2015/03/28 第4話【ローカル企業のグローバル化の考え②】
第4話【ローカル企業のグローバル化の考え②】

【序文】
日本は英語が苦手な国であるが、近年子供達への英語教育にも力が入ってきた。その目的は、将来グローバルに通用する人材を育成したいとの必願が込められている。しかし、英語教育で真のグローバル人材育成が可能なのだろうか?

グローバルで活躍する人材には確かに英語力は必要であるが、日本人であることに誇りを持って世界に自分の考えを発信できる力が求められる。グローバルで生きると言うことは、自分が日本人であることを徹底的に認識することである。
製造業のグローバル化を考えるに先立ち、我々が日本人であることを認識するためにも、世界から見た日本の素晴らしさと、日本の再発見を今回のテーマとしたい。

①【おもてなし】
日本を訪れる海外からの観光客は、多くが日本を好きになって帰国する。食の豊かさなど様々な要因はあるが、感動の中心は日本人の『おもてなし』というべき日本人が根っこで持っている “サービス精神”に感動する。プレゼンは下手。話も下手。欧米人のように陽気に人に接することも苦手な日本人のサービス対応が世界を凌駕しているのである。なぜなのか?日本人が深層で持っている遺伝子を今回は解説してみたい。

②【お母さんと日本食】
オリンピック招致活動を通じ、『おもてなし』が日本の代名詞となってきた。
日本の”おもてなし精神”や広義な意味での”サービス精神”の原因を究明していくと、日本女性(特にお母さん)によって育まれてきた日本の歴史的事実に突き当たる。古来よりお母さんは、家の誰よりも早く起きて、あさげの準備をする。3度の食事も全部用意し、買い物や漬物や下準備、掃除洗濯、裁縫、ご近所付き合いや、時には来訪者の接待、冠婚葬祭、年中行事の準備や実行・・などなど、と実に献身的に働き、家族を支える。これが『おもてなし精神』の原点である。チップをもらってサービスを提供する米国の感覚とは大違いである。

大和撫子とは縁もゆかりもなさそうな現代日本女性も、古来のお母さんが持つ”おもてなし”を根っこで持っており、欧米女性はじめアジア各国の女性感覚とは随分違う。日本の女性は若くても、潜在的に大和撫子の遺伝子を強く持っている。

日本食が世界的に注目されているが、本来の日本食文化とは、”お母さんコック” が生涯労を惜しまず毎日休むこと無く繰り返し、母から娘に継承してきた”家飯”こそ日本食文化の王道である。何百年に渡る日本民族による工夫の結果、白米、発酵、だし、など日本食の基本となる文化が(生産から流通にいたるまで)極度に発展し、これにお母さんの献身的な毎日の創作活動が日本食 ”家飯 ” の真髄である。

③【母親が教える日本男児の本質】
かつての欧米社会は男同士が戦い、強いものが認められる”女性蔑視”の社会であった。反面日本の武士道は精神を大切にし、役割を大切にした。日本は歴史的に(あらゆる職種、階層で)母親の存在が偉大である。女性が偉大で、おもてなし文化を育み、サービス産業のレベルを世界一流にしてきた国家が日本である。

日本は製造業大国との認識も正しいが、実は日本が世界で最も優れているのは、サービス産業である。
日本がサービス産業に秀でるもう一つの理由が、”日本人男性”にある。相対する難局に遭遇した時に、日本人は相手の立場にたって考えられる事ができる稀有な人種である。

おそらくこの事実が、日本人の持つ最大特徴かもしれない。究極のサービス産業には、日本人のこの感覚が重要である。

④【甘えん坊の日本男性】
日本男性の特徴の原因を探求すると、また日本女性(お母さん)に突き当たる。
日本人男性は究極の甘えん坊である。お母さんに甘えることでは世界一である。そうなった理由は沢山あるが、欧米人との最大の違いがここにある。

独立心を優先する欧米。親子一体を優先する日本。
日本の母親にとって子供は自分の一部であり、欧米の母親にとって子供は独立した人間である。成人した欧米人は常に自分を中心に据えるが、日本の成人男性は(甘えん坊故に)相手の立場でも考えられる人が多い。これ故に、日本人には “村社会” 遺伝子がみなぎっている。”企業村”に於いても、団結し皆で協力し合う。・・甘えん坊だから。

