以下は 2021年1月27日のオートメーション新聞第243号に掲載された寄稿記事です)
日本の製造業再起動に向けて
ーー デジタル勝者の必須条件-自動化工場「図面DX」と「自動化」
ーー
最近、DX(デジタルトランスフォーメーション)の話題が沸騰している。経済産業省が2018年に発表したDXレポート『2025年の崖』がDXブームを巻き起こしたと言っても過言ではない。経済産業省は続編として『DXレポート2』を発表したが、その発表日が昨年12月28日の年末であったので、このレポートを知らない方も多いと思われる。
DXレポート2は、18年の『2025年の崖』のインパクトが強すぎて、「DXの本来の必要性を十分訴求できなかった」との反省から、「本来のDX化推進にポイントを置いている」と経済産業省は解説しているが、DXレポート2では、さらに突っ込んだDXの現状と方向性を訴えている。
また、DXレポート2では「顧客の変化に対応するにはデジタルは必須。ビジネスを今変化させなければ、デジタル競争の敗者となる』と断じ、強烈な警告を発している。あらゆる観点から非常によくまとめられており、中小製造業経営者必見のレポートである。
今回は、DXレポートに真意を理解しつつ、中小製造業のDXについて深掘りし、(論理ではなく)足元の課題を考察してみたい。まず始めに、経済産業省がDXを強烈に推進する背景や国際的な事件を深掘りすると、世界の景色が突然豹変(ひょうへん)したことに気づき、中小製造業を取り巻く経営環境の大変化に驚愕する。
国際社会では、米中による覇権争いから、グローバル経済に大きなキシミが生じている最中にコロナ禍が発生した。コロナ禍の影響で、オンラインによる非対面ビジネスが急速台頭し、(歴史的かつ国際的な)最大級のパラダイムシフトが起きている。
コロナ禍で、世界的に人の往来がストップして丸一年が経過した。人類未経験の異常事態のなかで、テレワークなど、社会全体参加でのデジタル実証実験が成功裏に進んでおり、デジタル時代の有益性が認識され、第4次産業革命の足音が大きくなっている。
中小製造業にとっても、21年がデジタル時代に向かう節目であることは明白であり、DXなくして未来は語れない。21年とは『潮目が変わる年』であり、デジタル化に向かう潮目が(誰の目からも)はっきり見えている。
『アナログ時代の常識が消え、新たなデジタル時代の常識が生まれる』史上最大のパラダイムシフトを、われわれは共有している。正月の占いではないが、中小製造業にとっての21年は吉か凶か? その答えは(他力本願ではなく)『吉』、それも『大吉』の年…としなくてはならない。
中小製造業にとって今年を『大吉』とするキーワードは『攻めの変革-実現』である。21年は守れば「凶」、攻めれば「大吉」。21年は未来の道を決める『分水嶺の年』である。では、中小製造業の経営者はDXの必要性をどう認識しているのだろうか?
当社アルファTKGでは、中小製造業経営者の本音に迫り、現実的なDX実践を行うことを目的に、『板金IoT・DX友の会』設立を企画した。この設立に賛同するパワフルな中小製造業経営者10人を発起人とし、会の設立準備が順調に進んでいるが、その過程で極めて重要な本音や将来の方向性を認識することができた。
中小製造業では『テレワーク』に対して、強い否定があることはよく知られており、「中小製造業では在宅勤務などできるわけがない」という認識から、「DX化は大手製造業しかできないのではないか?」といったイメージが先行しているが、実のところ中小製造業では、大手製造業以上にDX化の必要性が潜在しており、経営者の意識も非常に高い事が判明した。
中小製造業が、コロナ禍で生じた重要経営課題は『人手不足』である。テレビや各報道機関から『戦後最大の不況』との報道から、中小製造業が破壊的な受注減少に陥っていると考えられているが、実のところ受注減は限定的である。
当社による精密板金業界のコロナ影響調査によると、コロナ禍による売上減少が平均20%程度あったものの、経営努力で赤字経営に陥る企業は少なかった。最近では、半導体業界などを筆頭に急回復・急成長業界も多く現れ、今後継続的に受注減が継続する可能性は少ない。
