2017/07/26 『探すの時短』に秘策あり・デジタル化の1丁目1番地『情報の5S化』
以下は 2017年7月19日のオートメーション新聞 第116号に掲載された寄稿記事です)

『探すの時短』に秘策あり



ーーデジタル化の1丁目1番地『情報の5S化』ーー

日本の『労働生産性の低さ』が話題になっている。
『日本はOECD加盟35カ国中22位、先進国では最下位』との結果に、不甲斐なさを感じている人は多い。
この結果だけで『日本の労働者は、質が悪い』と断じるのは正しくないが、労働生産性低下の真犯人を探し、対策を検討しなければならない。

一般論として、日本の『ものづくり世界一』は、自他共に認める事実である。
熟練工のレベルも設備力も世界を圧倒し、日本列島津々浦々に歴史的な『ものづくり遺伝子』が定着し、名実ともに日本が『世界一の製造集積国家』と言っても決して過言ではない。
特にトヨタ自動車から普及した5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)は、中小製造業・町工場に至るまで徹底され、QCD競争の底力となり、高い生産性を実現している。

しかしその反面、残念ながら『事務職やエンジニアリング職』の生産性が低いのも事実である。当社の調査結果よると、一人あたり『一日一時間以上のムダな作業』が発生していることが判明している。この無駄な作業とは、書類や図面を『探す』時間であり、生産性を著しく減少させている真犯人である。コンピュータが進んだことで、かえって『探すムダ』が増大してしまった企業も少なくない。

欧米企業と比べ、顕著なほど『探すムダ』が多いのが日本の特徴であり、その原因は欧米と比べ、日本の企業慣習が大いに関係している。日本では、歴史的に終身雇用制を背景に、社員を信頼して仕事をすることが一般的である。社員全員が一丸となってことに当たる『団結と強調』は日本での組織運営の美徳でもあった。

この美徳の副作用が、『会社データの担当者任せ』という特異な現象となり、会社の情報管理の重大な危機となっているが、経営者がこの危機に気がついていない場合も多い。

『担当者任せ』となっているバラバラな情報を『社有化』し、誰でも探せる環境の構築により『探すムダ』の排除は可能であり、即刻対応すべき課題である。このままの状況を続けることはBCP(事業継続計画)の観点からも非常にヤバイ状況である。

災害からの防衛もさることながら、万が一信頼していた社員が悪意の攻撃に転じ、瞬間に会社の貴重データが消失するリスク防衛も当然考えなければならない。特に中小製造業・町工場では、Word/Excelなどの電子データに加え、CAD/CAMや生産管理など異なる種類のファイルが存在し、会社として一元管理されているのは稀(まれ)である。

会社内の情報を『社有化』し、『情報の5S化』の実現はデジタル化の『1丁目1番地』であり、これをスキップして、インダストリー4.0やスマート工場の構築は不可能である。

大手製造業では、『情報の5S化』の切り札として、PDM/PLMやERPが導入され、世界的には独SAPのシステムが一般的となっている。しかし、日本の中小製造業に於いては大規模な『SAPシステム』は、実際の業務との乖離が大きく、導入は難しと判断され、全く普及していない。

一般の中小製造業では、図面は紙図面に始まり、スキャナーで電子化された図面に加え、2D-CADや3D-CADのデータが、個々のエンジニアによって個別に管理されているのが実態である。
また、NC機の普及に伴い、各種CAMシステムや自動プロなども複数導入され、機械とのネットワークも行われているが、機械メーカ任せで、独立したクローズドなシステムとなっている。

生産管理システムも普及しているが、生産管理データは孤立し、依然としてFAXが活躍しているのも現実である。

このようなバラバラな状況に、漠然たる問題意識を持つ企業では、社内ルールを決めて会社全体の共通フォルダーでの一元管理を試みているが、正直言って理想的運用をされている企業にお目にかかったことがない。今日まで『情報の5S化』をやりたくても、なかなか現実的には難しい事が多かったのも事実である。

