2020/07/30 『テレワーク温度差・中小製造業のガバナンス』に向かってーー【コロナ禍が教える日本のものづくり課題】(その2)ーー
以下は 2020年7月29日のオートメーション新聞第225号に掲載された寄稿記事です。

『テレワーク温度差・中小製造業のガバナンス』に向かって
ーー 【コロナ禍が教える日本のものづくり課題】(その2)ーー

今月(7月)に富士通株式会社が、基本在宅テレワークを公表した衝撃的なニュースをご記憶の方も多いと思われる。コロナ対策として始まったテレワークが、たった数ヶ月で『新たなる働き方』として大企業の指針となった事は、労働環境の大変化を予感させる重大ニュースである。

富士通は、テレワークなど働く場所の自由選択により2022年末までにオフィスを半減すると発表した。富士通社員にとっての労働聖地の半分が消滅するのである。戦後70年以上に渡って続いた企業像とは、事務所や工場を職場とし、社員一人一人が自分の会社に居場所を持つことで社員として自覚し、企業村の一員として集団活動に携わってきた事である。

テレワークや在宅勤務によって、先人が育んできた『 企業文化』が崩壊し、社員の帰属意識が薄れることが危惧されるが、富士通のみならず日本を代表する大企業の多くは同様の方針を固めており、日本全国に壮大なパラダイムシフトを巻き起こすのは必至である。

コロナ感染拡大防止から始まったテレワークは、通勤地獄の開放など社員メリットも多くあり、SNSやメディア報道ではテレワークへの好意的な声が多く『テレワークを実行する企業は素晴らしい』といった社会的評価も生まれている。

しかし本当にテレワークや在宅勤務はニューノーマル社会の救世主となるのだろうか?

特に中小製造業の観点では、残念ながらテレワークや在宅勤務には否定的な声が多い。新型コロナ感染防止の緊急対策に対して異論を唱える人はいないが、中小製造業にとってテレワークや在宅勤務は現実的ではない。

中小製造業にとっては、コロナ第2波・第3波に備え一時的な在宅勤務を検討するのが精一杯であり、コロナ終息後もテレワークや在宅勤務に切り替えようと思う中小製造業の経営者はほとんどいない。

大企業と中小製造業には相当の温度差がある。その温度差を認識しつつ、中小製造業の取り巻く環境変化を前提に次世代の経営戦略を検討してみたい。

まず初めに、中小製造業の実態の一例として、東京都の部品製造業 SS社の実例を紹介したい。SS社は、大手製造業に電気補助部品を納入している業界トップ企業であり、取引先は千社にのぼる。

都内には自社工場が複数あり、流通センターも自前で所有する一方で、数十人規模の営業部隊を全国に擁する優良中堅企業である。

SS社は、緊急事態宣言が発出された当時、営業及び営業事務員全員に交代制の在宅勤務を指示し、在宅勤務のシミュレーションを実施した。

SS社経営陣は、そのシミュレーション結果を持って、第2/第3波のコロナ襲来に備える具体的戦術を模索している。筆者は、先日SS社の緊急会議に参加した。

参加者は社長・専務及び営業系社員数十名であり、会議テーマは、今後の第2/第3波のコロナ襲来に対応する在宅勤務用の必要機材とその活用方法を検討する事であり、営業マンの本音を聴取する重要な会議でもあり、筆者にとっても貴重な体験となった。

営業マン全員からの一致した声は、SS社の営業としての誇り、SS社の総合力の強み、そして何より対面営業の重要性 及び SS社営業の団結と協調の重要性であり、『在宅勤務では何もできなかった』と語っている。

また、『非対面営業も現実性がない』と断じている。彼らの総意は、第2/第3波のコロナ襲来に備えた限定的な在宅勤務のあり方への提案と同意はあるものの、テレワークや長期的な在宅勤務には否定的であり、ましてやコロナ終息後の在宅勤務など論外であるとの結論であった。

この結論は、広く日本全国の中小製造業に共感されると思われる。製造現場のテレワークが不可能である事は議論の余地もないが、事務職やエンジニアと営業にテレワークを実施する事も容易ではない事を如実に物語っている。

メディアや大手各社が、声高々にテレワークや在宅勤務を掲げたとしても、中小製造業との温度差は明白である。中小製造業が大半を占める日本のものづくりにテレワークや在宅勤務が定着するとは考えづらい。

