2015/03/28 第4話【ローカル企業のグローバル化の考え②】
第4話【ローカル企業のグローバル化の考え②】

【序文】
日本は英語が苦手な国であるが、近年子供達への英語教育にも力が入ってきた。その目的は、将来グローバルに通用する人材を育成したいとの必願が込められている。しかし、英語教育で真のグローバル人材育成が可能なのだろうか?

グローバルで活躍する人材には確かに英語力は必要であるが、日本人であることに誇りを持って世界に自分の考えを発信できる力が求められる。グローバルで生きると言うことは、自分が日本人であることを徹底的に認識することである。
製造業のグローバル化を考えるに先立ち、我々が日本人であることを認識するためにも、世界から見た日本の素晴らしさと、日本の再発見を今回のテーマとしたい。

①【おもてなし】
日本を訪れる海外からの観光客は、多くが日本を好きになって帰国する。食の豊かさなど様々な要因はあるが、感動の中心は日本人の『おもてなし』というべき日本人が根っこで持っている “サービス精神”に感動する。プレゼンは下手。話も下手。欧米人のように陽気に人に接することも苦手な日本人のサービス対応が世界を凌駕しているのである。なぜなのか?日本人が深層で持っている遺伝子を今回は解説してみたい。

②【お母さんと日本食】
オリンピック招致活動を通じ、『おもてなし』が日本の代名詞となってきた。
日本の”おもてなし精神”や広義な意味での”サービス精神”の原因を究明していくと、日本女性(特にお母さん)によって育まれてきた日本の歴史的事実に突き当たる。古来よりお母さんは、家の誰よりも早く起きて、あさげの準備をする。3度の食事も全部用意し、買い物や漬物や下準備、掃除洗濯、裁縫、ご近所付き合いや、時には来訪者の接待、冠婚葬祭、年中行事の準備や実行・・などなど、と実に献身的に働き、家族を支える。これが『おもてなし精神』の原点である。チップをもらってサービスを提供する米国の感覚とは大違いである。

大和撫子とは縁もゆかりもなさそうな現代日本女性も、古来のお母さんが持つ”おもてなし”を根っこで持っており、欧米女性はじめアジア各国の女性感覚とは随分違う。日本の女性は若くても、潜在的に大和撫子の遺伝子を強く持っている。

日本食が世界的に注目されているが、本来の日本食文化とは、”お母さんコック” が生涯労を惜しまず毎日休むこと無く繰り返し、母から娘に継承してきた”家飯”こそ日本食文化の王道である。何百年に渡る日本民族による工夫の結果、白米、発酵、だし、など日本食の基本となる文化が(生産から流通にいたるまで)極度に発展し、これにお母さんの献身的な毎日の創作活動が日本食 ”家飯 ” の真髄である。

③【母親が教える日本男児の本質】
かつての欧米社会は男同士が戦い、強いものが認められる”女性蔑視”の社会であった。反面日本の武士道は精神を大切にし、役割を大切にした。日本は歴史的に(あらゆる職種、階層で)母親の存在が偉大である。女性が偉大で、おもてなし文化を育み、サービス産業のレベルを世界一流にしてきた国家が日本である。

日本は製造業大国との認識も正しいが、実は日本が世界で最も優れているのは、サービス産業である。
日本がサービス産業に秀でるもう一つの理由が、”日本人男性”にある。相対する難局に遭遇した時に、日本人は相手の立場にたって考えられる事ができる稀有な人種である。

おそらくこの事実が、日本人の持つ最大特徴かもしれない。究極のサービス産業には、日本人のこの感覚が重要である。

④【甘えん坊の日本男性】
日本男性の特徴の原因を探求すると、また日本女性(お母さん)に突き当たる。
日本人男性は究極の甘えん坊である。お母さんに甘えることでは世界一である。そうなった理由は沢山あるが、欧米人との最大の違いがここにある。

独立心を優先する欧米。親子一体を優先する日本。
日本の母親にとって子供は自分の一部であり、欧米の母親にとって子供は独立した人間である。成人した欧米人は常に自分を中心に据えるが、日本の成人男性は(甘えん坊故に)相手の立場でも考えられる人が多い。これ故に、日本人には “村社会” 遺伝子がみなぎっている。”企業村”に於いても、団結し皆で協力し合う。・・甘えん坊だから。

