2021/03/31 茹でガエル危機 ーー 『NNF(ニューノーマル工場)への変革①』ーー
以下は 2021年3月31日のオートメーション新聞第249号に掲載された寄稿記事です)



茹でガエル危機 『NNF(ニューノーマル工場)への変革①』
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新年度を迎え、アフターコロナ社会を視野に入れた次世代の戦略が重要となってきている。中小製造業の再起動を提言する本寄稿も、6年以上にわたって連載しているが、コロナ禍による影響は、中小製造業にとって過去経験したことのない最大級の『チャンスと脅威』が訪れていると感じている。

しかし残念ながら、テレビなどの報道からこれらを認識することはなかなか難しい。中小製造業の経営者にとって、史上最大のパラダイムシフトを理解し、将来の経営戦略を固めることが、企業経営継続の必須条件となる事は明らかである。


今回から『茹でガエル危機』と題する連載をスタートする。副題を『NNF(ニューノーマル工場)への変革』とし、中小製造業のアフターコロナ時代のあるべき姿(To-Beモデル)を考察し、具体的な実現手段を紹介する。

従来から、IoTやDX(デジタルトランスフォーメーション)、およびインダストリー4.0の話題は多く取り上げられ、解説も各所で行われているが、ドイツやアメリカの理論を直輸入し、大手製造業に視点が置かれているため、熟練工と共にノウハウを育んだ日本の中小製造業経営者には全くピンとこない。

今回からの連載では、中小製造業の現状に即した具体的戦略・戦術を解説する。NNFとは、「New Normal Factory(ニューノーマル工場)」の略であり、アフターコロナ時代に求められる『社員の安全』を確保し、デジタル変革(DX)による『生産性向上』を実現する『中小製造業の未来工場』を意味する言葉である。

今回からの前半編6回は、中小製造業を取り巻く外部環境の変化を把握し、その変化から中小製造業の『対処すべき課題』を明確にすることでNNFのイメージを固める。後半編の6回では、すでに実践し成功している企業の事例と研究を紹介し、論理や能書きではない具体的成果を追求する姿を連載する。全12回1年間で完結する予定なので、ぜひ楽しみにしていただきたい。

1回目は、『茹でガエル危機』をマクロ視点で指摘していきたい。テレビではコロナ報道一辺倒である。今日の陽性者数推移は誤差範囲の微小変化であるが、これに専門家や政治家が一喜一憂し、まるで重大事件のように報道するテレビウイルスに感染したら、経営者は完璧な『茹でガエル』となる。

テレビが報道しない国際情勢の変化が、中小製造業の経営を直撃するのは明白であるが、コロナが怖い! コロナ対策が全て! と思ったら、これがテレビウイルス感染の証であり、『茹でガエル危機』の到来である。


最近、精密板金企業を訪問すると、受注が急拡大している企業が多く明るい話題が多い。ファナックの仕事をしている企業では、コロナ禍以前を超える受注量を抱え大忙しである。半導体製造装置などの関連業種でも見通しは明るい。

その一方では、年初より鋼材価格が急騰し品薄に陥っている。先日の日本経済新聞は東京製鉄の鋼材値上げを報道した。スクラップ価格も大幅に高騰しており、この影響から鉄鋼メーカー各社が一斉に反応し、大幅な値上げを断行している。これらの鋼材高騰の原因は『中国』といっても過言ではない。

中国の旺盛な需要が影響している。ファナックも中国向けのロボットなどの販売が急拡大中だ。米中貿易摩擦により、中国経済の衰退を指摘する論調もあるが、中国経済は急上昇しており、好むと好まざるとに関わらず日本経済は中国依存となっている。

ところが、中国は香港問題に加え、ウイグル自治区の人権問題を抱え、欧米各国は歩調を合わせて制裁を実施し、中国に敵対している。欧州連合(EU)でもかつての親中政策から一変し中国制裁に踏み切った。EUの明確な中国政策の変更である。