しかし残念なことに、テレワークや在宅勤務を推奨する社会の総意は、中小製造業にも(感染防止の観点から) 社会的義務として襲いかかって来るのは避けられない。
ニューノーマル社会の新常識に対応しないと、『感染防止に無関心な企業』として社会的批判を受けるばかりか、社員の反発も想定され、将来的に経営リスクは増大していく。

中小製造業に襲いかかるガバナンスの要請は経営者にとって無視できない。
ガバナンスとは、コンプライアンス(法令遵守)を実施するための社内の管理体制であり
、企業ではコーポレート・ガバナンスと呼ばれている。

中小製造業にも、ニューノーマル時代の新たなるコーポレート・ガバナンスが要求される。
『(感染を) 恐れるガバナンス』時代の到来である。

この要求を満たすには、テレワークや在宅勤務を真っ向から否定せず、事務部門やエンジアリング部門の近代武装化投資を検討すべきである。その代表的な武器は数年前から(大手企業や地方自治体を中心に)普及が始まったソフトロボット【RPA】である。

中小製造業は、今日まで製造現場への投資による生産性向上を実現してきたが、RPAによる事務部門の近代武装化は、手付けずの領域である。

RPAによる事務所自動化を実現すれば、『恐れるガバナンス』の実現と同時に、工場全体の生産性向上に寄与するのは確実であり、テレワークや在宅勤務もずっとやりやすい環境が構築できる。コロナ禍がキッカケで、中小製造業の近代武装化が一気に加速するのは間違いない。







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著者 高木俊郎

17:31 | オートメーション新聞寄稿記事 | コメント:0 | page top
2020/06/03 製造業のテレワークーー『第4次産業革命の幕を開けたコロナ禍』ーー
以下は 2020年5月27日のオートメーション新聞 第219号に掲載された寄稿記事です。

製造業のテレワーク
ーー 第4次産業革命の幕を開けたコロナ禍 ーー

突然に世界を襲ったコロナ禍は、感染者・医療従事者を窮地に陥れたばかりでなく、危機的な大不況を誘発し、世界中の大惨事となった。一刻も早い終息を願うばかりである。

コロナ禍は、人々の心に深い「不安と恐怖」を植え付け、この後遺症が癒やされるのは容易ではないが、半面でテレワークやオンライン会議の実践など、第4次産業革命を意識させる大きな進歩があったことも事実である。『災い転じて福となす』こんな観点から、コロナ禍の数カ月を顧みたい。

『川を上れ、海を渡れ』という言葉がある。連綿と続く時間の流れをさかのぼり、歴史を学ぶこと。そして、海を越えて世界から自分を見つめよう。という名言である。

私自身も世界を渡り歩く長い人生の中で、常に心に持ち続けた言葉である。しかし残念なことに、テレビ報道される「歴史や世界からの情報」が、日本中の人々を不安と恐怖に陥れた。

感染症の歴史をさかのぼれば、天然痘やペスト・スペイン風邪など、パンデミックの歴史が続々と出てくるが、歴史専門家の解説を聞いて、感染症の恐怖が多くの人々の心に刻まれていった。海の向こうの報道では、パンデミックを起こした国が登場し、『ニューヨークの悲劇は、明日の東京の姿だ』などの声に、日本中に動揺が広がっていった。

歴史的悲劇や海外の悲劇がわれわれに迫っていると洗脳され、人々は不安になり動揺するが、冷静に考えれば、大昔の世界と現在では全く事情が違うし、欧米では、移民・難民・ホームレスなど極端な貧富の差がパンデミックの要因となっており、社会秩序のある日本では全く事情が違う事に気づくはずである。

歴史と海外からの情報が、『川を上れ、海を渡れ』の趣旨とは、真逆の結果を生んでしまったが、この数カ月間で洗脳された「不安と恐怖」を人々が持ち続けても、明るい未来はやってこない。

コロナ禍の数カ月を総括し、われわれが認識すべきことは『遺伝子の誇り』である。国家強制力ではなく、自粛要請に自主判断で従う日本人の遺伝子は、どこの国にもまねできない。コロナ禍を乗り越え、明るい未来を開くためには、「不安と恐怖」から自らを解き放し、実践された『日本人遺伝子』に誇りを持ち、未来に進む『希望と勇気』が重要である。