日本人の一般的常識を基準にすると、外国人は実に自分勝手である。”企業村”には生息しない。”独立”こそが彼らの遺伝子である。この違いが分かってない人はグローバル社会を理解できない。

⑤【ハードの男、ソフトの女】
日本は長い歴史の中で、男女が役割を分業してきた民族である。『おじいさんは山に柴刈りに、おばあさんは川に洗濯に。。』モノつくりのハード面は ”男”が担い、その周りのソフト面を ”女”が担ってきた。

⑥【日本はサービス産業、超一流大国】
世界から見た日本が、とても綺麗で秩序正しく、ルールを守り、おもてなし精神を持った国として、誰もが驚愕し好感を持つのは、『日本は、第三次産業(=サービス業)の超一流大国であり、その理由は、日本の女性(お母さん)によって育まれた歴史にある』ことに気がつく人は少ない。

⑦【製造業に必要なサービス力】
これからの製造業グローバル競争に最も重要な事は、QCDといった”モノつくり”の競争力に加え,ソフト面としての”サービス力”であることは明白である。

中小製造業のグローバル化の第一歩は、日本のサービス産業の国際的優位性に気づき、この遺伝子を積極的に活用することである。

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著者 高木俊郎
10:18 | 製造業再起動 | コメント:0 | page top
2014/12/13 第3話【ローカル企業のグローバル化の考え方①】
第3話【ローカル企業のグローバル化の考え方①】

【序文】
私の仕事は、『中小企業の再起動』である。 
中小製造業の今後を考える上で、グローバル視点が非常に重要な事は皆が理解しているが、残念ながら日本の報道を見ているだけでは、グローバル視点での情報と考察がどうしても乏しくなってしまう。今日の中小製造業における様々な外部環境変化(円安進行とか、コストダウン要因とか)も、ほとんど国内要因として片付けてしまう習性が日本のメディアにある。

今日の円安環境も、『黒田日銀総裁のバズーカ砲が円安を生んでいる。』という認識が一般的であるが、黒田さんがキッカケを作ったとしても、アメリカの戦略なくして円安は実現しない。為替は日本の施策だけで決まるのではなく、米国のご都合で決まるのである。

20年前から始まる日本のデフレ経済も日銀金融施策の失敗など、国内の要因が語られているが、国際社会で起きた「ソ連の崩壊」や「ベルリンの壁壁崩」も日本のデフレ化に大きく関係している。東側諸国の賃金の安い労働力が、自由経済に大量に流れ込んだ。10億人の資本主義社会は、突然50億人のメガコンペティションの時代に突入した。この直後に日本のバブルが崩壊した。日本がデフレになるのも当然である。

今回は ”ローカル企業のグローバル化” を考える前提として、日本の歴史を振り返り『明治維新』をテーマに、”日本がいかに世界の影響受けているか!” を検証し、『幕末の国際ビジネスマン』であった『薩摩藩』を題材に「ローカルな薩摩のグローバル化」の話を進めたい。

①【明治維新はなぜ成功したか?】
明治維新はなぜ起きたか? そしてなぜ成功したのか? 多くの論説が語られているが、中国のアヘン戦争、アメリカの南北戦争、パリの万博などの影響が語られることは少ない。

薩摩藩は、貧しい藩であった。この貧しい藩が、なぜ明治維新を仕掛け成功したのか?
その答えは、琉球と長崎にある。外様大名の中で、薩摩藩は唯一海外情報を得ることが出来た藩であった。琉球を経由し、薩摩藩は積極的に海外の情報を把握していた。

維新は坂本龍馬などの優れた思想家による偉業と評価され、常に国内問題として語られる事が多いが、坂本龍馬も日本で最初の会社経営者であり、国際ビジネスマンである。

戦争や革命には「金(カネ)」が必要であり、経済力が戦果を左右することが多い。明治維新には、産業革命から始まる国際的な工業製造力と経済力が作用している。

②【明治維新前夜の国際社会】
明治維新前夜の国際社会の出来事から日本を取り巻く国際変化を眺めてみたい。

インダストリアル4.0『第4次産業革命』が最近の話題となっているが、18世紀にイギリスで始まる”産業革命”がなかったら明治維新など起きる必要もなかった。水と水蒸気の力を使って機械を動かす『第一次産業革命』がイギリスで起き、イギリスは世界を制圧する強大な力を手にしていた。その源は、イギリス国内に作られた『工場』であり、原材料を安く輸入し、工場で加工し付加価値を付けて世界に売る『加工貿易』である。衣類も武器もイギリスの工場で作られ、世界に輸出されていた。