ここに救世主というべき最先端技術『第3のプラットフォーム』が誕生した。

人類のIT化は、メインフレームの誕生で幕を開けたが、端末との接続が『第1のプラットフォーム』である。これに続き、クライアント・サーバーシステムがIT化の主流となり、PCとWindowsが現在の企業に満ち溢れている。これが『第2のプラットフォーム』である。

『第3のプラットフォーム』とは、インターネットの誕生により人類が手にしたスマホなどに代表される最新プラットフォームのことであり、モバイル・ソーシャル・ビックデータ・クラウドの4種の神器を呼ぶ。

この4種の神器の活用で、今まで不可能であった『情報の5S化』を実現し、『探す時短』効果が即効的に生まれる秘策がここにある。第3のプラットフォームの活用による『情報の5S化』こそ、中小製造業の『デジタル変革・IoTの1丁目1番地』であることは明白である。

当社(アルファTKG)では、具体的実現の手段として、alfaDOCK『ものづくりDX』を製造業向けに販売している。ご関心の方は、ホームページ(https://a-tkg.com/)をご参考いただければ幸いである。







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著者 高木俊郎
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2017/07/05 CeBIT 2017からの警告 /『周回遅れ』の日本・中小製造業【デジタル変革】への道しるべ
(以下は 2017年6月21日のオートメーション新聞 第113号に掲載された寄稿記事です)

CeBIT 2017からの警告 / 『周回遅れ』の日本



ーー『中小製造業【デジタル変革】への道しるべ』ーー

‖ 世界最大のIT見本市「CeBIT 2017」盛況

2017年3月「CeBIT2017」(セビット/ 国際情報通信技術見本市)が、ドイツハノーバーで開催され、世界最大の名に恥じない盛況ぶりで閉幕した。

今年のCeBITは、日本がパートナーカントリーを担い、安倍首相も駆けつけ、メルケル首相とともに開会スピーチや会場視察を行い、日本のプレゼンスも大きく向上した。

しかし、世界各国から集まった出展者の規模や内容の充実ぶりには、率直驚かされた。
欧米各国や中国などの取り組みは、はるか日本を超えている感想を拭うことはできない。


‖ 大舞台で「Sicuety5.0」を訴えた日本

第4次産業革命は、人類が直面する現実である。第4次産業革命の取り組みとして「インダストリー4.0」がドイツで生まれ、日本でも大きな話題となったのは周知のとおりであるが、ドイツ以外でも、米国の「先進製造パートナーシップ」、中国の「中国製造 2025」などが旗揚げされており、各国は産学官一体活動を行いながら、世界のリーダーとしてプレゼンス向上を狙っている。

このような世界各国の動向に対し、日本では多くの大手企業が、IoTへの対応を最経営課題として取り上げているが、残念ながら日本の国際社会でのプレゼンスは小さく、世界をリードすることは難しかったが、近年になった日本の動きにも大きな変化が出てきている。

この一つが日本発「Society5.0(ソサエティー5.0)」であり、世界に向けて大きく発信されている。まだ知名度の低い『ソサエティー5.0』をCeBITの大舞台で声高に訴えた。

「インダストリー4.0」のお膝元ドイツで、メルケル首相の目前で、日本戦略「ソサエティー5.0」を安倍首相が開会のスピーチでぶち上げたのである。日本の(世界に向けたリーダ役としての)強い意思を感じる驚愕のスピーチであった。

以下に安倍首相のスピーチを抜粋する。
「森に出て狩りをした大昔。そこを人類史の第一章とすると、米や小麦で安定した食料を手にしたのが第二章。産業化の波が来て近代という名の第三章が幕が開け、通信とコンピュータの融合がまた新たな幕を開いて第四章。

今私たちは、解決できなかった問題を解けるようになる第五章の開幕を目前にしている。ものが皆つながり、全てに技術が融合する時代、ソサエティー5.0の幕開けであります」と解説し、日本が世界をリードすることを宣言した。


‖ 周回遅れが露呈した日本勢

安倍首相は、スピーチのなかで「人類の歴史に大きな節目が訪れた」とする一方で、「健康問題や地球規模でのエネルギー問題などが、イノベーションによって解決されていく社会がソサエティ5.0である」と語り、「製造業は問題を解くインダストリーに変わる」と提言した。