半面、コロナ以前に(労働力として)依存してきた『外国人労働者』の消滅は、中小製造業を直撃する経営課題となっている。大手製造業に比べ人材確保に苦慮してきた中小製造業は、コロナ禍により(人材不足が)ますます深刻な課題となっているのである。ところが幸いにして、この経営課題克服には『自動化』という有力な打ち手が存在する。
今日まで注目されなかった『単純作業の自動化』である。コロナ禍以前の自動化は、レーザ加工機やプレスブレーキなど高級マシンを(夜間も含め)連続稼働させ稼働率を向上させることが目的であったが、今回実現する自動化は、コロナ禍以前に外国人労働者に依存してきた『単純作業の自動化』である。具体的には、バリ取りなど単純作業に始まり、溶接工程や検査工程など人手に依存してきた作業を自動化する事である。
単純作業の自動化は、紙図面に依存する従来の作業プロセスの延長では実現できない。この実現には、紙図面をデジタル化し、さらに3次元CAD化することが必須となる。この3次元CAD化に向かう手段が『紙図面のDX化』である。『図面DX』と『自動化』こそ中小製造業DXの一丁目一番地である。
21年をDX元年と位置づけ『図面DX』と『自動化』への攻めがデジタル勝者に導く王道であり、これによって中小製造業のものづくりは自動化工場となり、高い生産性に激変する。20年第3次補正予算による膨大な助成金も、デジタル勝者への有力な助っ人となるだろう。

著者 高木俊郎
日本の製造業再起動に向けて
ーー デジタル勝者の必須条件-自動化工場「図面DX」と「自動化」
ーー
最近、DX(デジタルトランスフォーメーション)の話題が沸騰している。経済産業省が2018年に発表したDXレポート『2025年の崖』がDXブームを巻き起こしたと言っても過言ではない。経済産業省は続編として『DXレポート2』を発表したが、その発表日が昨年12月28日の年末であったので、このレポートを知らない方も多いと思われる。
DXレポート2は、18年の『2025年の崖』のインパクトが強すぎて、「DXの本来の必要性を十分訴求できなかった」との反省から、「本来のDX化推進にポイントを置いている」と経済産業省は解説しているが、DXレポート2では、さらに突っ込んだDXの現状と方向性を訴えている。
また、DXレポート2では「顧客の変化に対応するにはデジタルは必須。ビジネスを今変化させなければ、デジタル競争の敗者となる』と断じ、強烈な警告を発している。あらゆる観点から非常によくまとめられており、中小製造業経営者必見のレポートである。
今回は、DXレポートに真意を理解しつつ、中小製造業のDXについて深掘りし、(論理ではなく)足元の課題を考察してみたい。まず始めに、経済産業省がDXを強烈に推進する背景や国際的な事件を深掘りすると、世界の景色が突然豹変(ひょうへん)したことに気づき、中小製造業を取り巻く経営環境の大変化に驚愕する。
国際社会では、米中による覇権争いから、グローバル経済に大きなキシミが生じている最中にコロナ禍が発生した。コロナ禍の影響で、オンラインによる非対面ビジネスが急速台頭し、(歴史的かつ国際的な)最大級のパラダイムシフトが起きている。
コロナ禍で、世界的に人の往来がストップして丸一年が経過した。人類未経験の異常事態のなかで、テレワークなど、社会全体参加でのデジタル実証実験が成功裏に進んでおり、デジタル時代の有益性が認識され、第4次産業革命の足音が大きくなっている。
中小製造業にとっても、21年がデジタル時代に向かう節目であることは明白であり、DXなくして未来は語れない。21年とは『潮目が変わる年』であり、デジタル化に向かう潮目が(誰の目からも)はっきり見えている。
『アナログ時代の常識が消え、新たなデジタル時代の常識が生まれる』史上最大のパラダイムシフトを、われわれは共有している。正月の占いではないが、中小製造業にとっての21年は吉か凶か? その答えは(他力本願ではなく)『吉』、それも『大吉』の年…としなくてはならない。
中小製造業にとって今年を『大吉』とするキーワードは『攻めの変革-実現』である。21年は守れば「凶」、攻めれば「大吉」。21年は未来の道を決める『分水嶺の年』である。では、中小製造業の経営者はDXの必要性をどう認識しているのだろうか?
