2017/10/29 I4.0 , IoT そして フィンテック・続々と日本に来航する「現代の黒船」
以下は 2017年10月25日のオートメーション新聞 第126号に掲載された寄稿記事です)
I4.0 , IoT そして フィンテック
ーー 続々と日本に来航する「現代の黒船」 ーー
皆さんは「フィンテック」や「仮想通貨」をご存知でしょうか?
数年前には「インダストリー4.0」が、現代の黒船としてドイツより来航し、日本中が大騒ぎとなったのも記憶に新しい。第4次産業革命として、多くの解説が繰り返されたが、いつのまにか「IoT」ブームにかき消され、大企業から中小企業に至るまで「IoT」一色となって、日本中の企業から、「IoTとは何か?」が発信されている。
インダストリー4.0後進国と言われた日本も、コンセプトや将来ビジョンに於いて、今や世界をリードするIoT大国である、と言っても過言ではない。しかし不思議な事に、日本ではインダストリー4.0やIoTには熱狂しているが、「フィンテック」に対しての盛り上がりはそれほど大きくない。
フィンテックとは「Finance(金融)」と「Tecnology(技術)」を組み合わせた造語である。フィンテックの台頭により、マネーの取扱には大きな変化が生じ、銀行や証券会社での金融の従来サービスが破壊され、人々の社会生活や企業活動の根底が変化する可能性が指摘されている。
フィンテックの最大要素は仮想通貨である。仮想通貨の普及は、人類の生活スタイルを一変させる威力を持っている。かつてお財布携帯なる機能が流行ったが、将来は仮想通貨により人々の日常生活からキャッシュが完全消滅し、スマホだけがお財布となる時代が来るかもしれない。
日本ではお財布携帯が進化し、スイカなどの電子マネーで、電車・コンビニ・自動販売機など現金不要のインフラが進化しているが、仮想通貨はクラウド上に自分の口座を有し、世界中どこでも使用できるグローバル通貨である。少額プリペイドで国内限定のガラパゴス・インフラとは全く異なるものである。
仮想通貨は、海外送金にも非常に便利である。簡便な操作と超低価格の手数料で瞬時に国際間送金が可能であり、インターネットでのお買い物は益々便利になり、国際取引が急増するだろう。
例えば、「美味しいイタリア産のオリーブオイルを買いたい」と思いインターネットで探したお店が、イタリアのオリーブ産地の直営店であっても、簡単にイタリアから直輸入商品が買える。イタリア語を使う必要もなく(自動翻訳を使って)簡単注文。仮想通貨で支払い瞬時。円とユーロの交換も不要・・ そんなフィンテック時代が、もう目の前に来ている。
従来の銀行・金融機関を使用した海外送金システムや、複雑な輸出入業務・納税手続きなどは完全に過去のものとなるだろう。また、海外旅行の際には外貨の概念を持つ必要もなく、両替の手間はいらない。
このように注目される仮想通貨であるが、日本では一般的に信用されていない。ビットコインなど仮想通貨の名前だけは聞いたことはあるが、特に関心もなく「胡散臭いもの」と考えている日本人が大半である。
しかし世界の現実は随分違う。フィンテックの中核をなす仮想通貨は、既に欧米はじめ中国など新興国を巻き込み、世界中で市民権を得ることに成功しつつある。仮想通貨はブロックチェーンなど、様々な新技術に支えられた壮大なイノベーションであり、インダストリー4.0 や IoT などと並び、新たな世の中を生み出す力を秘めている。
中国はじめ新興国では、金融インフラが弱く、銀行口座やクレジットカード保有率は非常に低い。その反面で、スマホ保有率が急上昇し、従来銀行に依存せず仮想通貨によるスマホ決済を発展させる土壌が整っている。
日本人が見向きもしないフィンテックが、中国など新興国で急成長していくのは実に残念なことであるが、仮想通貨には依然としての闇と光が共存しているのも否定できない。
闇の部分は、なんといっても仮想通貨の投機性である。市場には何十種類の仮想通貨が存在するが、実際に世間で使えるのはビットコインのみ。通貨として通用しない仮想通貨が投機対象で売買されている。仮想通貨の売買を行う取引所には信頼性の乏しい所もあり、かつて数年前にマウントゴックスという取引仲介サイトがサイバー攻撃で倒産した。
また、仮想通貨の代表であるビットコインは、金(ゴールド)を模造して開発されており、マイニング(採掘)の概念や採掘量の制限など、高度な技術の投入により優れた将来性が認識されている。
このために、金(ゴールド)以上にビットコインへの投機熱が加熱し、誕生以来激しい暴騰と乱高下が続いている。今年も一年間で約10倍値上がりしており、投機マネーの格好の対象となっている。
一方で、2017年は日本での「フィンテック元年」であり、仮想通貨を取り巻く環境に大きな進歩が起きている。まさにこれが仮想通貨の「光の部分」であり、フィンテックが発展するエンジンとなっている。
日本でも、ビックカメラがビットコインの扱いを開始し、ビットコイン使用の環境が整いつつある。さらに、日本政府が法的整備を開始し、取引所の信頼性も飛躍的に向上していることから、日本では2017年に仮想通貨が法的に認知されたことで、「胡散臭さ」の大半が解消されたと言っても過言ではない。
影と光が交錯しながら、フィンテックは激しい進化を続けていくことに疑いの余地はない。
ブロックチェーンの技術は、仮想通貨以外にも応用され多くの産業に変化をもたらすだろう。本稿の主役である中小製造業の将来にとっても、I4.0やIoTと並びフィンテックの動向は決して他人事ではない。

著者 高木俊郎
I4.0 , IoT そして フィンテック
ーー 続々と日本に来航する「現代の黒船」 ーー
皆さんは「フィンテック」や「仮想通貨」をご存知でしょうか?