また、イノベーションの観点もコロナを乗り越えるための必須条件である。コロナ禍の数カ月を総括すると、オンラインの壮大な実証実験と普及が一気に進んだ事が明確である。『災い転じて福となす』第4次産業革命が本格的に幕を開けたのである。

第4次産業革命は、人類が歴史的に経験する4回目の産業革命である。19世紀の産業革命から始まり、第2次産業革命で『電気』が誕生。第3次産業革命で『コンピュータ』が誕生し、『インターネット』が誕生したイノベーションが現在の第4次産業革命である。

コロナ禍以前には、誰も積極的ではなかった「オンライン」が、たった数カ月で世界中に浸透したのは驚愕に値する。テレワークによって好むと好まざるとにかかわらず、「オンラインミーティング」が必須となり、「オンライン演奏会」や「オンライン飲み会」などが誕生した。

テレワークやオンライン会議が、思ったより事業効率を上げていくことに驚いている経営者は多い。『やってみないと分からない』はまさにこの事である。

都会に事務所を持つ企業は、ほとんどの会社がテレワークを実施した。その結果、オンラインミーティングの威力と効果を初めて知った経営者は多く、私の友人で経営者の一人は、『アフターコロナ時代でも、オンラインミーティングは捨てられない。こんな便利で効率的なものだとは知らなかった』と語っている。

大手製造業の経営者は、かねてより立派なテレビ会議室での海外現地法人とのミーティングを自慢していたが、事務所閉鎖で活用できず、やむを得ずパソコン利用のインターネットオンラインシステムを活用し『こんな簡単にオンラインができるとは驚愕だ』と語っている。

コロナ禍で、オンライン活用の非対面コミュニケーションが一気に本格化したのは奇跡であり、もしコロナ禍に、インターネットがなかったら社会はどうなっていただろうか? コロナ禍が『第4次産業革命の本格普及の幕を開いた』と言ったら過言だろうか?

このオンライン革命が、中小製造業にも大きな影響を与える事は明白である。当社(アルファTKG)のお客さまは、地方の中小製造業が大半である。コロナ感染拡大の影響で、テレワークや工場閉鎖を実施したお客さまは皆無に近く、首都圏の企業から比べたら恵まれた状況であったが、オンラインの実証実験をする機会がなかったことが将来のマイナスになる危惧がある。

今回のコロナ禍の影響が少なく『われわれ製造業にはテレワークは無理だ!』と判じる経営者が多いが、東京に営業事務所を持ち、群馬県に工場を持っているA社の社長は、東京営業事務所のテレワークの経験から、群馬の工場に徹底的な非対面型オンラインミーティングシステムを導入設置し、膨大な経営効果を上げている。

コロナを乗り越える経営戦略の実践である。A社の群馬工場では、工場事務所と現場が、PCやタブレットを使っていつでも画面対話ができる仕組みを完成させた。東京営業事務所の閉鎖によってテレワークする営業マンとも、図面を見ながら会話するのも簡単であり、非常に大きな効果を上げている。

最近ではCADを担当するベテラン担当者の通勤負担を軽減するために、テレワークも導入した。A社が挑戦するシステムは、感染危機を排除し、情報距離を縮める最新武器である。

中小製造業において、工場内事務所と製造現場との情報距離を縮めることで、飛躍的な段取り削減による生産性向上が実現することをA社が教えてくれた。







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著者 高木俊郎

14:22 | オートメーション新聞寄稿記事 | コメント:0 | page top
2020/04/25 工作機械メーカーの悲鳴ーー 新型コロナで変わる精密板金業界 ーー
以下は 2020年4月22日のオートメーション新聞 第216号に掲載された寄稿記事です)

工作機械メーカーの悲鳴
ーー 新型コロナで変わる精密板金業界 ーー

新型コロナ終息はいつなのか? 先の見えない状況に人々はおびえている。当社(アルファTKG)は、東京・日本橋を拠点にインドで開発を行う『製造業向けのソフト』を扱う会社であるが、インド全土のロックダウンと日本の非常事態宣言をうけて、50人以上の社員がテレワークを行っている。