当社アルファTKGでは、中小製造業経営者の本音に迫り、現実的なDX実践を行うことを目的に、『板金IoT・DX友の会』設立を企画した。この設立に賛同するパワフルな中小製造業経営者10人を発起人とし、会の設立準備が順調に進んでいるが、その過程で極めて重要な本音や将来の方向性を認識することができた。
中小製造業では『テレワーク』に対して、強い否定があることはよく知られており、「中小製造業では在宅勤務などできるわけがない」という認識から、「DX化は大手製造業しかできないのではないか?」といったイメージが先行しているが、実のところ中小製造業では、大手製造業以上にDX化の必要性が潜在しており、経営者の意識も非常に高い事が判明した。
中小製造業が、コロナ禍で生じた重要経営課題は『人手不足』である。テレビや各報道機関から『戦後最大の不況』との報道から、中小製造業が破壊的な受注減少に陥っていると考えられているが、実のところ受注減は限定的である。
当社による精密板金業界のコロナ影響調査によると、コロナ禍による売上減少が平均20%程度あったものの、経営努力で赤字経営に陥る企業は少なかった。最近では、半導体業界などを筆頭に急回復・急成長業界も多く現れ、今後継続的に受注減が継続する可能性は少ない。
半面、コロナ以前に(労働力として)依存してきた『外国人労働者』の消滅は、中小製造業を直撃する経営課題となっている。大手製造業に比べ人材確保に苦慮してきた中小製造業は、コロナ禍により(人材不足が)ますます深刻な課題となっているのである。ところが幸いにして、この経営課題克服には『自動化』という有力な打ち手が存在する。
今日まで注目されなかった『単純作業の自動化』である。コロナ禍以前の自動化は、レーザ加工機やプレスブレーキなど高級マシンを(夜間も含め)連続稼働させ稼働率を向上させることが目的であったが、今回実現する自動化は、コロナ禍以前に外国人労働者に依存してきた『単純作業の自動化』である。具体的には、バリ取りなど単純作業に始まり、溶接工程や検査工程など人手に依存してきた作業を自動化する事である。
単純作業の自動化は、紙図面に依存する従来の作業プロセスの延長では実現できない。この実現には、紙図面をデジタル化し、さらに3次元CAD化することが必須となる。この3次元CAD化に向かう手段が『紙図面のDX化』である。『図面DX』と『自動化』こそ中小製造業DXの一丁目一番地である。
21年をDX元年と位置づけ『図面DX』と『自動化』への攻めがデジタル勝者に導く王道であり、これによって中小製造業のものづくりは自動化工場となり、高い生産性に激変する。20年第3次補正予算による膨大な助成金も、デジタル勝者への有力な助っ人となるだろう。

著者 高木俊郎
2021/01/12 【史上最大の大変革「NNF」2021年は吉か凶か? 中小製造業DX幕開け
以下は 2021年1月6日のオートメーション新聞に掲載された寄稿記事です)
コロナ報道に埋もれた2大事件の深層
ーー 【史上最大の大変革「NNF」2021年は吉か凶か? 中小製造業DX幕開け
】ーー
『あけましておめでとうございます。』…しかし、普段の年とは違うお正月がやってきた。
昨年暮れの忘年会も、年明けの心引き締まった賀詞交歓会もすべてコロナ禍に奪われ、明るい話題の乏しいお正月である。平素なら、お正月には新たな気持で神社を参拝し、新たな一年の心構えを誓うものである。
『去年はこうだったが、今年はこうしよう…』こんな小さな希望と勇気のキッカケが『お正月』である。ところが、今年の正月は『コロナ禍正月』明けても暮れてもコロナ。テレビでは、コロナ報道が繰り返されている。
2021年、守れば「凶」攻めれば「大吉」
コロナがキッカケで世界の景色が一変している。2021年は、未来を左右する重要な年であり、中小製造業にとっても、2021年が未来を決める「分水嶺の年」となるだろう。日本を取り巻く外部環境は、風雲急を告げている。
米中の覇権争いは続き、日本が戦争に巻き込まれる危惧を否定できない。米国をはじめとしたグローバル経済の衰退や、中国の影響力増大など、中小製造業を取り巻く経済環境が激変しており、コロナが終息してもこの時代の流れは止められない。