イギリスは産業革命によって製造業が生まれ ”強大な力” を手にした。イギリスの強大な力によって、インドは植民地となり、かつて壮大な力を有した中国(清國)もアヘン戦争でイギリスに敗れ去った。日本もいずれイギリスや欧州列強の植民地になる運命にあった。すべては、産業革命で手にした「金(かね)」の力である。

③【アメリカ南北戦争】
アメリカでも「金(かね)」が原因で、市民戦争に突入した。南北戦争である。アメリカ(北部の合衆国政府)では、イギリスはじめ欧州の力に対抗するために、国内の製造業を確立しようと躍起になっていた時期であり、国内産業育成を目的に保護貿易を指向した。

これに反発したのが南部の各州である。アメリカ南部は綿花の産地である。アメリカ南部が奴隷を使って安く作った綿花をイギリスやフランスに輸出し利益を得ていたので、南部は自由貿易を主張する。この主張の違いが、アメリカ南北戦争を誘発した。

アメリカ南北戦争は、おそらく人類が初めて経験した『工場生産の最新兵器戦争』である。イギリスの工場で作られる小銃などの最新兵器によって戦う戦争である。南北両軍とも最新小銃をイギリスから購入することに血眼になった。需要があれば価格が上がる。『高騰する最新兵器。最新兵器が希少価値』という国際的常識が、南北戦争によって生じた。

南北戦争は北軍勝利で終結。戦争が終われば兵器はいらない。兵器が不要となり、兵器の国際価格が暴落した。世界中で兵器を買うところがない。中古の小銃も国際社会に出回った。

④【ローカルな薩摩のグローバル活動】
明治維新の直前にアメリカ南北戦争が終結したことは、日本の運命といっても過言ではない。薩摩藩にも江戸幕府にも、兵器を手に入れる大きなチャンスが生まれた。この国際情勢の変化(パラダイムシフト)を知っていたのは、おそらく江戸幕府と薩摩藩(薩摩は琉球経由で情報を得ていた)だけである。

しかし、いくら兵器の価格が下がっても貧乏薩摩に購入する金が無い。金を得るために薩摩藩が目をつけたのは『綿花の国内での買い占めと密輸』である。南北戦争で南部の綿花畑は荒廃し、綿花は高騰していた。戦争が終わり奴隷制度は廃止され、以前のように綿花を作れず『綿花の国際価格』は暴騰していた。

薩摩は日本中の綿花を低価格で買い占め、密輸でイギリスに売りさばき大金を手する一方で、兵器を買い占めしたのである。結果、薩摩藩は大量の兵器を手にし、江戸幕府を倒すことになる。極めて高い武士道文化を持つ会津藩も最新兵器の前には無力であった。

かくして薩摩の『グローバル情報の収集力と国際ビジネス』によって明治維新は成功する。

ローカル藩(企業)のグローバル化による成功事例の好例である。

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著者 高木俊郎
19:34 | 製造業再起動 | コメント:0 | page top
2014/11/01 【ローカル企業の再起動で日本の製造業は復活する】 第2話『ローカル企業のグローバル化』
第2話『ローカル企業のグローバル化』

海外旅行が当たり前の時代になった。
法務省統計によると、昨年の日本人出国者数は 1700万人を超えている。50年前の東京オリンピック、東京モノレール開通の頃は 10万人程度であった。驚異的変化である。

これだけ庶民の海外旅行が一般化したのに、中小・零細企業のビジネス視点で見ると外国とは依然 ”遠い存在” である。
勿論、海外進出に積極的な中小企業も多く存在するが、国内の中小・零細製造業が外国の顧客と直接取引しているケースはあまり多くない。

韓国では従業員30人以下の小規模製造業に於いても、中国やアジアに顧客を持ち直接取引するのは一般的なことである。
日本の中小企業経営者に、海外から仕事を取らない理由を聞くと様々な答えが帰ってくる。
英語の壁。人脈がない。海外は危ない。輸送費が高い。価格が合わない(多分)。為替。などの常識的答えに加え、親会社に恩義がある。とか海外は嫌いだ。と言った凄い答えも時々ある。