インターネットの回線を駆使し、開発継続とテレビ会議を通じた組織活動を継続しており、あらためてインターネット回線のありがたさを痛感している。

幸い、当社サポートセンターがお客さまへの窓口として運営を継続しているので、ソフトのインストールから操作教育、そして新しいお客さまへのプレゼンテーションもオンラインで実施でき、業務への支障は最低限に抑えられている。

非常事態宣言以降、都心のサービス業はショック死状態であるが、幸いなことに当社のお客さま(精密板金製造業)は現在でも忙しく稼働を続けており、コロナからの影響の少ない企業が多いことは幸いである。

当社では、精密板金製造業の実態調査を行った。当社のお客さまなど知り合いの企業を厳選し、従業員20人から150人までの企業約100社を電話で聞き取り調査したが、意外なことに4月までに仕事が激減した企業は20%にとどまっている。

しかし、5月以降の先行き見通しに不安感を覚える経営者は90%を超え、経験したことのない不況感が漂っているが、この際に『デジタル化によるイノベーション』を推進しようとする企業が多いことを(実態調査を通じ)知ることができた。

多くのお客さまは、コロナが終息しても世界が昔に戻ると思ってはいない。コロナ終息後に、急速なV字回復で成長軌道を描くために、『イノベーションが重要。いまこそデジタル化/IoT化の実現だ!』との考えを持っている。

ある経営者はこう話している。『コロナ発生前、私は出張が多く工場にほとんど居なかったが、今は毎日、工場で社員と一緒にいる。いまこそ自分が先頭になってデジタル化やIoT化を進め、社員の意識を変革する絶好の機会がやってきた』。このお客さまは言葉通り、急速なITイノベーションを推進している。

多くのお客さまがITイノベーションを進めようとしていることは、補助金の申請からも推察できる。2020年3月末を締め切りに、政府が突然募集を開始した『IT導入補助金』もその申請期間が2週間程度であったにもかかわらず、当社が申請をお手伝いしたお客さまの数は昨年度の2倍以上となった。

大型の機械設備の導入を凍結する半面で、デジタル化やIoT化の導入意識が急増している。

日本の精密板金業界は中小製造業の代表的業種であり、日本全国津々浦々に2万社の企業が存在する。全国に緊急事態宣言が発出され、サービス業を中心に休業が相次ぎ、大手製造業の代表格であるトヨタ自動車も一斉休業に入る中にあって、精密板金業界はおおむね順調と言える。

しかし、精密板金業界の中でも、工作機械メーカーや建設機械メーカーの仕事を請け負う企業の受注が急降下しているのは特筆すべき異常事態である。この状況を分析するために、工作機械メーカーの受注の現状に目を転ずると恐ろしい事実が見えてくる。

一言で表現すれば『真っ暗闇』。世界を代表する日本の工作機械を買う国がない。日本の工作機械メーカーの工場が順調稼働をしているのは、意外なことに中国だけである。『武漢ロックダウンが功を奏し、コロナは終息した』との報道を疑問視する声は多いが、事実中国では工場が稼働しており、操業度もコロナ以前より増えていると聞く。

日本メーカーの現地工場も中国向け製造で忙しい。中国では、コロナ終息後の新たな『地産地消』の動きがでており、国産メーカーも力をつけ、急速なV字回復をしている。工作機械メーカーにとって、コロナ以前からの米中貿易摩擦の影響による需要減は織り込み済みであったが、日米の需要低迷は想定外に深刻である。

米国・欧州の主力工場や中小製造業も操業停止。インドやアジア主要国もロックダウンで操業停止。売るところがないのが現実であるが、中国依存は決して安心できない。コロナ以前より貿易戦争状態であった米中は、コロナをきっかけにさらなる戦争状態に突入する。コロナ終息後、米国は中国からの撤退を強めるのは明白である。

日本政府も3月5日に、安倍首相が生産拠点を中国から日本に戻す方針を表明している。サプライチェーンの多様化は、かねてより『チャイナプラスワン』の掛け声で顕在化していたが、これから起きる『中国撤退』はそんな半端なものではなく、国家の生き残り戦略として日本政府が本腰を入れて推進する戦略である。

いまは苦難の続く工作機械メーカーも、チャイナドリームの終焉をきっかけにグローバル戦略を見直し、日本に錨を下ろして新たなる発展を模索する時が来ることを信じている。

コロナによってグローバル社会が完全崩壊したことは明白であるが、幸いなことに内需依存の日本には(やり方次第では)大きなチャンスが待っている。コロナ終息後、内需の大きい日本は、日本人の古来の労働遺伝子によって製造王国の復権が大いに期待できる。

