2019/12/06 製造業リセッション(景気後退)ーー『日本の中小製造業を取り巻く環境と対策』ーー
以下は 2019年11月27日のオートメーション新聞 第201号に掲載された寄稿記事です)

製造業リセッション(景気後退)
ーー 『日本の中小製造業を取り巻く環境と対策』 ーー

直近の機械受注が大幅な落ち込みを示している。驚くことに、落ち込み幅はリーマンショックに匹敵、またはそれを超える状況である。工作機械を始め、小型プレスやレーザ加工機など、大惨事といえるほどの急落に見舞われている。

今年の春先まで順風満帆であった機械業界は、いきなり暴風雨圏内に突入した。不思議なことに、業界を震撼する受注減に見舞われている各機械メーカーは、意外なほど冷静である。

その理由は、蓄積された膨大な受注残に加え、リーマンショックの時に体験した『急速な為替変動』が起きていないためである。現在の円ドル相場が比較的安定しており、現状のところ、急速な円高による輸出減や為替差損におびえる必要がないのが、リーマショック当時との違いである。

しかし世界を取り巻く環境は、世界的な本格的リセッション(景気後退)の危惧があり、決して予断を許す状況ではない。潮目が変わったと断言できる。

今回は、世界の経済状況の現状を再確認し、日本の中小製造業への影響と、今後の対応策を検討していきたい。検討に当たり、筆者が得意とする精密板金業界の現状に基づき検証を進める。

精密板金市場とは、国内市場4兆円規模の大きな産業であり、2万社の中小板金製造業が日本列島津々浦々に存在する『中小製造業・町工場』の代表的業界である。

世間的にはあまり目立たない業界であるが、自動化やデジタル化が飛躍的に進んでおり、付加価値の大きい『先端的な業界』である。従業員規模の平均値は30人程度の小規模企業の集合体であるが、なかなか魅力的な業界でもある。

精密板金業界では、薄板の鉄板を加工し、さまざまな製品が製造されている。精密板金業界の特徴は「多品種少量」と「短納期」である。配電盤や制御盤の外枠カバーは「筐体」と呼ばれ、量産のできない精密板金業界が得意とする代表的な製品である。

また、街にあふれるATM(現金自動預け入れ支払い機)や病院の医療機器(CT、MRI、人工透析機など)、駅の券売機やプラットホームのホームドアなど精密板金の製品は多岐にわたり、半導体製造装置や航空機部品から工作機械カバー、建設機械カバーなども精密板金の製品である。

あらゆる業界に入り込んでいる精密板金業界の景気動向分析から、いま日本で起きている不況業種を知ることができる。

不況に突入したのは、「工作機械」「建設機械」「半導体製造装置」であり、集中豪雨のごとくこの3業種に不況の波が押し寄せている。

世界に目を転じると、ドイツ経済は土砂降り、欧州全体も低調、中国・韓国は悲惨、アジア各国も下降と、海外の経済環境は非常に良くない。

最高の景気を継続しているのは米国のみである。この米国で、11月中旬にシカゴ展示会と呼ばれるFabtec2019(精密板金向けの見本市)が開催された。筆者もFabtecの取材に出掛けたが、多くの専門家から『驚愕の情報』を得て当惑している。

この当惑ポイントは3点。
1.すべての米国の業界専門家が、来年度から始まる「米国のリセッション」を予想していること
2.ドイツ発のインダストリー4.0の失敗が明確であること
3.精密板金業界は「自動化とIoT化のみ」がイノベーションであり、機械の進歩が終焉したこと。

この驚愕情報をベースに、日本の精密板金業界の来年を予想すると、限りない不安と希望が見えてくる。

不安の要因は、世界的なリセッションが間近に迫っていることである。日本の報道機関は、オリンピック不況や消費税不況を盛んに危惧しているが、それ以上に世界規模の不況期が訪れる危惧である。

半面、希望の要因は、自動化/デジタル化による『中小製造業再起動・再成長』の芽吹きである。

日本の中小製造業の最大の課題は「人手不足」であることは明白であり、現在の需給状況が続けば、人手不足は深刻化し、外国人労働者に依存する中小製造業が続出することは火を見るより明らかである。しかし、外国人労働者に依存した製造業が消滅の道を歩む事も、欧州が証明している。