非常に素晴らしいスピーチであったが、CeBITでの日本企業の出展内容はどうだったのか?
本来であれば、CeBITに出展した日本を代表する大企業が、安倍首相のスピーチを裏付ける革新的なイノベーションを披露し、世界の注目を浴びるのが理想だったが、理想と現実に随分のギャップが存在することが露呈してしまった。

日本の大企業の出展は、現在販売中もしくは販売予定の在来商品が大半であり、イノベーションの魅力に欠ける展示が多かった。更に辛口を言えば、IoTに関してはコンセプトのみの『絵空事』に終始した大企業もあり、一部の失望感が日本パビリオンに漂っていたのは、非常に残念なことである。

日本勢の総合評価は、世界のイノベーションから『周回遅れ』との酷評は免れない。ある大企業のブースでは、『おつきあいの出展だからこの程度で仕方ない』と発言していた幹部がいたが、情けない限りである。


‖ なぜ周回遅れなのか?「第3のプラットフォーム」への乗り遅れ


CeBIT 2017でのキーワードから日本周回遅れの原因を検証してみたい。
CeBITの謳い文句は『Digital Transformation(DX). // d!comomy-nolimit』である。

Digital Transformation(DX、デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル変革のことであり、「デジタルトランスフォーメーションに無限のチャンス」が、CeBITでは全面に押し出されており、DXが国際的な関心事になっていることを痛感する。

ドイツのインダストリー4.0も、DXをベースに猛進しているが、日本企業のDXに対する認識遅れが、周回遅れを引き起こす原因の一つとなっている。

DXと称されるデジタル変革は、「第3のプラットフォーム」で実現する大革命であり、安倍首相の主張する「人類の歴史に大きな節目」こそ、「第3のプラットフォームへの移行の節目」と同意語である。

「第3のプラットフォーム」とは、この新しいプラットフォームのことである。モバイル・ソーシャル・ビッグデータ・クラウドの4つを要素技術と定義している。「第3のプラットフォーム」の上では、人工知能やVRなど最新デジタル技術が利用できる「仮想空間」が構築できる。仮想空間の誕生により想像を超えるデジタル変革が実現し、ビジネスモデルの大変革が起きると言われている。

ITの歴史を振り返れば、1964年のIBM System/360から始まった「メインフレームと端末」が大企業でのITの始まりとなったが、これが「第1のプラットフォーム」と呼ばれている。

1990年台から「第2のプラットフォーム」である「クライアント/サーバシステム」が誕生し、世界中のあらゆる企業に普及し、ITの世界に大変革が起きた。パソコンやWindowsが大企業のみならず、中小製造業・町工場に普及したのも、「第2のプラットフォーム」である。

日本の大手製造業は、「第2のプラットフォーム」から脱皮することが容易ではない。
「第一のプラットフォーム」からIT化に取り組んだ大手製造業は、「第2のプラットフォーム」も積極的に取り込み、独自の非常に優秀なクローズドシステムを開発し、このシステムの上で事業活動が行われているので、オープンな「第3のプラットフォーム」への移行は簡単なことではなく、非常に危惧している日本の企業は数多く存在する。


‖ 破壊的イノベーションと最後に笑う勝者とは?


各企業がクラウドを軸とする「第3のプラットフォーム」に移行し、デジタル変革によって新しいビジネスモデルを創造することが、「デジタルトランスフォーメーション(DX)」の真髄であり、世界各国でこの流れが加速している。

金融界の「FinTech」や製造業界の「インダストリー4.0」そして話題の「IoT」のすべてが、DXの範疇であり、DXとは全業種・全業界に広がる未来像である。「第3のプラットフォーム」には企業規模や国境などには全く関係なく、人類の活動を根本から変えてしまう魔力を備えている。

しかし、慎重な日本企業が危惧するように、DXのもたらす世界は必ずしも理想的なイノベーションとはいえない側面もあり、かなり暴力的に破壊を伴って進行する場合も少なくない。