これらの理由はすべて日本社会に存在する共通認識から生まれている。
日本の中小企業経営者の常識にもなっている。
しかし、この常識を貫いても国内の仕事だけで成長軌道に乗せるのは難しい。
中小企業再起動のためには、まずこの常識の破壊から始めなければならない。

日本人の持つ海外認識や製造業の常識を解明するために、200年々以上に遡り歴史考察から始めたい。

【江戸時代の鎖国】
世界の先進国製造業は、中小企業でも零細企業でも外国の顧客との直接取引が普通のように行われている。また社歴の浅い新興国製造業でも外国からの受注には大変熱心である。

日本の経営者が外国を敬遠する原因に、江戸時代の鎖国政策が関係している。

何故か?
私達日本人は、” 江戸時代は鎖国 “ と学校で学んだが、正確には正しくない。
鎖国とは、外国との交流を遮断し国際的に孤立した状態をいうが、江戸時代は完全な鎖国ではない。

江戸幕府は、外国との交流を遮断したのではなくオランダ商館と中国船のみに限定し、限られた特権階級のみに対外貿易業務への従事を許したのである。
江戸時代でも、日本は対外貿易を行い外国の技術情報も正確に把握していたのである。


一般庶民の海外渡航は厳禁された。一般庶民が外国と接する機会は与えられなかった。
長い江戸時代の間に、一般庶民は海外と遮断されることが当然となり、”外国と接するのは特別な人 “という遺伝子が日本人に刻まれてしまった。

この遺伝子が今日の日本人に引き継がれている。

海外と接触するのは大企業。大企業の中の特別な人。海外ビジネスをする人は特別な人。
英語ができなきゃ海外とビジネスは無理。・・そんな意識が潜在している。

中小企業や零細企業のトップは、海外の会社と直接取引するのは無理だ。という一般概念が日本製造業を支配している。

【商人(あきんど)】
企業の生命線は受注活動である。
しかし日本の中小製造業は、技術はあっても営業力が弱いのが一般的である。

何故か?
江戸時代の『士農工商』が強く影響している。
余談だが、『士農工商』の言葉は部落差別を連想させるとして、現在は放送禁止用語として扱われている。『士農工商』は江戸時代の身分制度との認識があるが、実際は職業の世襲制である。
”工”の子供は”工”。職人として誇りを持って世襲したはずである。
職人は商人(あきんど)の真似はしない。売るのは商人(あきんど)の仕事。職人に徹する "工”が何世代も世襲で続き、本物の職人が日本に生まれた。

この職人遺伝子が今の日本に引き継がれている。
現在の日本のお家芸は熟練工であり、日本の真の強さである。

売るのは商社。大企業。
その系列にある中小製造業は『もの作りに専念するプロ集団』
江戸時代の遺伝子。営業力が弱くて当然である。


【職住近接と世襲】
江戸時代には造船所や鉱山以外、工場という概念はないし、工場団地もない。
士を頂点に、町人と百姓に分かれ 職人たる”工”は、町人の中にも百姓の中にもいた。

この歴史が、日本製造の裾野を支える中小・零細製造業に引き継がれている。
家内工業/町工場の存在である。

現代の日本でも町工場はいたるところに存在する。都市部にも地方にも町工場が存在する。
町工場の隣に住宅があったり、近くにはスーパーがあったり、床屋があったり。
サポートマニュファクチャリング集積国家日本の真の強さである。

明治維新以降イギリスの加工貿易をお手本に「富国強兵」をスローガンとし、積極的に自ら産業を興こす政策を取った。岩倉使節団に合わせて留学生を派遣するなど産業技術の移植に務めた。
世界遺産となった富岡製糸場などの官営工場が、今日の大企業工場の始まりである。

ローカル企業とは、江戸時代の “工”の遺伝子を引き継ぎ、職住近接の環境を持ち、熟練工の優れた技術を保有する比較的小規模な企業群。世襲を基本としニッチな技術を深く掘り下げ子どもや孫の時代まで企業継続すること経営信念とする。
これは本当に日本にしかない素晴らしい企業群である。
地方の工業団地にある中小企業もローカル企業がほとんどである。