日本の中小製造業に残された選択は、「最新技術の投入による生産性向上」、すなわち自動化/デジタル化によるイノベーションである。

『災い転じて福となす』は、日本の中小製造業に与えられた2020年のキーワードとなるだろう。この数年、中小製造業を襲った『狂気の受注増』は緩和され、目先の人手不足や外国人労働者依存も小休止となり、自動化/デジタル化による生産性向上に正面から取り組む絶好のチャンスがやってくる。

ドイツ発のインダストリー4.0の失敗が危惧されるが、これも中小製造業にとっては福音である。インダストリー4.0で大手製造業の囲い込みには入らず、中小製造業が主権を持って進める「自動化/デジタル化のイノベーション」実現の時がやってきた。

次回からは、中小製造業の自動化/デジタル化を具体的に実現する『人工知能やRPA、そしてクラウド技術』など、実現可能なイノベーションを紹介する。







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著者 高木俊郎

16:03 | オートメーション新聞寄稿記事 | コメント:0 | page top
2019/11/08 MMT(現代貨幣理論)と日本経済ーー『深刻なEU(欧州連合)のリセッション』ーー,
以下は 2019年10月30日のオートメーション新聞 第198号に掲載された寄稿記事です)

MMT(現代貨幣理論)と日本経済
ーー 『深刻なEU(欧州連合)のリセッション』 ーー

賛否両論の議論を押し切って、消費税増税が実施されたが、軽減税率やポイント還元など、制度が複雑ですこぶる評判が悪い。

今年7月、MMT(現代貨幣理論)提唱者のステファニー・ケルトン ニューヨーク州立大学教授が来日し、 MMTに関する講演を行った。これをキッカケに、『消費税増税は間違っている』『国債発行残高は借金ではない』『国民は騙されている』との主張が飛び交い、大きな反響を読んでいる。

今日までテレビなどで盛んに語られた『日本は借金大国。消費税を上げないと借金で大変なことになる』といった、『消費税増税、必要論』の話を真っ向から否定する主張である。

確かにテレビで『日本は借金で大変だ!』と言われても、違和感を覚える人も多かった。事実、日本は海外債権が多く、世界一の金持ち国家である。国の財政収支の上で『歳出が歳入を上回り財政赤字となり、国債の発行残高が増え続けている』のが実態であり、借金とは違う。

ステファニー・ケルトン教授が主張するMMTとは、「Modern Monetary Theory」の略で、教授の解説によれば『日本や米国のように、自国通貨を発行する政府は自由に貨幣供給をしても問題ない』とのことである。

つまり『日本の財政赤字も赤字国債も全く問題ではない。緊縮財政も不要。消費増税も不要で、いくらでも赤字国債を発行できハイパーインフレは起きない』という夢のような論理であり、『もっと国債を発行して需要を掘り起こせば、日本はもっともっと豊かになる。

供給限界まで国債は発行でき、日本はそれができる最良の国である』と説き、世界中で話題となっている。

半面、日本政府は財政安定化を目指しており、プライマリーバランス(国の財政収支での歳入と歳出のバランス)を重要視しているため、MMTとは真っ向から対立する。特に主流派経済学者の多くはMMTに否定的であり、『日本政府もMMTを肯定していない』と言われている。

しかし、プライマリーバランスを重要視するあまり、緊縮財政を継続し、増税を強いる政策を続ければ、日本経済は完全に頓挫することは明らかである。また、緊縮財政は日本の安全保障に重大な懸念をもたらしている。

防衛面では、米国依存に限界があり、自国防衛の必然性が増している。また、台風19号による日本列島の随所に発生した大惨事から、改めて災害予防の必然性を思い知らされた。水害・風雨・地震などへの将来への備えのためにも国土強靭化は重要課題であり、好むと好まざるとに関わらず、大型の建設国債を発行し国土強靭化に大至急取り掛かる必要がある。

一方で、今日まで極めて順調であった日本経済は民間需要が減少し、リセッション(景気後退)の危険信号が点滅している。工作機械受注は、リーマンショック並みの落ち込みである。