数年前には「インダストリー4.0」が、現代の黒船としてドイツより来航し、日本中が大騒ぎとなったのも記憶に新しい。第4次産業革命として、多くの解説が繰り返されたが、いつのまにか「IoT」ブームにかき消され、大企業から中小企業に至るまで「IoT」一色となって、日本中の企業から、「IoTとは何か?」が発信されている。
インダストリー4.0後進国と言われた日本も、コンセプトや将来ビジョンに於いて、今や世界をリードするIoT大国である、と言っても過言ではない。しかし不思議な事に、日本ではインダストリー4.0やIoTには熱狂しているが、「フィンテック」に対しての盛り上がりはそれほど大きくない。
フィンテックとは「Finance(金融)」と「Tecnology(技術)」を組み合わせた造語である。フィンテックの台頭により、マネーの取扱には大きな変化が生じ、銀行や証券会社での金融の従来サービスが破壊され、人々の社会生活や企業活動の根底が変化する可能性が指摘されている。
フィンテックの最大要素は仮想通貨である。仮想通貨の普及は、人類の生活スタイルを一変させる威力を持っている。かつてお財布携帯なる機能が流行ったが、将来は仮想通貨により人々の日常生活からキャッシュが完全消滅し、スマホだけがお財布となる時代が来るかもしれない。
日本ではお財布携帯が進化し、スイカなどの電子マネーで、電車・コンビニ・自動販売機など現金不要のインフラが進化しているが、仮想通貨はクラウド上に自分の口座を有し、世界中どこでも使用できるグローバル通貨である。少額プリペイドで国内限定のガラパゴス・インフラとは全く異なるものである。
仮想通貨は、海外送金にも非常に便利である。簡便な操作と超低価格の手数料で瞬時に国際間送金が可能であり、インターネットでのお買い物は益々便利になり、国際取引が急増するだろう。
例えば、「美味しいイタリア産のオリーブオイルを買いたい」と思いインターネットで探したお店が、イタリアのオリーブ産地の直営店であっても、簡単にイタリアから直輸入商品が買える。イタリア語を使う必要もなく(自動翻訳を使って)簡単注文。仮想通貨で支払い瞬時。円とユーロの交換も不要・・ そんなフィンテック時代が、もう目の前に来ている。
従来の銀行・金融機関を使用した海外送金システムや、複雑な輸出入業務・納税手続きなどは完全に過去のものとなるだろう。また、海外旅行の際には外貨の概念を持つ必要もなく、両替の手間はいらない。
このように注目される仮想通貨であるが、日本では一般的に信用されていない。ビットコインなど仮想通貨の名前だけは聞いたことはあるが、特に関心もなく「胡散臭いもの」と考えている日本人が大半である。
しかし世界の現実は随分違う。フィンテックの中核をなす仮想通貨は、既に欧米はじめ中国など新興国を巻き込み、世界中で市民権を得ることに成功しつつある。仮想通貨はブロックチェーンなど、様々な新技術に支えられた壮大なイノベーションであり、インダストリー4.0 や IoT などと並び、新たな世の中を生み出す力を秘めている。
中国はじめ新興国では、金融インフラが弱く、銀行口座やクレジットカード保有率は非常に低い。その反面で、スマホ保有率が急上昇し、従来銀行に依存せず仮想通貨によるスマホ決済を発展させる土壌が整っている。
日本人が見向きもしないフィンテックが、中国など新興国で急成長していくのは実に残念なことであるが、仮想通貨には依然としての闇と光が共存しているのも否定できない。
闇の部分は、なんといっても仮想通貨の投機性である。市場には何十種類の仮想通貨が存在するが、実際に世間で使えるのはビットコインのみ。通貨として通用しない仮想通貨が投機対象で売買されている。仮想通貨の売買を行う取引所には信頼性の乏しい所もあり、かつて数年前にマウントゴックスという取引仲介サイトがサイバー攻撃で倒産した。
また、仮想通貨の代表であるビットコインは、金(ゴールド)を模造して開発されており、マイニング(採掘)の概念や採掘量の制限など、高度な技術の投入により優れた将来性が認識されている。
このために、金(ゴールド)以上にビットコインへの投機熱が加熱し、誕生以来激しい暴騰と乱高下が続いている。今年も一年間で約10倍値上がりしており、投機マネーの格好の対象となっている。
一方で、2017年は日本での「フィンテック元年」であり、仮想通貨を取り巻く環境に大きな進歩が起きている。まさにこれが仮想通貨の「光の部分」であり、フィンテックが発展するエンジンとなっている。
日本でも、ビックカメラがビットコインの扱いを開始し、ビットコイン使用の環境が整いつつある。さらに、日本政府が法的整備を開始し、取引所の信頼性も飛躍的に向上していることから、日本では2017年に仮想通貨が法的に認知されたことで、「胡散臭さ」の大半が解消されたと言っても過言ではない。
影と光が交錯しながら、フィンテックは激しい進化を続けていくことに疑いの余地はない。
ブロックチェーンの技術は、仮想通貨以外にも応用され多くの産業に変化をもたらすだろう。本稿の主役である中小製造業の将来にとっても、I4.0やIoTと並びフィンテックの動向は決して他人事ではない。

著者 高木俊郎