米・英・カナダ・オーストラリア・ニュージーランド(ファイブ・アイズ)の5カ国を中心に、国際社会での中国包囲網が構築されているが、日本政府はその態度を明確にせず、経団連は依然として親中・中国依存路線を変更していない。

しかし、中国に依存する日本経済は危険の淵にあり、長続きしない。尖閣・台湾が一発触発の状況にあり、近いうちに日中が軍事衝突する恐れもあある。中国に投資した日本企業は全てを失う時代がすぐそこに来ている。

米国国内でも混乱が続いている。疑惑だらけの大統領選挙の後遺症に加え、移民問題をキッカケにバイデン大統領への不信任が増大し、バイデンは早くもレームダック(死に体)となり、仲間の民主党議員にも批判されている。バイデンの求心力低下はあまりにもひどく、トランプの人気は健在で、米国の分断はひどくなる一方である。

米国は人口3億人のうち、移民人口4700万人を擁する世界最大の移民国家である。1200万人の不法移民がいると言われており、数々の問題を引き起こしているが、トランプ前大統領の方針を一変し、バイデンが不法労働者の受け入れ容認を発表したことで、不法移民者が殺到し大混乱となっている。

このような米国の実態しをほとんど報道しようとしない日本の大手メディアはバイデンの失策も決して報道しない。このような国際情勢から読み取れる中小製造業の戦略は、①中国依存からの撤退②外国人労働者に依存しない。この2点が極めて重要な方針である。

繰り返しの結論であるが、日中の軍事衝突も懸念される中で、2021年の中小製造業の最大戦略は、これを念頭に置いた計画である。コロナ報道に明け暮れ、国民を脅す専門家や政治家の声をブロックする努力が『茹でガエル危機』の特効薬である。









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著者 高木俊郎
11:07 | 未分類 | コメント:0 | page top
2021/03/30 日本の製造業 再起動に向けて ーー コロナ終息後の希望と脅威 中小製造業を取り巻く環境激変
以下は 2021年2月24日のオートメーション新聞第246号に掲載された寄稿記事です)

日本の製造業再起動に向けて

ーー コロナ終息後の希望と脅威 中小製造業を取り巻く環境激変

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コロナ禍で中小製造業の経営環境が激変している。昨年度より急激に減少した受注環境を背景に、中小製造業の受注がさらに減少するのではないか?といった危惧が報道されているが、実のところ2021年に入り、中小製造業の受注環境は改善傾向にある。

筆者の経営するアルファTKGの主要顧客である『精密板金業界』の最新動向を精査すると、まだ一部の顧客にコロナ影響による受注減少も散見されるが、受注環境は大きく改善されており、先行き見込みは良好である。

その背景には、コロナショックの自然反動も大きいが、中国市場の旺盛なロボット需要や半導体関連など新しい時代の需要が牽引している。特に半導体市場は、精密板金市場に長期的な成長需要をもたらすと予想される。

『風が吹けば桶屋が儲かる』という諺があるが、『自動車の風が吹けば精密板金屋が儲かる』という構図が生まれつつある。従来では精密板金業界とは縁の薄い自動車産業であったが、自動車産業はEV化と自動運転実現のために、車は精密なメカ構造から壮大な電子機器に変化し、半導体の大口ユーザーに変貌している。

日本の半導体産業は、数十年で国際競争力が大幅低下し、耐え難き状況であるが、半導体を製造する半導体製造装置の日本シェアは40%を超えており、国内に温存された重要な産業となっている。

半導体製造装置は、高度なQCDが要求され精密板金の構成要素が大きく、海外シフトが難しい。このため、日本の精密板金を支える重要業種となっている。自動車のEV化・自動運転化で半導体需要がさらに活発化し、半導体製造装置が伸びて、精密板金屋が儲かる構図である。