2021年とは、中小製造業にとって『どんな年か?』。確実に言えることは、歴史の潮目が変わる節目となる事は間違いない。『過去の常識が消え、新たな時代の常識が生まれる』史上最大のパラダイムシフトを、我々は共有している。
正月の占いではないが、中小製造業にとっての2021年は吉か凶か? その答えは、(他力本願ではなく)『吉』それも『大吉』の年。…としなくてはならない。中小製造業にとって今年を『大吉』とするキーワードは『攻めの変革』。2021年、守れば「凶」。攻めれば「大吉」。2021年は、未来の道を決める『分水嶺の年』である。
大企業神話と系列(ケイレツ)の崩壊
日本の大企業神話が崩壊している。コロナ禍の影響から、ANA(全日本空輸)は大打撃に陥り、学生には超人気であった優良企業から一転し、リストラ企業に転落した。みずほ銀行など大手銀行や朝日新聞など新聞業界でも神話崩壊が進んでいる。大手製造業も例外ではない。
テレワークや対面活動禁止など、大手製造業は先導して新型コロナ対策に取り組んでおり、世間からも称賛されているが、実のところこの方針により、労働生産性の低下が加速し、テレワークによるうつ病社員も増加し、将来が非常に不安であり、学生達からの人気も急降下している。大企業神話が崩壊し、『寄らば大樹の陰』は通用しなくなった。
戦後社会のものづくりは、大手製造業を頂点とするピラミッド構造『系列(ケイレツ)』である。1990年代バブル経済以降、大手家電メーカを中心とした大手製造業の凋落は、日本経済の悲劇でもあり、系列崩壊の序曲でもあった。2021年こそ本格的な系列崩壊の最終章が始まるだろう。
中小製造業の一般的な形態は、独自の販売組織を持たず、系列に依存してきた。今後、販売力の弱さが、アキレス腱になってくる危惧がある。中小製造業は、販売力を強化し、新たな受注先を独自で開拓する受注競争時代に突入するのである。
今後必要となる中小製造業の販売手法は、インターネットを使うデジタル販売体制の構築である。SNSやホームページ・ブログ・ユーチューブなど様々なデジタル販路構築の手法があるが、その具体策の探求には、DX(デジタルトランスフォーメーション)が欠かせない。
2025年の崖とDX(デジタルトランスフォーメーション)
2021年攻めの変革に、DX(デジタルトランスフォーメーション)は避けて通れない。DXとは、かつてスウェーデンのウメオ大学ユリック・ストルターマン教授によって提唱された概念であり、様々な定義と解説がなされているが、一言で言い表せば『最新デジタル技術を活用した変革』であり、各製造業が今日にまで進めて来たデジタル化とは異なり、最先端技術(クラウドや人工知能など)を活用した製造業のデジタル変革をDXという。
日本では、2018年に経済産業省が発表した『2025年の崖』というDXレポートを公表したことから、一気に注目され始めた。『2025年の崖』とは、『DX(デジタルトランスフォーメーション)に関する研究会』が発信した『DXレポート』である。
その内容は衝撃的なものであり、『DXを実現しないと企業は存続できない』との警鐘であり、2021年攻めのポイントでもある。経済産業省は、各企業が現在使用中のシステムによって競争力が大幅に低下すると断じ、その期限を2025年と明示した。
中小製造業でも、生産管理システムやCAD/CAM、ネットワークシステムなど多義に渡るソフトが導入されているが、これらのシステムはレガシーシステムと呼ばれ、これらのシステムを保守・改善してもDXにはならない。どころか、レガシーシステムに依存したら企業は存続できないとの警鐘が、『2025年の崖』である。
第4次産業革命・デジタルの先にあるDX 4階への増築をしよう
産業革命の歴史は、大昔の大英帝国(イギリス)で機械が誕生し、米国で電気が誕生した第2次産業革命を経て、約半世紀前の第3次産業によるコンピュータ活用の自動化工場誕生に至る。日本が世界の製造立国として君臨したのは、第3次産業革命の賜物であり、多くの中小製造業でも世界に先駆けてデジタル・自動化工場が稼働した。