消費増税の影響やオリンピック不況などの危惧もあるが、世界経済のリセッションも深刻である。米中貿易戦争による中国や韓国の悪い状況は、各紙の報道の通りであるが、EU(欧州連合)の悲劇についてはあまり報道されていない。

EU加盟国は自国の主権を持てない国家の集合体である。日本や米国のように自国通貨を持たず、国債の発行も自国ではできず、MMTの論理も通用しない不自由な国の連合体である。かつては、グローバル化の理想的な姿としてもてはやされたEUは、もはや満身創痍で、EU崩壊の危険もはらむ問題が山積している。

EUはこの数年災難続きである。 特にドイツ経済のリセッションは深刻であり、中国輸出の減少がリセッションに拍車をかけている。

英国のブレグジット(EU離脱)問題も、EUに大きな影を落としている。キャメロン前首相が行った国民投票は、予想や期待に反し、離脱が決まってしまった。移民問題やEU以外の貿易交渉すら自国の意思でできない事に不満を持つ『誇り高き英国国民』の声である。

英国が、ブレグジット実現への困難を乗り越え、完全な国家主権の回復を勝ち取れば、英国には明るい未来が開けるかもしれない。 しかし、ブレグジットによって最も悪い影響を受けるのはドイツである。ドイツのEU各国への影響力低下は必至であり、28カ国で構成されるEUは、各国の利害が一致せず、離脱希望国が続出する可能性を秘めており、EU崩壊の大惨事が起きるかもしれない。

EUは、グローバル化の象徴である。グローバル化の弊害がEUを直撃している。EUが崩壊する時、グローバルという言葉が終焉を迎える時であろう。

今、国際社会で起きている葛藤は、グローバル化と非グローバル化の戦いである。日本やドイツは依然としてグローバル化を死守する一方で、英国や米国は非グローバル化を進めている。

日本では、自国第一主義を否定し、トランプ大統領の米国第一主義を危険思想として批判する報道が多いが、従来施策に固守せず、日本でもグローバル主義一辺倒を見直し、日本第一主義を考えても良いのではないだろうか。

日本第一主義とは、日本津々浦々に存在する中小製造業が名実ともに国際的競争力を持ち、地元の発展に貢献する企業の創出であり、海外進出から国内シフトを強烈に推進することである。

経営資源を地元に集中し、社員やお客様、そして地域住民とともに発展する国際的中小企業こそ、 日本の発展を支える大きな原動力となるだろう。これが実現できるのは、全国津々浦々に製造インフラを保有し、名実ともに長き歴史と主権を持った国家『日本』だけである。








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著者 高木俊郎
22:27 | オートメーション新聞寄稿記事 | コメント:0 | page top
2019/09/29 令和時代の製造業人手不足ーー『最新兵器【RPA】の活用と生産性向上』ーー
以下は 2019年9月25日のオートメーション新聞 第195号に掲載された寄稿記事です)

令和時代の製造業人手不足
ーー 『最新兵器【RPA】の活用と生産性向上』 ーー

日本の生産年齢人口が、急速に減少している。生産年齢人口とは、人口の総数から子供や老人を除いた15歳〜64歳までの人口のことである。戦後の日本の生産年齢人口は増加を続け、1995年にピークの8700万人となったが、以降は減少を続け、現在までに1000万人以上が減ってしまった。10年後には7000万人を割り込むと予想されている。

新聞やテレビでは、日本の人口減少による危機説が大きく報道されているが、日本が直面する課題は、人口減少より遥かに速いスピードで進む生産年齢人口の減少である。

人口減少による経済への懸念は、需要減少であるが、本当に深刻なのは、人手不足でモノが作れずサービスが提供できない供給危機である。すでに中小製造業では、人手不足の影響が深刻化しているのは周知の事実である。

大半の中小製造業では、優秀な若手人材の確保が困難を極め、アジア諸国から労働者の調達に邁進し、当面の生産を乗り切っているが、外国人労働者に頼るものづくり経営が非常に危険であることは、ドイツはじめ欧州連合(EU)先進国の混乱をみれば一目瞭然である。