日本人の一般的常識を基準にすると、外国人は実に自分勝手である。”企業村”には生息しない。”独立”こそが彼らの遺伝子である。この違いが分かってない人はグローバル社会を理解できない。

⑤【ハードの男、ソフトの女】
日本は長い歴史の中で、男女が役割を分業してきた民族である。『おじいさんは山に柴刈りに、おばあさんは川に洗濯に。。』モノつくりのハード面は ”男”が担い、その周りのソフト面を ”女”が担ってきた。

⑥【日本はサービス産業、超一流大国】
世界から見た日本が、とても綺麗で秩序正しく、ルールを守り、おもてなし精神を持った国として、誰もが驚愕し好感を持つのは、『日本は、第三次産業(=サービス業)の超一流大国であり、その理由は、日本の女性(お母さん)によって育まれた歴史にある』ことに気がつく人は少ない。

⑦【製造業に必要なサービス力】
これからの製造業グローバル競争に最も重要な事は、QCDといった”モノつくり”の競争力に加え,ソフト面としての”サービス力”であることは明白である。

中小製造業のグローバル化の第一歩は、日本のサービス産業の国際的優位性に気づき、この遺伝子を積極的に活用することである。

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著者 高木俊郎
10:18 | 製造業再起動 | コメント:0 | page top
2015/03/15 サイバー フィジカル システム と人工知能
(以下は 2015年3月11日のオートメーション新聞 第29号に掲載された寄稿記事です)

サイバー フィジカル システム と人工知能

人工知能が東大に合格する日が目前に迫っている。今の人口知能レベルは、偏差値47。全国の 80%の私大に合格できるレベルに到達したそうである。ニューラルネットによる「新たなる進 化」や「複雑なコトバを操る」人工知能開発も急速に進んでいる。
この人工知能技術は、最新ロボットとして一般社会で報道され話題となっている。目、耳、口を 持ち、人と共存するロボットが一般メディアで多く取り上げられるようになった。

製造業と人工知能。あまり一般社会では注目されていないが、製造業の発展にとって(人工知能 は)極めて重要な技術である事に疑う余地はない。しかし、人工知能の台頭により製造業を支え てきた『熟練工=ベテラン』は不要となってしまうのか? が業界内で大きな議論になっている。
この答えは、”チェス対戦の歴史” から見出すことが出来る。ここには、人工知能と人の能力の関 わりあいが示されている。1997年にチェス世界王者のガルリ・カスパロフがIBMコンピュータに 負けた。IBMが仕組んだこの大戦の結果に世界は震撼した。以降、人工知能は学習能力を身につ け、益々賢くなっているが、現在は人工知能(コンピュター)だけでチェス優勝者になることは できない。人の能力だけでもチェス優勝者にはなれない。チェス優勝争いは、卓越した人間と人 工知能がチームとなり、共同作業で戦う”チームプレー競争”となっている。

2045年に人工知能は “人間を超える” と予想されているが、2045年までのこれから30年間の製造業は、”『熟練工=ベテラン』が人工知能と一緒に仕事する時代” である事を、チェスの実例が 教えている。
精密板金製造業界で既に実現している人工知能活用の実態を紹介したい。

精密板金製造業界でのベンディング工程(曲げ工程)は、折り紙に似ている。 薄い鉄を曲げながら、最終的な形状を作り出す作業は、折り紙のようにどこで曲げ、どの順番 で曲げるか?を決めることがノウハウの一つでもあり、イメージを頭のなかで考えながら行う高度 な熟練仕事である。
“曲げベテラン” と呼ばれる ”曲げ加工の熟練工” は長年の経験から、曲げていく順番を判断する力 を持っている。 折り紙は手で折っていくが、鉄板を曲げるには高精度な機械と金型が必要である。何百種類の金型から最適な金型を決め、機械にセットし、CNCデータを計算し、イメージした曲げ順で機械を 使って曲げながら、最終製品を作り出す。機械の操作にも熟練工としてのノウハウが必要である。チェス王者のように、何千何万通りの組み合わせの中から、たったひとつの答えを導き出す能力 を必要とする、高度な仕事である。