中小製造業の戦略は、地域社会に依存する日本人の遺伝子を再確認し、経営者と社員とが一体となって(世界中どこにもできない)ボトムアップ・イノベーションを構築することである。

かつて叫ばれたインダストリー4.0を現実的に実現できるのは『日本の中小製造業だけ』と断言できる。今年は、IT導入補助金などを政府が潤沢に用意している。これらの制度を最大限に活用し、コロナ終息後のV字回復の準備を進めなければならない。







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著者 高木俊郎
10:15 | オートメーション新聞寄稿記事 | コメント:0 | page top
2020/03/27 「ドイツの凋落」崩れ落ちるグローバル主義ーー『コロナ終息後の日本の中小製造業』ーー
以下は 2020年3月25日のオートメーション新聞 第213号に掲載された寄稿記事です)

「ドイツの凋落」崩れ落ちるグローバル主義
ーー コロナ終息後の日本の中小製造業 ーー

誰も想像しなかった大惨事「コロナショック」が世界を激震させている。先の見えない状況に人々はおびえ、株は暴落し、実態経済も大惨事に陥っている。

皆さんは、最近はやっている『ロックダウン・パラドックス』という言葉をご存じだろうか? コロナ対策で、入国制限や都市封鎖が全世界で実施されているが、これをロックダウン(閉鎖)という。

パラドックスとは「正しいが正しくない」といった意味である。「コロナ対策で閉鎖は正しい。経済崩壊を起こすので閉鎖は正しくない!」そんな意味あいで『ロックダウン・パラドックス』という言葉が使われている。

中国では、武漢ロックダウンが「功を奏している」と報道される一方で、欧米では急速なコロナ蔓延に陥り、各国が強烈なロックダウンを発動している。ドイツが「ドイツ国境を封鎖する」との衝撃的なニュースが飛び込んできたと思ったら、フランスでは外出禁止令が発動。イタリアでは強烈な地域封鎖を行っているらしい。

前例なきロックダウンに欧州連合(EU)は恐怖のどん底に落ちている。米国でも強力なロックダウンに踏み切っており、リセッション(景気後退)の不安で株価は暴落。略奪に備えた銃の買い占めも起きており、人々はパニック寸前の状況である。

当社(アルファTKG)では、インド・チェンナイのインド工科大学サイエンスパーク内に事務所を設け、約50人がソフト開発に従事しているが、大学の閉鎖と立ち入り制限が始まり、当社社員もテレワークに移行した。

感染者の少ないインドでも、日本以上の徹底したロックダウンが始まっている。コロナが終息に向かえば、ロックダウンは解除され、『ロックダウン・パラドックス』の声も終息する。しかし、ロックダウンがもたらした衝撃は、人々の心に強く残り、コロナ蔓延前のグローバル社会を支えた「パラダイム(共通概念)」に戻ることは不可能である。

コロナをキッカケに、皆が疲弊したグローバル化に警戒し、国や地域を中心とした概念が生まれる。「無警戒のグローバル化推進」というパラダイムが消え、国境を意識した「自国第一主義」が世界の共通概念となる。グローバル主義の終焉による歴史的なパラダイムシフトをわれわれは経験していくのである。

このパラダイムシフトで最も強く影響を受けるのはEUである。グローバルの象徴として注目されたEUは、形骸化もしくは消滅に向かう。各国が独自の主権を求め、独自の主張が始まるだろう。

時代の逆行である。かねてより満身創痍のEUは、英国の離脱で予算も欠乏し団結力を失っている矢先に、ドイツが国境封鎖に踏み切ったことでEUの命運は尽きた。EUの「優等生」ドイツは、昨年の米中貿易摩擦の影響で深刻なリセッションの最中にコロナに直撃され、八方ふさがりとなっている。

かつては、南欧や東欧への輸出で財を築き、中国やロシアの輸出に依存してきたドイツは、大きな後遺症に悩まされている。さらに、経済面のみならず移民問題も抱え、ドイツ混乱は避けられそうにない。