現状の中小製造業の工場は産業革命の産物である。建物に例えると、1階に機械、2階に電気(NCやシーケンサ)、3階にコンピュータ(生産管理やCAD/CAM)で構成される3階建である。DXは第4次産業革命の技術を活用したデジタル変革の事を言う。5Gなど先端技術の米中戦争も、第4次産業革命の覇権争いが根本にある。
中小製造業では、現在の3階建(機械・電気・コンピュータ)を、4階建へ増築することで第4次産業革命の技術を享受することができる。増築する4階は、DXそのものである。コンピュータ上にある仮想工場が構築され、漫画「ドラえもん」のように、世界中どこでも、未来にも過去にも行ける。
シミュレーションによる生産予測と最適化も可能になるし、発注元や外注購入先との接続も自由自在である。これをサイバー工場と呼ぶ。4階のDXとは、エンジニアリング全体やサプライチェーン全体を包括するシステムであり、発注元の三次元データとのシームレスな結合や、外注・購入先までもデジタル技術によって結合されるのがDXであり、デジタル化の先にあるのがDXである。
4階のDXを支える技術は、第4次産業革命のクラウドや人工知能・RPAなどの活用である。3階のWindowsをベースとしたレガシーシステムとは全く異なるのである。2021年中小製造業のデジタル変革とは、現在の3階建て(機械・電気・コンピュータ)にDXを加え、4階建に拡張することである。
自動化と非対面製造モデルNNF(ニューノーマルファクトリー)
新型コロナウイルス拡大に伴い、ニューノーマル社会に適合した工場経営も重要となる。2021年のデジタル変革は、『人海戦術から自動化へ』『対面製造モデルから非対面製造モデルへ』である。
昨年まで、人手不足を背景に、外国人労働者の活用が叫ばれ、多くの中小製造業でも単純作業を外国人労働者に依存しようとする動きが活発化した。ところが、コロナ禍をキッカケに外国人労働者依存の施策は過去のものとなったが、幸いにRPA(ソフトロボット)の活用は急速に広まっており、事務所の単純コンピュータ操作作業はRPAに取って代わっている。
幸い、中小製造業におけるRPAの活用範囲は広く、自動化の実現が可能である。また、三次元CADを活用したエンジニアリングDXの充実により、製造現場でのロボット活用の範囲が広がり、製造現場の自動化が加速する。特に溶接工程の自動化には、特殊ジグ製造が必要となるが、3Dプリンターなどの活用を並行することで、一気に自動化の水準が上がる。
検査工程なども、三次元CADの活用による検査工程のイノベーションも可能である。2021年は、人海戦術から自動化に本格シフトするエンジニアリングDXを軸とした、デジタル変革が必要である。
また、工場内の随所で発生する製造打ち合わせを、デバイスを活用した非対面打ち合わせに変革することができる。製造工場をテレワーク化することは難しいが、ズームなどのミーティングソフトは、非対面製造モデルを構築する最適なツールである。上述の攻めの変革が、NNF(ニューノーマル工場)であり、コロナ禍から学ぶ必須の変革である。
最後に、難局に直面する2021年であるが、中小製造業にとっては大きなチャンスと捉えることができる。第3次補正予算などで、過去にない水準の助成金なども準備されており、DXによる攻めの変革を実行できる最高の条件が整っている。
また、第4次産業革命がもたらす経営効果は想像を絶する効果が実証されている。RPA・人工知能・クラウド等々、これらの技術を投入しない中小製造業が発展するだろうか?中小製造業にとって、2021年が凶となるか? 大吉となるか? …その答えは、はっきりしている。

著者 高木俊郎
コロナ報道に埋もれた2大事件の深層
ーー 【史上最大の大変革「NNF」2021年は吉か凶か? 中小製造業DX幕開け
】ーー
『あけましておめでとうございます。』…しかし、普段の年とは違うお正月がやってきた。
昨年暮れの忘年会も、年明けの心引き締まった賀詞交歓会もすべてコロナ禍に奪われ、明るい話題の乏しいお正月である。平素なら、お正月には新たな気持で神社を参拝し、新たな一年の心構えを誓うものである。
『去年はこうだったが、今年はこうしよう…』こんな小さな希望と勇気のキッカケが『お正月』である。ところが、今年の正月は『コロナ禍正月』明けても暮れてもコロナ。テレビでは、コロナ報道が繰り返されている。