一方、グローバル企業とは明治維新以降に官民工場の払い下げで成長した大企業(旧財閥系)と、戦後の急発展でグローバルに拡大した大企業群。

日本には、『ローカル企業』と『グローバル企業』。明確に歴史も遺伝子もその体質も全く違う企業群が存在する。

【ローカル企業のグローバル戦略】
日本製造業復活の鍵は、ローカル企業の再起動である。
再起動には、どうしてもローカル企業のグローバル化が必須である。

次回は、第3話【ローカル企業グローバル化の考え方①】を投稿する。

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著者 高木俊郎
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15:46 | 製造業再起動 | コメント:0 | page top
2014/10/20 【ローカル企業の再起動で日本の製造業は復活する】 第1話『グローバル化とグローバル人材』
【第1話:序文】

日本の製造業は必ず復活する。
日本がバブル崩壊以前の成功に再び戻ることは期待できないが、中小製造業(これからはローカル企業と呼ぶ)の底力で必ず復活する。

復活の条件は、『ローカル企業の再起動』

ローカル企業の再起動には、『ローカル企業のグローバル化が必須である』
ローカル企業のグローバル化は、日本の大手企業が取り組んできた”グローバル化”とは違う

『ローカルの特徴を活かし、ローカルに根を張って、世界に扉を開く事』。これが、ローカル企業の再起動の中心軸である。

全10話でお届けする、『ローカル企業の再起動で日本の製造業が復活する』の第1話では、
”グローバル化とグローバル人材”をテーマに、間違ったグローバルの認識を投稿する。


①:【日本大手企業はグローバル化に成功したのか?】

世界で戦う日本の大企業群、最近元気の無い企業が増えてきた。

日本人が誇りに思うソニーの輝きも既に過去のものとなってしまった。

家電、弱電、機械、自動車など多くの業界でも、多くの大企業が凋落の危険を抱えている。
これが残念ながら日本企業の現実であり、避けられない現実でもある。

日本の大手企業はバブル崩壊以降、「グローバル化」という旗印を掲げ、「グローバル標準」を社内に取り込んだ結果、日本古来の雇用と経営システムを破壊した。
社内では、リストラ後遺症を抱え、モチベーション低下の進行に悩み、マーケットシェア低下に苦しんでいる大手企業が数多くある。

グローバル化を旗印に規模拡大に邁進した日本の大手企業は、世界競争で勝ち続けなければ存続できないが、現実には新興国で韓国や中国の企業に負け、出口の見えない戦いを余儀なくされている。

戦後の日本経済を牽引した大手企業が少しずつ力を失い始めている。




②:【間違ったグローバルの認識】

★グローバル化とは、『海外売上を増やすこと!』と信じている?

今やグローバル化という言葉はあまりにも一般的である。
我が社のグローバル戦略は・・・どこでも聞く言葉である。
日本の企業がグローバル化を掲げる背景に、『日本市場が収縮して売上が厳しいので、海外売上を増やそう』という意図が透けて見える。

”グローバル”という言葉は、バブル崩壊以降になって日本企業に定着した。
”インターナショナル”ではなく”グローバル”が正しい表現と認識された。

でも、その意味の本質を誰も考えることなく、真のグローバル化を理解もせず、”グローバル”という言葉は、企業や社会のなかで当たり前の言葉になってしまった。

そして”シフト・グローバル”なる奇妙な新語も流行った。
『我が社の方針はシフト・グローバルである』みたいな・・、これを聞いた社員は、海外売上を増やそうという経営陣の意思を理解しても、自分が何をすべきか?多分誰も分からなかったに相違ない。


『海外売上の比率を上げよう。』『海外の競争相手のシェアを奪うのだ』『新興国を攻略しよう』・・・このような経営方針が ”グローバル化” と思ったら、大きな間違いである。

グローバル市場とは、多様性を持つ市場である。
一つの価値観に固守せず、多様性の変化に対応しなければグローバル化はできない。

グローバル化とは、世界の多様性を受け入れることである


★グローバル化とは、『海外に進出すること』と信じている?