半導体製造装置産業は、デジタル社会に呼応する成長産業であり、次世代を牽引する主要産業となるのは明白である。その産業規模も2兆円規模と言われており、工作機械や食品機械の産業を大きく超えている巨大産業である。

半導体製造装置の未来予測を一例に、多品種少量生産の代名詞とも言える精密板金業界は、高度なQCDを背景にした次世代を支える重要業種であり、需要環境は(中長期的に)極めて明るいと断言できる。

大手メディアによる連日のコロナ過剰報道は、日本人のポジティブな意識構造を破壊している。コロナへの異常警戒で、気持ちが落ち込み、未来への希望と勇気を失う人々が急増しているが、日本のものづくり再起動の大きなチャンスが訪れており、明るい未来を確信することが必要である。

前述のように、大きなチャンス(機会)を取り込み、企業発展の可能性が大きい半面で、経営を圧迫する強い脅威も存在し、この脅威を正しく認識し、対応策を講じる必要がある。コロナ禍によって中小製造業を直撃する脅威は、①鋼材の不足②人材の不足の2点である。

2021年は、年初より鋼材価格が急騰し、品薄に陥っている。直近2カ月で、スクラップ価格は20%以上高騰しており、この影響を受け、鉄鋼メーカー各社が一斉に反応し、大幅な値上げを断行している。

この最大の原因は、中国を始めとする海外の鉄鋼需要が急速増加している事である。コロナ以前と比較しても(大手メディアで報道される製造業不況とは裏腹で)拡大基調にあり、その先行き予測も力強い。

国内では、自動車の急回復で、鉄鋼需要も急回復し『鉄は自動車工場へ』となり、その他の工場では、鉄の奪い合いによる品薄が深刻化している。現在は、ステンレスなど非鉄金属の供給は比較的安定しているようであるが、3月以降は鉄・非鉄とも品薄が激しくなるだろう。

工作機械業界などでは、コロナ禍で急速に落ち込んだ受注が回復し、在庫も解消し、いよいよ製造再復活と勢いのついた時に、品薄に襲われ、部品等も調達できず『売れても作れない』状況が発生している。

精密板金業界は、多品種少量生産を得意とするため、鋼材の品薄は真の脅威である。価格的にも、コロナ以前は1キログラムあたり90円-95円で推移した鋼板価格は、最近では110円を突破し、少量購買では130円に迫る価格まで高騰している。鋼材の品薄・高騰は始まったばかりであり、今後の重要な脅威となるだろう。

2番目の脅威は、人材不足である。昨年度、コロナショックで受注が落ち込み、工場操業度が大幅下落した時には、一時帰休などを実施しており、人手不足など全く問題ではなかったが、コロナ禍の終息とともに、『人手不足』が深刻な脅威として台頭する。

すべての社員が正規雇用で地元定着型の雇用形態を持つ企業は、この脅威は比較的少ないと思われるが、外国人労働者に依存してきた企業にとっては、半端ではない脅威となり、企業経営のアキレス腱となりかねない。本格的な受注回復・成長軌道に向かう今後、あらためて外国人労働者に依存することは難しい。

筆者と親しい中小製造業の多くが、コロナ以前に外国人労働者に多く依存していた。ところが、歴史的な海外の事例を見ても、外国人労働者に依存した製造業が衰退してきたことは、明白であり、コロナ禍によって日本が欧米のような外国人労働者依存製造の道を歩まなかったことは幸いである。

①鋼材の不足②人材の不足の2大脅威に対応する中小製造業の経営指針は、現在の従業員を大切にし、人工知能(AI)とロボットを従業員の支援として協働作業を行う『日本式IoT・DX』を強力推進する以外に対応策はない。IoT・DXの活用により、鋼材の在庫管理を徹底し、市況をリアルタイムで把握し、鋼材の不足に対応する。

また、人とAI・ロボットの協働は、労働生産性向上と人手不足の特効薬となるだろう。
 







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著者 高木俊郎
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