2021年、守れば「凶」攻めれば「大吉」
コロナがキッカケで世界の景色が一変している。2021年は、未来を左右する重要な年であり、中小製造業にとっても、2021年が未来を決める「分水嶺の年」となるだろう。日本を取り巻く外部環境は、風雲急を告げている。
米中の覇権争いは続き、日本が戦争に巻き込まれる危惧を否定できない。米国をはじめとしたグローバル経済の衰退や、中国の影響力増大など、中小製造業を取り巻く経済環境が激変しており、コロナが終息してもこの時代の流れは止められない。
2021年とは、中小製造業にとって『どんな年か?』。確実に言えることは、歴史の潮目が変わる節目となる事は間違いない。『過去の常識が消え、新たな時代の常識が生まれる』史上最大のパラダイムシフトを、我々は共有している。
正月の占いではないが、中小製造業にとっての2021年は吉か凶か? その答えは、(他力本願ではなく)『吉』それも『大吉』の年。…としなくてはならない。中小製造業にとって今年を『大吉』とするキーワードは『攻めの変革』。2021年、守れば「凶」。攻めれば「大吉」。2021年は、未来の道を決める『分水嶺の年』である。
大企業神話と系列(ケイレツ)の崩壊
日本の大企業神話が崩壊している。コロナ禍の影響から、ANA(全日本空輸)は大打撃に陥り、学生には超人気であった優良企業から一転し、リストラ企業に転落した。みずほ銀行など大手銀行や朝日新聞など新聞業界でも神話崩壊が進んでいる。大手製造業も例外ではない。
テレワークや対面活動禁止など、大手製造業は先導して新型コロナ対策に取り組んでおり、世間からも称賛されているが、実のところこの方針により、労働生産性の低下が加速し、テレワークによるうつ病社員も増加し、将来が非常に不安であり、学生達からの人気も急降下している。大企業神話が崩壊し、『寄らば大樹の陰』は通用しなくなった。
戦後社会のものづくりは、大手製造業を頂点とするピラミッド構造『系列(ケイレツ)』である。1990年代バブル経済以降、大手家電メーカを中心とした大手製造業の凋落は、日本経済の悲劇でもあり、系列崩壊の序曲でもあった。2021年こそ本格的な系列崩壊の最終章が始まるだろう。
中小製造業の一般的な形態は、独自の販売組織を持たず、系列に依存してきた。今後、販売力の弱さが、アキレス腱になってくる危惧がある。中小製造業は、販売力を強化し、新たな受注先を独自で開拓する受注競争時代に突入するのである。
今後必要となる中小製造業の販売手法は、インターネットを使うデジタル販売体制の構築である。SNSやホームページ・ブログ・ユーチューブなど様々なデジタル販路構築の手法があるが、その具体策の探求には、DX(デジタルトランスフォーメーション)が欠かせない。
2025年の崖とDX(デジタルトランスフォーメーション)
2021年攻めの変革に、DX(デジタルトランスフォーメーション)は避けて通れない。DXとは、かつてスウェーデンのウメオ大学ユリック・ストルターマン教授によって提唱された概念であり、様々な定義と解説がなされているが、一言で言い表せば『最新デジタル技術を活用した変革』であり、各製造業が今日にまで進めて来たデジタル化とは異なり、最先端技術(クラウドや人工知能など)を活用した製造業のデジタル変革をDXという。
日本では、2018年に経済産業省が発表した『2025年の崖』というDXレポートを公表したことから、一気に注目され始めた。『2025年の崖』とは、『DX(デジタルトランスフォーメーション)に関する研究会』が発信した『DXレポート』である。
その内容は衝撃的なものであり、『DXを実現しないと企業は存続できない』との警鐘であり、2021年攻めのポイントでもある。経済産業省は、各企業が現在使用中のシステムによって競争力が大幅に低下すると断じ、その期限を2025年と明示した。
中小製造業でも、生産管理システムやCAD/CAM、ネットワークシステムなど多義に渡るソフトが導入されているが、これらのシステムはレガシーシステムと呼ばれ、これらのシステムを保守・改善してもDXにはならない。どころか、レガシーシステムに依存したら企業は存続できないとの警鐘が、『2025年の崖』である。