加工貿易という言葉は、日本の製造業の象徴的言葉として、明治時代から続く日本の国家戦略のように信じられ、多くの人は日本は輸出大国であると信じている。
家電や自動車など、かつて日本の製品が世界中に売れていたので、『日本は輸出大国だ!』
『日本の経済は、輸出で支えられている!』と信じられている。

しかし、戦後の日本の経済成長は、日本国内の内需に支えられてきた。
もちろん、日本の大企業は世界中に自社製品を輸出し、大きなブランドを世界に作ってきたことも事実であるが、やはり日本の経済モデルは内需中心であり、大企業の売上は日本国内の需要に大きく依存してきた。

日本の多くの企業が、バブル崩壊以降デフレや少子化の影響も重なり、内需拡大に限界が生じ国内売上が大幅に縮小した。海外にどんどん進出して、売上を海外で伸ばさないとマズイ・・だからグローバル化だ!ーーこれが大きな間違いーー

グローバル化は、そんな簡単なものではない。
日本の内需をベースに作られた製品を(グローバル化の掛け声だけで)世界に売ることなど無理な相談である。

『地産地消だ!海外に工場を作くろう。』『海外販売拠点を強化しよう。』『日本人社員を海外に派遣しよう』・・これがグローバル化と信じている大企業の幹部もたくさんいる。

海外に進出することばかりがグローバル化ではない。

グローバル化とは、世界に扉を開くことである。


★グローバル化とは、『英語を学ぶこと』と信じている?


最近、英語教育が注目され、小学校から英語を勉強することが奨励されている。
グローバル人材には英語が必要。日本人は英語の会話能力に乏しい。などが理由らしい。

人類のあらゆる人々と接するには、確かに英語は必要である、
しかし英語は単なる道具にすぎない。
英語力も大切だが、本当に大事なことは日本人としてのアイデンティティーである。
幼少の頃から英語をがっちり勉強し、TOEIC満点近い実力を持つ英語力を身につけても、英語力という武器だけで国際社会で生き抜くことはできない。

グローバル化とは、英語を学ぶことではない。個人個人が、『日本の歴史』『日本の文化』を学び、日本人としての誇りを持つことである。


③:【グローバル人材とは!!】

グローバル人材とは、世界で通用する人を言う。
世界で通用するとは、国際社会でビジネスができる人を言う。

国際社会は、多様性の社会である。
歴史、文化、宗教、言語が全く異なる人々とのなかで、相手を尊重し、自分が認められなくては、ビジネスなど出来るわけがない。

自分の価値観やアイデンティティを明確に発信しないと、グローバル人材にはなれないし、多様性の国際社会で認めてもらうことが出来ない。
グローバル人材になるためには、自分の原点を作らねばならない。
グローバル人材と呼べる人は例外なく日本人としての原点を持っている。日本人としてのアイデンティティを持ち、自分の意見を強く発信できる力を持っている。

普通の日本人は時として知らない人(特に白人)に対して、控えめになる傾向が強い。
結果、知っているはずの英語も話さない。笑顔も苦手。ハグなど絶対ダメ。
こんな控えめな日本人は、日本では美徳でも、国際社会では通用しない。
下手をすると”対人恐怖症”と思われてしまう。

グローバル人材とは、祖国愛のある人。アイデンティティが明確な人。自分を全面に出せる人。


④:【日本人は歴史的にグローバルプレーヤー。グローバル国家である。】

日本では、誤った劣等感が日本を支配している側面がある。
その原因は、戦後の米国教育や、日教組やメディアの報道が関係している。

日本はアジアの中で西欧の文化と技術を自らの意志で学んだ唯一の国である。
聖徳太子の時代から、歴史的に宗教にも寛容で、他宗教を取り入れ、自ら文化と融合し、更に文化を進化させてきた稀なる民族である。
日本は世界一の美食国家であるが、宗教と共に世界中の食事を取り入れてきた民族である。

黄色人種で列強の植民地にならなかったのは、日本だけである。
今の日本人はこの事実を知らないか、知っていても誇りにも思わない人が多くいる。

日本人がもっと日本の歴史を学べば、日本人がグローバルプレーヤーである事実に誇りを持てると思うが、いまの日本人はいささか自信を失いすぎている。

この原因は歴史を学ぶ事を封鎖された戦後教育に起因しているかも知れない。

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次回第2話は、『ローカル企業のグローバル化』をテーマとします。
13:33 | 製造業再起動 | コメント:0 | page top
2014/09/26 製造業再起動ブログ (予告編) 『ローカル企業の再起動で日本の製造業が復活する』_全10話の連続投稿予告のご案内
本投稿は予告のご案内です。
全10話でお届けするエッセイは、中小製造業の再起動の真髄に迫ります。