ドイツ発「現代の黒船」として、世間の話題となった「インダストリー4.0(I4.0)」も難破の危機がある。第4次産業革命を見据えたこの思想は依然として極めて有益であるが、グローバルに全体を共通化しようとしたトップダウン思想のI4.0の普及は難しい。

I4.0に代わって、各国・各地域・各社の歴史や伝統を重んじ、レガシー(現有資産)を最大限に活用する「ボトムアップIoT」が第4次産業革命の中心になるだろう。

歴史的パラダイムシフト進行の中で、日本はどうか? 日本の中小製造業はどうなるのか? 結論から言えば日本はドイツとは事情が全く異なり、日本は恵まれている。

ロックダウンによる当面の景気後退はやむを得ないが、そのあと大きな回復が期待できる。日本は輸出依存も小さく、移民問題も存在しない。反グローバルの台頭で、好むと好まざるとにかかわらず、大手製造業のリショアリング(製造業の国内回帰)の流れが本格的に加速して、中小製造業の受注高も増大することで、日本のものづくりが息を吹き返す大きなチャンスがやってくる。

グローバル化の崩壊は、中小製造業にとっての大きな福音である。日本列島津々浦々に存在する日本の中小製造業は、優れた技術とローカル文化に育まれ、世界に類のない企業集団である。デジタル化も進んでおり、「ボトムアップIoT」による第4次産業革命の開花のインフラもそろっている。日本の大手製造業リショアリングの受け皿として、中小製造業の活躍が期待される。

中小製造業の唯一のアキレス腱は「人材不足」で、「人材不足の克服」が中小製造業の喫緊の課題であるが、その打ち手として「若者にとって魅力ある企業」の構築を目指さなければならない。

3K(暗い・汚い・危険)イメージの払拭や体育会系の現場技能教育の排除は急務である。多くの若者はかっこ良いサービス業を好む傾向を否定できないが、職人の技を体得し、ものづくりに情熱をかける若者は希少価値であり、若者にとっての魅力ある製造業の創造には製造業のサービス業化が必須である。

具体的には、最先端技術を活用したカッコよく生産性の高い『事務所の構築』が必要である。もちろん事務所には、高度なエンジニアリングチームも構成されなければならない。

最先端技術の活用とは、RPA(Robotic Process Automation)やAI(Artificial Intelligence)の活用であり、事務所作業を徹底的にソフトロボット化した企業(ロボ工場)への志向である。
RPAは、レガシー(現有資産)のしっかりした企業に導入することで成果が出る。実に日本の中小製造業にマッチしたソリューションである。パラダイムシフトに伴う新しい国際社会の潮流を先取りし、イノベーションを推進する好機である。







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著者 高木俊郎

09:29 | オートメーション新聞寄稿記事 | コメント:0 | page top
2020/02/28 コロナ蔓延! 中国工場のカタストロフィで中小製造業復活の転機ーー 『ロボファクトリー』の必然性 ーー
以下は 2020年2月26日のオートメーション新聞 第210号に掲載された寄稿記事です)

コロナ蔓延! 中国工場のカタストロフィで中小製造業復活の転機
ーー 『ロボファクトリー』の必然性 ーー

『カタストロフィ(catastrophe)』とは、時として『大惨事』と訳されるが、突然のキッカケから修復不能の事態に発展した大災難を意味し、『破壊』を表現する言葉である。

中国発の新型ウイルスの蔓延は、深刻な脅威として世界中に感染が広がっている。人から人への猛烈な感染力によって、世界的パンデミック(感染爆発)となる不安が人々を恐怖に陥れているが、新型ウイルスの殺傷力には限界があり、人類滅亡というカタストロフィ(大惨事)を危惧する人はいない。

しかし、ビジネス視点では、カタストロフィを意識せざるを得ない側面がある。具体的には、日本企業の中国現地工場が、カタストロフィとなる可能性を否定できない。特に、中国に多くの製造拠点を持つ大手製造業は大きな戦略変更を迫られている。

新型ウイルス「COVID-19」の蔓延はグローバル主義のカタストロフィへの決定打と言っても過言ではない。グローバル主義とは、各国の規制や障壁をなくし、ビジネスの自由化を推し進めた思想であり、数十年前より米英から始まった。

日本でも中国への製造シフトを推進し、金、技術、人材を投入し、中国工場を建設し育成したが、ビジネスとして失敗した例が数多く報道されている。大手家電メーカーを筆頭に、グローバル主義は日本にとって鬼門である。