特にドイツでは、移民労働者を受け入れてきた結果、さまざまな後遺症(設備投資の遅れ、企業衰退、治安悪化、自国民失業など)が発生し、EU崩壊危機まで危惧される重要問題に発展しているが、日本では報道されていない。

突然、ドイツ近況分析の話題に変わって恐縮であるが、日本は『ドイツ事例を真剣に学ぶ必要がある』と筆者は痛切に感じている。その理由は、ドイツの事例は日本の未来への警鐘であるが、日本では海外で起きている潮流変化に鈍重であり、世界から遅れた『周回遅れの施策』に陥っているからである。

ドイツは、インダストリー4.0で世界の製造業に衝撃を与えたIoTのパイオニアである。『日本より進化した優等国』といったドイツへのイメージも日本で定着し、アジア諸国も中国も、ドイツのものづくりをお手本とする傾向があった。

ところが、VW(フォルクスワーゲン)の排ガス不正事件のあたりから『ドイツものづくり神話』が崩壊し始め、最近になってドイツは本格的なリセッション(景気後退)に陥っているのをご存知だろうか?

ドイツの提唱したインダストリー4.0は、その構想は素晴らしいものの、ドイツ国内においても本格的実証例は非常に乏しく、中小製造業には普及していない。また一方で、ドイツは移民大国であり、移民後遺症に悩まされている。

労働時間の短縮を美徳とする国策が、外国人労働者依存経営を常態化させた結果、生産性向上に関心のない労働環境が生まれ、最新技術への投資が遅れ、現場の改善も進まない悪い事態を招いている。

さらに、ドイツは極端な外需依存の輸出大国である。米中貿易戦争による中国の景気後退やEU周辺国の衰退を受けて、外需が衰退し、絶好調の経済環境から一転し深刻な不況に突入している。経営不振のドイツ銀行は、20%近い社員をリストラする断腸の策で、延命を図っているが、次の大惨事はタイタニックと同じ運命となるかもしれない。

ドイツは、前進も退路も断たれた打つ手なしの状況にある。ドイツから学ぶべき最大のポイントは、『外国人労働者の弊害』と『ドイツ式インダストリー4.0の盲点』についてである。

さて、これらのドイツ事例を下敷きに、話を日本の中小製造業の人手不足と生産性向上の話題に戻したい。ドイツと違って、日本の中小製造業は極めて健全である(今のところは…)。

日本の中小製造業では、経営者と一体になって生産性向上に努力する工場長格のベテラン従業員が複数存在し、従業員の一人一人も『小さな改善運動』に熱心であり、現場目線で生産性向上に取り組む姿は特筆に値する。

日本以外のあらゆる国では成し遂げられない『現場力』が日本の魅力であるが、『事務所要員の非効率化』や『経営幹部への仕事の集中』が普遍的に起きており、中小製造業が生産性向上に向けての解決すべき重要な課題となっている。これらの課題を根本から解決する特効薬をご紹介したい。

その名は、『RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)』。ソフトロボットである。平成後期にRPA技術が確立され話題となった。AI(人工知能)やOCR技術を取り込んだ『汎用RPA』が世の中に登場すると、またたく間に、銀行・保険会社・大企業メーカーや一部の地方自治体などで普及が進んでいった。

RPAは『人に代わってコンピュータ操作や処理を自動で行ってくれるアシスタント』であり、コンピュータ内に常駐する目に見えないロボットである。当社(アルファTKG)は、3年以上前から製造業に特化するRPAの社内開発を行い、昨年度より本格的市場投入を開始した。中小製造業がRPAを導入することで、幹部社員や事務員の単純作業が開放され、大幅な生産性向上が実現することが、多くの導入事例によって実証されている。

具体例をいくつか挙げると、(1)見積作業をRPAで自動化した結果、幹部社員が単純な見積作業から開放された (2)図面登録に必要な図番入力など、単純人手作業をRPAで自動化し、大幅な間接要員削減につながった

(3)生産管理システムと図面管理をRPAで自動統合し、総合IoTシステムを実現した、RPAの活躍が増大しており、大きな生産性向上と投資効果を生んでいる。当社では、製造業向けのRPAを目的別に、月額数千円から2万円の費用で販売している。