バブル崩壊以前の日本は、製造大国として世界に君臨してきました。
日本の強さは、団塊の世代が生み出した豊富な労働力に加え、活発な内需、そして世界の追随を許さない強い企業組織が存在していました。
かつての日本の企業活動が強かった原因に、日本人特有の遺伝子があります。
日本人の深層にある農耕社会の遺伝子は “強力な団結力を持つ企業村 “を作り出しました。
大手メーカを頂点とする子会社、孫会社というピラミッドは、まさに運命共同体であり、下請けの持つ『強い現場力』も大手メーカの国際競争力に大いに貢献しました。
残念ながら、20数年前のバブル崩壊で、日本の強さは既に過去のものとなりましたが、今日の日本の製造業は新しい出口が見えず、依然として混沌とした状態に置かれています。

これから ”全10話のエッセイ”を通し、日本の製造業復活に向けたシナリオを投稿していきます。

日本の製造業は必ず復活します。成功のための”再起動”で必ず復権します。
しかし、日本がバブル崩壊以前の成功に戻ることはありません。
中国・韓国に負けた “日系グローバル企業” が再び世界に君臨することもありません。

復活の鍵は、『中小製造業』にあります。
地方に根を張る”ローカル企業”の世界進出。
そして、ローカルに眠る”現場アナログ力”に”デジタル力”を融合すること。
これが、成功のための”再起動”の鍵です。

中小製造業の再起動なくして、日本の製造業の復活はありません。
その根拠とその具体的方法を全10話でお伝えします。


プロローグ・エッセイ〈第0話〉

大企業、中小企業、零細企業・・この認識を捨てなくてはならない。
かつての大企業を頂点としたピラミッドは二度と戻らない。

大企業と呼ばれ世界市場で戦う日本企業(グローバル企業)の抱える課題は深刻である。

パイオニアが事業撤退し、かつてのオーディオ界を支配した”御三家”が消えた。
ソニーの赤字・無配転落、スマホ撤退が報道されている。
団塊の世代の羨望の的であったオーデイオやCDの王者の凋落である。

日本人であれば、誰でも誇りに思う『名門ソニー』が韓国・中国のメーカーに負けて、無配に転落することなど、誰が予想しただろうか?

ソニーは ”グローバル企業”である。
パナソニックもトヨタも “グローバル企業”である。
世界で戦わなければ存続できない “グローバル企業”である。

ソニーの凋落は、”グローバル企業”にとって他人ごとではない。
円安の為替差益に支えられ好成績を上げている日本企業(グローバル企業)も、大なり小なり”出口の見えない大きな課題”を抱えている。

日本企業(グローバル企業)には共通する「2つの課題」が存在する。

一つ目は、新興国で勝てないこと。言うまでもなく、日本企業は新興国市場でボロ負け。中国・韓国企業に負け、欧州企業にも負けている。シェアの凋落である。

2つ目は、利益が小さいこと。日本企業は、資産効率が悪くROE(株主資本利益率)が低いとの指摘があるが、実際のところ売上高利益率(ROS)が低い事が問題である。要するに、この課題もグローバル市場での負け戦さが原因である。シェアが低くプライスリーダになれない。結果として、利益が取れない。売っても営業利益が出せない体質なのである。
この2つの悪い事実は、残念ながら改善するのは相当に困難である。
最後にくるのは、事業撤退と人員削減である。

中小製造業も深刻である。地元を基地に頑張っている(一所懸命の)中小製造業は、円安恩恵も小さく、大手製造業の海外シフトの波を受け仕事量の減少不安が常に経営課題となり、未来に希望を持てない企業が多い。

しかし、中小製造業は”ローカル企業”であるため、とても明るい未来がある。
それに気が付かないのは、メディア報道や経済学者のコメントが大きく影響している。
彼らの目は常に大企業に向き、中小企業の事は語らない(知らないから語れない)。

”ローカル企業”に優位なことは、無用なグローバル競争が必要ない事である。
日本のローカル企業は本当に恵まれている。歴史も環境も、そして未来も。
この優位性に気が付き、日本企業(グローバル企業)の下請けに甘んじること無く、世界への進出しなければならない。
地元に根を張り、日本を離れず、そして世界に取引先を広げ、自社の技術をベースに、狭い領域でも良いので”世界一”を目指す。

『グローバル・ニッチ・チャンピオン』こそ日本の中小企業の目指す道である。

第1話から第10話まで、『グローバル・ニッチ・チャンピオン』を目指す、
ローカル企業の再起動について投稿する。

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次回、第1話は、グローバル化とグローバル人材をテーマにお届けします。
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