当然、どこかを間違えれば “オシャカ”。たちまち不良品となり、前工程からやり直しとなってしまう。”オシャカ” にならなくても、精度の良い最高の仕上がりをするための、曲げ順や金型を 選択するのは容易なことではない。 このような高度なイメージ決定を、機械の前に立ち、図面を見ながら、頭脳を使ってシミュレー ションする。時には複雑でなかなかイメージ出来ないものも多く、過去の失敗経験の積み上げか ら経験的に判断されることも多い。

精密板金製造業での ベンディング加工(曲げ加工)は、一般の社会ではあまり馴染みのない仕事 ではあるが、日本には30万人以上の”曲げベテラン”が存在する。世界一の経験と技術技能をもつ熟練工の宝庫である。数においてもおそらく世界一であるが、その技術技能の力では、世界を完 全に凌駕している。今日までの精密板金製造業界を支えてきた日本競争力の一端である。

人工知能が“曲げベテラン”の領域に台頭してきたのは10年程前からである。多品種少量生産が 常態化し、段取り時間の削減と、曲げベテランの技術技能を伝承する若手人材の欠乏が業界全体 の問題となってきたことが主たる理由である。
米国カーネギーメロン大学の人工知能研究室が開発したアルゴリズムが、“曲げの人工知能”普及 のきっかけとなった。しかし、業界への普及は順風満帆ではなかった。当初、企業間の差別化が 無くなる危惧をもつ経営者や、職を失う危惧を持つ熟練工の反対が強かったが、現在は相当高い水準で普及している。
現在の”曲げの人工能”は、ベテランのノウハウを学習しながら、『曲げ順 序、金型選択、CNCデータ』の決定能力を日々向上させている。人工知能は、数億通りの組み合 わせの中から最適な一つの答えを瞬間的に導き出す能力を有しているが、やはり難解な時にはベ テランのノウハウが必須である。ベテランと人工知能(コンピュータ)のチームプレーであり、 ベテランのノウハウを伝承する最高の仕組みとしても活用されており、各社の”差別化エジン”の 役割を担っている。人工知能の普及で、企業間差別化の喪失も曲げベテランのリストラも起きていない。

インダストリアル4.0 (I4.0) の CPS(Cyber Physical System、サイバー フィジカル システム) におけるサバー(Cyber)とは、人工知能を始めとする“シミュレーション”と、世界を自由に行き 来する“ネットワーク”による徹底的な“デジタルワールド”である。現実社会(Physical)に存在する、”熟練工ノウハウ =アナログワールド”との融合が将来の製造業再 起動の青写真である。
青写真の実現イメージは”ドラえもん”である。未来と過去を行き来きする“ドラえもん”。人工知 能を駆使したシミュレーションは、時間を乗り越え『未来』が見える。クラウドで管理されるビッグデータは、動画やマルチメディア情報を使って瞬間に『過去』呼び出すことが出来る。未来と過去を行ったり来たり。一方、ネットワークは世界のどこにも行ける“どこでもドア”。”ドラえもん”がいれば現実社会(Physical)にもたらすメリットは莫大である。

"四次元ポケット"から入る 4次元空間が仮想工場である。現実工場は3次元空間。イントラネットとクラウドをつなぐGatewayが“四次元ポケット”の役割を担う。”ドラえもんのポケット”からは、便利な加工支援が次々と飛び出 してくる。最適な曲げ順序を教えてくれたり、組み立ての段取りや順番を動画で解説してくれたり・・。マンガやアニメでもなく、夢の話でもなく、実現可能な製造業の未来像である。

I4.0のCPSとは、4次元空間である仮想工場(Cyber Factory)と3次元空間である現実工場(Physical Factory)を “ドラえもん”が行ったり来たりし、最適な現実工場運営を可能にするシステムであり、これをスマート工場と呼ぶのかもしれない。

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著者 高木俊郎
12:35 | オートメーション新聞寄稿記事 | コメント:0 | page top
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