごもり族を選択した大手製造業が、希望と勇気をもって次世代の市場創造に立ち向かうことを期待するのは無理筋かもしれない。

〜ガソリンエンジン車を失う日本製造業は地獄図なのか?〜

22年が分水嶺となって、ガソリンエンジン車の産業が、終焉に突き進むのは必至である。日本のエンジン技術が世界の頂点に君臨していることは自他共に認める事実であるが、残念ながらエンジン依存で未来の車産業を創造することは不可能である。 昨年後半に、自動車大手各社は、世界のEV化潮流に合わせ、揃ってEV化の方針を発表した。

残念ながら、世界的に遅れた決断である。この決断発表を受けて各メディアは、車関連の下請け製造業界の衰退を危惧し、大々的な報道を繰り広げている。しかし、EV化は国際社会の流れであり、どんな理屈をつけてもこれを変えることはできない。

中小製造業にとって、ピラミッドの頂点に立つ大手製造業に頼っても答えがない事は皆が分かっている。EV化の流れはピラミッド構造の崩壊であり、中小製造業の生き残りは、ピラミッドからの脱出以外方策はない。脱出してどう生きるか?を戦略的に決めて実行に移すのが今年である。時間も巣ごもりの余裕もない。

〜変化できない企業が淘汰される〜

テレビの衰退、新聞の衰退、ガソリンエンジン車の衰退は、誰もが分かる未来である。特に新聞と車のエンジンがなくなる時代がやってくる。『新聞紙というものがあったらしい』、『昔は、ガソリンエンジンで車が動いていた』と言われる時代はあっという間にやってくる。 新聞紙やガソリンエンジン車に依存している中小企業は、変化しなければ淘汰され消滅するのは必然である。

変化の必要性は、劣化ピラミッドからの脱皮だけではない。日本の中小製造業に襲いかかる人手不足は深刻な課題である。幸いにして成長産業の仕事を受注できても、人手不足により供給できない危惧がある。また中小製造業は、現場ノウハウを武器に存続してきた経緯があるが、ベテラン技能者の高齢化により、技術伝承の深刻な課題がある。

社長が高齢化している企業も多く、事業承継問題も深刻であるが、幸いにして事業承継に成功しても、デジタル変革(DX)に変化しない限り企業の存続は難しい。 22年は、変化をする年である。守りは淘汰につながる。攻めによる変化こそ企業の存続を 担保する必要条件である。
当社(アルファTKG)が得意とする精密板金業界のお客様では、21年のコロナの落ち込みをカバーし、創業以来の売り上げを計上する企業が続出している。

その原因の一因に自動車業界からの需要増が関連している。 精密板金業界は、多品種少量生産型の製造業なので、元来自動車産業とは関係が薄いが、自動車業界の旺盛な半導体需要を受けて、半導体製造装置向けの受注が極めて順調である。 EV化によりますます半導体需要が強まり、精密板金業界の未来も明るいものとなっている。

また、EV化により充電スタンドの需要増大により精密板金業界の一部に特需が起きている。 今後EV化には充電スタンドの拡充が必須であるが、精密板金業界にとっては吉報である。 ガソリンエンジンからEVへの変革を「車のものづくり観点」から議論されているが、EV化は充電スタンドを含む「エネルギー供給に向けた新しい市場創造」の始まりでもある。ガソリンエンジン車に依存する製造業が破壊される半面、EVによる新しい市場が創造されるのは間違いない。

〜EV充電インフラ・Eガラパゴスの日本。テスラ社に学ぶ新しい市場創造〜

EV化に伴い、充電インフラへの投資急拡大が予想される。日本の充電インフラは(充電スタンドの数は多いものの)世界的には非常に遅れた「充電ガラパゴス国家」であることをご存知の方は少ない。筆者は、2年前にテスラ車を購入し、5万キロ以上走行した。テスラはご周知の通り、米国のベンチャー企業が製造販売する完全EV車であり、「破壊的イノベーション」の代表として、全世界のEV市場を牽引している。

筆者は、三菱のPHEV車も所有しているが、両者を比較すると「エネルギーマネージメント」に関する顕著な違いが浮き彫りとなってくる。 テスラ社は、独自でスーパーチャージャーと称する高性能な充電スタンドを世界中に急速普及させており、日本国内も毎年増え続けている。

一方で、日本製EVはCHAdeMO(チャデモ)という充電スタンドが高速道路のサービスエリアなどに設置されているが、残念ながらテスラのスーパーチャージャーと比較すると、CHAdeMOは貧弱の一言に尽きる。本稿ではその詳細比較を割愛するが、テスラ車でも(変換アダプターと会員カードを用意すれば)チャデモを使えるが、 筆者はこれを使う気も起きない。

日本は「充電ガラパゴス国家」の汚名を返上し、高性能な充電インフラの投資が始まる事を大いに期待したい。また、基礎充電インフラと呼ばれる自宅充電やマンション充電を始めとした、壮大な充電インフラの市場創造も始まるだろう。これらの市場は爆発的に成長する可能性を秘めている。精密板金市場を含め、充電スタンドに関わる業種は、極めて明るい未来が開けている。

〜DXの本格的な幕開け〜

企業経営における22年の重点施策は、『“攻め”による“変化の実践”』に尽きるが、攻めの変革にDX(デジタルトランスフォーメーション)は避けて通れない。 そのキーワードは『2025年の崖』である。 『2025年の崖』とは、経済産業省が発信した 『2018年のDXレポート』である。

経済産業省のレポートによると、『今日のデジタルシステムを使い続ける企業は、25年に崖に落ちる』と衝撃的な警鐘を鳴らしている。中小製造業にも、数十年前よりIT化の波が押し寄せ、 生産管理システムやCAD/CAMネットワークシステムなと、多義に渡るIT化(デジタルシステム)が導入されているが、これらのIT化(デジタルシステム)によって崖に落ちることを警鐘している。

崖に落ちないためには、「 現行システムの保守・改善を中止し、DX化に移行しなければならない」と論じている。この方針を間違えると、競争力を失い将来的には企業の存続ができない、との強烈な警鐘が『2025年の崖』である。 経済産業省は、従来からのIT化とDX化は別物であり、DXなくして未来がないことを熱心に説いている。

2年間のコロナ禍によって、我々は大きな教訓を得たと同時に、世界中がデジタル時代に突入した。この先も時代が急速に変化することは必至である。『2025年の崖』は、守りに徹した「巣ごもり経営」は敗北を招くとの警鐘でもある。

第4次産業革命は想像以上のスピードで進んでいる。 今年は、AI・RPA・IoT・クラウドなど最新技術を導入し、デジタル化によってビジネスモデルを変革することに本格的着手する時がやってきた。まさに『DXの本格的な幕開け』である。







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著者 高木俊郎
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