具体的には(1)図面読み取りRPA㈪注文書読み取りRPA (2)CAD間接続RPA㈬CAD/CAM連携RPA (3)作業指示書読み取りRPA㈮PDF/DXF自動変換RPAほか、数多くのRPAを市場に投入し、さらにその種類を日々増やしている。近い将来、一人の社員に複数台のRPAがアシスタントとして活躍する時代がやってくるだろう。







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著者 高木俊郎
09:01 | オートメーション新聞寄稿記事 | コメント:0 | page top
2019/08/30 令和時代の不況防衛対策ーー『生産性向上の最新兵器【RPA】』ーー
以下は 2019年8月28日のオートメーション新聞 第192号に掲載された寄稿記事です)

令和時代の不況防衛対策
ーー 『生産性向上の最新兵器【RPA】』 ーー

元号が変わり、誰しもが明るい未来に期待を寄せているが、消費税増税や米中貿易戦争もあり、決して予断を許さない経済予測が囁(ささや)かれ始めている。中小製造業の経営者も、肌感覚で多少の危険信号を感じているようである。
昨年まで、好況感に満ちあふれていた精密板金業界でも、最近では先行き警戒心を覚える経営者が急増している。

7月31日〜8月3日まで東京ビッグサイトで開催されたプレス・板金・フォーミング展(MF-TOKYO)は、過去最高の出展社数と来場者数でにぎわうはずであったが、予想に反し、前回より来場者数が減少した。

景気のピークを超えた証拠かもしれない。消費税増税、オリンピック、米中貿易戦争、円高などを発端に、令和時代の経済危機はいつ・どの規模でやってくるのだろうか? マクロ的な視点から、日本経済を取り巻く環境を分析し、日本の政治体制や米国を中心とした国際情勢を精査すると、確かに日本に危険な状況が迫っている事に気がつく。

米国トランプ政権は、反グローバル主義を政策に据え『アメリカ第一主義』を推進する保護主義政策を実行している。自国第一主義の流れは、EUを離脱する英国とも通じるものがあり、欧州各国でも反グローバル主義が台頭しており、グローバル主義VS反グローバル主義の対立構造が令和の時代の国際環境といっても過言ではない。

しかし、わが国日本では、反グローバル主義には極めて鈍重である。与党も野党もグローバル主義を前提としており、トランプ氏に代表される反グローバル・保護主義を政策に掲げる政党はほとんど存在せず、日本では『日本第一主義』への芽吹きは小さく、本格的な議論すらない。

令和の時代を迎えた今日、米国を中心とした反グローバル主義の台頭により、自由主義諸国の間でも各国の思惑が衝突し、ぶつかりあっている。トランプ政権はとにかく国益第一優先で、中国との覇権争いを表面化させ、米中貿易戦争を仕掛け、移民を制限して国内の労働者を守り、ホルムズ海峡の防衛を各国に迫り、日米安保条約の解消を示唆するなど、新時代の保護主義に向かっているが、この米国の動きを『トランプの横暴』などと単に批判的に報じる日本メディアは少し短絡すぎではないだろうか?

グローバル主義が後退し、その次に来るのは、各国の強い政治主導による国策優先である。強い政府が自国の利益のために大きな力を発揮していく時代が、令和時代の国際社会である。極論ではあるが、日本の政権が強い力を持って『日本第一主義』を掲げ、巨額な財政出動を実施し、大手企業の日本への製造回帰を徹底する政治を断行すれば、日本の経済力は急回復し、輝かしい令和の時代を夢見ることも可能かもしれない。

しかし、残念なことに、今日の日本の政治主導力は弱く、財政均衡などを錦の御旗として、消費税増税や緊縮財政などに頼っていては、やがて令和の大不況が到来しても、何ら不思議はない。どんな厳しい大不況が来ようとも、製造業にとってそれを乗り切る万能薬は『生産性の向上』である。好不況とは需要と供給のバランスで生じるが、中小製造業にとってどんな好景気がやって来ても生産性が低くては仕事はやって来ない。