たった数年で彗星のごとく登場した配車サービスUBERは、「第3のプラットフォーム」を活用した新ビジネスであり、破壊的イノベーションの代表であろう。スマホを使いタクシーよりも便利なUBERの新サービスは、瞬く間に世界中に普及した。

しかし、その反面で従来ビジネスが破壊され、多くの反発を招いた。今後もUBERは、多くの反発や犠牲者を量産するだろう。そして、UBER自身も急激な成長に対応できず、自爆するかもしれないが、新しい「配車サービス」という事業は、世界中の未来社会の中で確実に定着するであろう。

スマホ活用の配車サービスは、明らかに問題解決型のサービスであり「ソサエティー5.0」の目指す世界の一つであるが、日本企業の持つ遺伝子には、破壊的イノベーションを避けようとする習性がある。日本企業の周回遅れが、破壊的イノベーションを緩和する緩衝期間であるとしたら、日本企業は最後に笑う勝者となるだろう。


‖ 破壊的イノベーションとは無縁の「中小製造業のインダストリー4.0」


農耕民族として企業の継続発展を続けてきた日本企業の遺伝子に、破壊的イノベーションは不向きであるが、米国を中心とするベンチャー企業が、破壊的イノベーションを仕掛けてくるのを避けることはできない。

グローバル競争を強いられる「日本の大手製造業」は、好むと好まざるとにかかわらず、世界中から破壊的イノベーションの攻撃を受けることは避けられず、中小製造業にも大きな影響が及ぼされると思われる。

このような環境で、中小製造業が取るべき対応は、大手企業以上にデジタル変革を急速に推進することに尽きる。今までに投資した設備を大切にしながら、「第3のプラットフォーム」を活用した、受注窓口の拡大や、つながる工場・考える工場への変革が勝利への最短路線である。

過去数十年に亘りデジタル化を強く推進してきた中小製造業・町工場は数多く存在し、これが「第2のプラットフォーム」の遺産(レガシー)である。

CAD/CAMシステムや生産管理システムなど優れたソフトウェアが導入され、結果として、事務所には数多くのパソコンが設置され、事務所の社員全員がパソコンを操作して仕事をこなしている。

加工機も、CNC付きマシンや自動機・ロボットなど、PLCやコンピュータが搭載された機械が多く設備され、事務所とネットワークで繋がり、スケジュール化された自動運転システムも多く稼働している。

このような遺産(レガシー)が日本列島津々浦々に存在するのは、真に日本の底力である。遺産(レガシー)は負の遺産でなく財産である。この財産を活かし、「第3のプラットフォーム」を増築することが、中小製造業・町工場のデジタル変革の王道であり、この実現が世界に先駆ける中小製造業のインダストリー4.0の成功事例となるだろう。


‖ クラウドへの偏見を捨て、活用しよう


少ないようで多いのが「クラウドに対する偏見」である。インダスリー4.0の実践には、この偏見はご法度である。

「クラウドは危険だし、スピードが遅いから当社はクラウドは使わない」と仰る中小企業経営者が意外と多いのも現実である。人工知能への認識も「あんなものは危ない。人間の敵になる存在だ」と仰る経営者もいる。このような認識は、テレビなどの報道によるものも多いと思われるが、捨てなければならない偏見である。

未来への扉を「開くか」「閉じるか」は、ちょっとした判断が分水嶺となる場合が多い。
例えば、クラウドの活用をちょっとした判断で拒絶してしまったら、「第3のプラットフォーム」への入口の扉を閉めてしまう結果となる。

使い慣れたWindowsパソコンとソフトだけでは、未来の扉が開かない事を「デジタルトランスフォーメーション」が示唆している。


‖ 『情報の5S化』から始めるインダストリー4.0


第3のプラットフォームを活用し、中小製造業がインダストリー4.0を具体的にすすめるために、まず始めなければならないのは、「情報の5S化」である。

一般的に5Sとは、「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」の頭文字の S をとったものであり、日本での5S は、中小製造業・町工場の津々浦々まで 徹底されており、世界中のお手本ともなっている。