しかし不思議なことに、日本の政治思想も経済界も今日まで『グローバル主義』の方針を変更していない。ところが、米英ではすでに『グローバル主義』への否定が叫ばれ、実行されている。

米国では、トランプ政権による自国第一主義や米中貿易戦争により、反グローバル主義が主流となり、欧州ではグローバル主義の代表『EU(欧州連合)』の求心力が低下し、英国のブレグジット(欧州連合離脱)をキッカケに、欧州全体で反グローバル主義が増えている。

反グローバルには鈍重な日本は、皮肉にも新型ウイルスによって、グローバル主義や海外製造拠点への否定が始まっている。

米国では海外製造拠点は既に否定され、米国国内に製造を戻す『リショアリング(製造回帰)』が積極的に実行されているが、リショアリングに躊躇していた日本製造業も、今まさに(好むと好まざるとにかかわらず)新型ウイルス蔓延の影響を目の当たりにし、リショアリングを検討せざるを得ない事態となった。

また、『チャイナプラスワン』の言葉に煽られ、中国以外のアジア諸国への進出を考えていた企業にとっても(サプライチェーン確保の観点から)アジア進出が得策ではない事を痛感している筈である。

新型ウイルスの影響で中国からのサプライチェーンが分断され、日本製造業も当面、想像を超える幾多の混乱が続くだろうが、長期的視点に立てば、リショアリングは、日本製造業にとって必ずしもマイナスだけではない。

特に中小製造業にとっての次への転機であるとも言える。リショアリングの本格化によって、製造の多くが国内に戻るので、中小製造業は大幅な受注増も期待できる。しかし、楽観してはいけない。

乗り越えなければならない課題が多く存在する。中小製造業には深刻な『人手不足』というアキレス腱が存在し、生産能力の増大にブレーキが掛かっている。

リショアリングによる大幅受注増をこなす為には、1. 原価低減2. 量産対応の2つの課題を乗り越えなくてはならない。従来の生産体型の継続では課題克服は難しいが、幸いにしてRPA(ソフトロボット)やAI(人工知能)などの最先端技術が、生産性向上と生産能力増強の特効薬として存在している。

次世代の中小製造業は、本格的な自動化、すなわち、事務所も製造現場も徹底的なロボット化による『ロボファクトリー』を目指すことである。ロボファクトリーこそ、中小製造業の新戦略であり、将来の姿であると断言できる。

ロボファクトリーの構築は、ただ単に製造現場の自動化を行うことではなく、事務所やエンジニアリングなどの人手作業を自動化することが極めて重要である。

この実現には、高度な『図面管理システム』が必要である。生産管理も工程管理もCAD/CAMも図面との高度な統合があってロボファクトリーが完成する。

当社アルファTKGでは、「図面RPA(当社独自開発・ソフトロボット)」や「図面AI(当社独自開発・人工知能)」を市場にリリースし、大きな効果が検証されている。今回は、具体的事例から、図面RPAや図面AIの優れた効果を紹介する。

図面RPAや図面AIは、2万1000人規模の精密板金企業を中心に、昨年より導入が開始された極めて最新のソリューションである。この導入は、すでに数十社にのぼり、新規導入企業も急上昇中である。

導入効果は絶大で、平均月200時間の省人化効果と20%の生産性向上が確認されている。社内に存在する図面は、紙図面から3Dデータに至るまで、図面RPAによって図番など有効情報を自動的に読み込み、クラウドサーバにビックデータとして自動整理し保存される。

図面RPAにより、生産管理やCAD/CAMなど別々のシステムから、同一図番の情報を瞬時に探し、図面フォルダーに自動格納するので、製造現場では図面と一緒に必要情報がすべて呼び出しでき、内段取り時間が大幅削減し、生産性が向上する。また、図面AIにより類似図面を瞬時に探したりできるので、図面検索時間をほとんどゼロとなり、省人化効果とリピート2度作りの防止に役立っている。

図面RPAや図面AIなどによる高度な図面管理システムは、ロボファクトリーを構築する最新技術であり、中小製造業にとっての必需品となるだろう。







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著者 高木俊郎

17:03 | オートメーション新聞寄稿記事 | コメント:0 | page top
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