また、どんな不況が来ようとも生産性の高い工場に仕事が集中する事は歴史が証明している。中小製造業にとって唯一の不況対策は『生産性向上』である。

日本の中小製造業は、戦後の高度成長時代より飛躍的な生産性向上を果たしてきた。機械化による生産性向上、5Sの徹底による生産性向上、自動化による生産性向上など、世界に先駆けたものづくり先進国として世界のお手本となってきたが、残念なことに、日本の労働生産性は世界20位と先進国最下位である。

日本の中小製造業では、NC化や自動化の進んだ製造現場を維持するために、生産管理やCAD/CAMなどたくさんのコンピュータが整備され、多くの事務員やエンジニアがコンピュータを使って作業をしているのがごく普通の姿である。

しかし、多品種少量生産や短納期化が極端に進んだ結果、事務員やエンジニアに仕事が集中し、生産性を大きく下げている事は、よく知られている事実である。事務員やエンジニアの生産性向上の課題は、以前より強く認識されていたが、最近になってこの生産性を大幅に向上させる特効薬が誕生したのをご存じだろうか?

その名は、『RPA』(ロボテック・プロセス・オートメーション)ソフトロボットである。RPAは、平成後期に世の中に登場し、銀行・保険会社・大企業メーカーや一部の地方自治体などで爆発的に普及が進んでいる最強武器である。

何がすごいのか? 一言で言えば、『人に代わってコンピュータ操作や処理を自動で行ってくれるアシスタント』である。RPAの導入で、人々は煩雑で単純なコンピュータ作業から開放され、事務業務の大幅な生産性向上を実現する夢のツールである。

ロボットと聞くと、一般的には産業用ロボットやアイボなどハード的なイメージを思い浮かべるが、ソフトロボットはコンピュータ内に常駐する目に見えないロボットである。RPAは巷(ちまた)で大きな話題となっており、その効果も実証されているが、中小製造業への本格的導入はまだ始まっていない。

MF-TOKYOの会場においても、RPAを本格的に出展していた企業は(私の知る限り)なく、中小製造業への普及促進はこれからである。しかし、中小製造業の生産性向上の切り札は、RPAの活用にあることは明白であり、令和の時代の不況対策はRPAの導入なくして語ることはできない。

次回より、RPAの具体的導入とその成功事例をご紹介する。







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著者 高木俊郎
08:59 | オートメーション新聞寄稿記事 | コメント:0 | page top
2019/07/20 令和時代の製造業の発展戦略再びーー『グローバル化と失われた30年』ーー
以下は 2019年7月17日のオートメーション新聞 第188号に掲載された寄稿記事です)

令和時代の製造業の発展戦略再び
ーー 『グローバル化と失われた30年』 ーー

バブル崩壊から30年が過ぎ去った。かつて『失われた10年』と呼ばれた日本経済の悲劇は、10年を過ぎても続き、今日の若き日本人から「何が失われたのか?も分からない」と言われても不思議ではないほどバブル時代は遠い昔のこととなった。

平成元年の頃、世界経済の頂点に君臨していたのは日本企業であった。世界の時価総額ランキング上位50社に、日本企業の35社がランクインし、日本は光り輝いていた。たったの30年が経過した平成の最後、世界の経済界から日本企業の姿は消えた。

令和にバトンが渡った現在、上位50位にランクインできる日本企業はトヨタ1社であり、それも35位。かろうじて入っているのみである。日本企業の労働生産性も低く、先進国最低となってしまった。事実、平成時代は名実ともに『失われた30年』である。

「失われた30年、失ったものはなにか?」その答えは、日本人の「自信」と「誇り」。そして世界から羨まれる「日本の力(国力)」と「日本の信頼」である。

なぜこうなったのか?この原因を究明すると、「グローバル化」というキーワードに踊らされた日本企業の不幸が浮き彫りになってくる。

バブル崩壊で、自信を失った日本の大多数の経営陣は、政治家やメディアが掲げる「グローバル化と構造改革」を経営の旗印とし、日本で育まれた日本の企業文化を放棄し、米国の掲げるグローバル価値観に追従することに血眼になってしまった。