第4次産業革命・デジタルの先にあるDX 4階への増築をしよう
産業革命の歴史は、大昔の大英帝国(イギリス)で機械が誕生し、米国で電気が誕生した第2次産業革命を経て、約半世紀前の第3次産業によるコンピュータ活用の自動化工場誕生に至る。日本が世界の製造立国として君臨したのは、第3次産業革命の賜物であり、多くの中小製造業でも世界に先駆けてデジタル・自動化工場が稼働した。
現状の中小製造業の工場は産業革命の産物である。建物に例えると、1階に機械、2階に電気(NCやシーケンサ)、3階にコンピュータ(生産管理やCAD/CAM)で構成される3階建である。DXは第4次産業革命の技術を活用したデジタル変革の事を言う。5Gなど先端技術の米中戦争も、第4次産業革命の覇権争いが根本にある。
中小製造業では、現在の3階建(機械・電気・コンピュータ)を、4階建へ増築することで第4次産業革命の技術を享受することができる。増築する4階は、DXそのものである。コンピュータ上にある仮想工場が構築され、漫画「ドラえもん」のように、世界中どこでも、未来にも過去にも行ける。
シミュレーションによる生産予測と最適化も可能になるし、発注元や外注購入先との接続も自由自在である。これをサイバー工場と呼ぶ。4階のDXとは、エンジニアリング全体やサプライチェーン全体を包括するシステムであり、発注元の三次元データとのシームレスな結合や、外注・購入先までもデジタル技術によって結合されるのがDXであり、デジタル化の先にあるのがDXである。
4階のDXを支える技術は、第4次産業革命のクラウドや人工知能・RPAなどの活用である。3階のWindowsをベースとしたレガシーシステムとは全く異なるのである。2021年中小製造業のデジタル変革とは、現在の3階建て(機械・電気・コンピュータ)にDXを加え、4階建に拡張することである。
自動化と非対面製造モデルNNF(ニューノーマルファクトリー)
新型コロナウイルス拡大に伴い、ニューノーマル社会に適合した工場経営も重要となる。2021年のデジタル変革は、『人海戦術から自動化へ』『対面製造モデルから非対面製造モデルへ』である。
昨年まで、人手不足を背景に、外国人労働者の活用が叫ばれ、多くの中小製造業でも単純作業を外国人労働者に依存しようとする動きが活発化した。ところが、コロナ禍をキッカケに外国人労働者依存の施策は過去のものとなったが、幸いにRPA(ソフトロボット)の活用は急速に広まっており、事務所の単純コンピュータ操作作業はRPAに取って代わっている。
幸い、中小製造業におけるRPAの活用範囲は広く、自動化の実現が可能である。また、三次元CADを活用したエンジニアリングDXの充実により、製造現場でのロボット活用の範囲が広がり、製造現場の自動化が加速する。特に溶接工程の自動化には、特殊ジグ製造が必要となるが、3Dプリンターなどの活用を並行することで、一気に自動化の水準が上がる。
検査工程なども、三次元CADの活用による検査工程のイノベーションも可能である。2021年は、人海戦術から自動化に本格シフトするエンジニアリングDXを軸とした、デジタル変革が必要である。
また、工場内の随所で発生する製造打ち合わせを、デバイスを活用した非対面打ち合わせに変革することができる。製造工場をテレワーク化することは難しいが、ズームなどのミーティングソフトは、非対面製造モデルを構築する最適なツールである。上述の攻めの変革が、NNF(ニューノーマル工場)であり、コロナ禍から学ぶ必須の変革である。
最後に、難局に直面する2021年であるが、中小製造業にとっては大きなチャンスと捉えることができる。第3次補正予算などで、過去にない水準の助成金なども準備されており、DXによる攻めの変革を実行できる最高の条件が整っている。
また、第4次産業革命がもたらす経営効果は想像を絶する効果が実証されている。RPA・人工知能・クラウド等々、これらの技術を投入しない中小製造業が発展するだろうか?中小製造業にとって、2021年が凶となるか? 大吉となるか? …その答えは、はっきりしている。

著者 高木俊郎