この結果、国際市場では韓国、中国にボロ負けし、国内ではリストラで技術も人材も失い、残った社員のモチベーションすらも低下した。家電大手企業の悲劇がこれをもの語っている。

戦後75年間の歴史を精査すると、歴史の中から日本経済のパラダイムを大きく揺り動かした『3つの事件』と、グローバル化の本質が見えてくる。

最初の事件は、戦後間もない①1951年の日米安保条約締結。2つ目は、②1985年のプラザ合意。そして最後が、③平成初期のバブル崩壊である。

1951年の講和条約とともに締結された日米安保条約により、日本は自由主義陣営に所属することが決まった。すべての経済活動の歴史的原点がここにあり、「新しい価値観を持つ日本人が起業し、新しい日本国家の建設が始まった」瞬間である。

戦争を放棄した日本は、まずは飢えをしのぎ「食料を手に入れること」に邁進し、その次に「経済力の向上」という課題に向かって一丸となって突き進んでいった。これが国家の明確な目標であった。

この目標のもとで、製造業が復活し「日本人が、日本人の顧客のために、日本の工場で作る」概念が徹底され、最新の国産機械も誕生し、世界最高のものづくりを純粋なる国産化によって日本は手に入れた。

日本の工場が作り出す製品の機能や品質は、世界№1である。この頃の社会人は、皆が夢を描き、豊かさを求め、先端技術に挑戦し、「希望と勇気」を持って、過酷な労働に励んでいた。

エコノミックアニマルとまで比喩された日本人の過剰労働は、終身雇用制をベースとした企業村社会での、自発的な行動の結果であり、これが日本式経営として日本中に定着した。日本式経営のもとで最先端技術が花開き、日本の顧客のために日本ニーズを組み込んだ日本製品は、信頼のブランドとして世界中でも話題となった。

各企業は、日本で成功した商品を世界中に販売拡大する戦略を推進した。この国際化を「インターナショナル化」と呼び、大成功を収めている。国や国境を意識しない「グローバル化」とは全く異なる国際化である。

大成功を収め、喜びに湧く日本経済に衝撃を与える大きな国際的事件が、1985年に起きた。ニューヨークプラザホテルで開催された先進国蔵相会議(G5)で、世にいう「プラザ合意」である。

プラザ合意は、円高・ドル安への誘導合意である。円はこの合意により急速に円高に振れ、1ドル230円台から1年で150円まで円高が進んだ。これにより、各企業はそろって低賃金のアジアに工場を進出することを戦略に据えた。

「日本人が、日本人の顧客のために、日本の工場で作る」パラダイムが崩れ、「アジア人が、日本人の顧客のために、アジアの工場で作る」というパラダイムシフトが起きている。

円高不況を克服し、逆に円高をきっかけにバブル経済が芽吹き、土地や株式は高騰し大儲けする企業が続出した。企業も個人もお金持ちとなったが、夢は続かない。平成の時代の始まりとともに、バブル崩壊が始まり『失われた30年』が始まったのである。

今回のテーマである「グローバル化」が日本で始まったのは、バブル崩壊以降である。「世界の誰かが、グローバルの顧客のために、世界の何処かの工場で作る」がグローバル化である。同じ国際化でも「インターナショナル化」と「グローバル化」の違いを歴史から学ぶことができる。

令和時代の製造業再起動に大きな障害となるのは「グローバル化」の思想である。世界中の顧客ニーズを得るためにグローバル・マーケティングを日本の企業が行うことは、極めて難しく、国境をなくし、人・資本・モノを自由に移動し経営を行うことが、日本人にとって最も苦手であることは歴史が証明している。

令和時代の製造業再起動のポイントは、①国内工場への回帰(リショアリング)②短期戦略としての外国人労働者の雇用③IoT/デジタル化及びロボット化による徹底的な自動化工場の推進である。

世界にばらまいた優秀な社員も国内に戻し、日本の本丸を固めることに尽きる。日本の歴史・文化を学び、日本人としての自信と誇りを取り戻し、皆が大富豪になることを目標に据え、令和時代の製造業の発展戦略を練ることが必須である。

すべての人々が団結し、日本の国力増強を考えて実行さえすれば、令和の幸せが実現するだろう。







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著者 高木俊郎

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