インダストリー4.0実現のために重要視すべきは、「5S」ではなく「情報の5S化」である。「情報の5S化」に視点を移すと日本の製造業は、世界から随分遅れているに気がつくはずである。

一言で表現すれば、「情報がバラバラ」。今日までに「第2のプラットフォーム」に構築された、CAD/CAMシステムや生産管理システムに加え、PDFなどの電子情報やメール情報など様々な情報が、工場内に氾濫しているが、多くの情報がバラバラに存在し、時には担当者のパソコンの中で埋もれてしまっている。

これらの数々のレガシー情報を会社の財産として社有化し、情報を有効活用する事が何よりも重要なことであり、「情報の5S化」なくしてデジタル変革を成し遂げることはできない。


‖ 情報の5S化を具体的に実現する「alfaDOCK(アルファドック)


株式会社アルファTKGが市場に提供する「alfaDOCK(アルファドック)」の導入で、「情報の5S化」を容易に実現することができる。

「alfaDOCK(アルファドック)」は、正真正銘の「第3のプラットフォーム」である「情報の5S化」を即刻実現し、ビッグデータや人工知能など最新技術活用への道を切り開く最短路線である。

「第3のプラットフォーム」を使って、バラバラになっている各種情報をひも付けて、「情報の5S化」を実現するのが、クラウドを活用した最先端技術である。レガシーシステムとの強力なインテリジェントソケット機能により、図面や各種ドキュメントがひも付き「情報の5S化」が実現する。

「情報の5S化」が実現した企業では、スマホやパソコンを使って社員全員が情報を有効活用でき、「見える化工場」「つながる工場」「考える工場」「ペーパレス工場」への第一歩を歩み出している。

alfaDOCK(アルファドック)」の活用による「情報の5S化」の実現が、中小製造業のデジタル変革の具体例であり、第3のプラットフォームを手にしたことで、世界中の最先端技術を導入できる企業体質への変革が、中小製造業のインダストリー4.0の具体的実践である。

大手製造業よりも早く、第3のプラットフォームへのデジタル変革を実現することが、中小製造業の勝ち組へのパスポートであり、その道しるべは「情報の5S化」である。







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著者 高木俊郎

14:21 | オートメーション新聞寄稿記事 | コメント:0 | page top
2017/06/27 IoTの泣き所『1マイル通信』・やっと実現した IoT無線通信技術【LPWA】
以下は 2017年6月21日のオートメーション新聞 第113号に掲載された寄稿記事です)

IoTの泣き所『1マイル通信』



ーー『やっと実現した IoT無線通信技術【LPWA】』ーー

IoT(モノのインターネット)という言葉は、今世紀最大のバズワードとして全世界に定着した。IoT時代の到来で、『スマートシティー』『スマート工場』に始まり『スマートハウス』や『スマート家電』など、何でもかんでも『スマート』が大流行である。

生活の中でも、『盗難対策で、自分の自転車を IoTで監視したい』とか、『おじいちゃんのお元気を常に知りたい』『ペットが迷子になったらすぐ探したい』など数多くの現実的な要望が生まれている。

しかし、インターネットに接続された『IoT自転車・IoTおじいちゃん・IoTペット』は普及していない。何故であろうか?
意外なことに、従来の無線通信技術が IoTとの調和が悪く、無線通信技術が原因で、IoT xxx(移動体 IoT) の普及を妨げているのである。

移動体IoTには、センサー情報をクラウドに伝送する無線通信が必須であり、携帯電話技術を使えば、移動体IoTは実現できるが、電池が持たずコストも高く、大きすぎて商品価値を持たない。

現在広く普及しているWi-FiやBluetoothでは、ごく短距離通信しかできず『IoT自転車』も『IoTおじいちゃん』も『IoTペット』も実現はできない。1マイル通信(1.6Km)が IoT の泣き所となって、商品化できないのである。

移動体IoT用のデバイス(センサーノード)は、超小型の電池で何年も使えて、1マイル(1.6km)程度の安定的なセンサー情報通信ができれば、商品化に一気に近づくのはわかっていたが、従来の無線通信技術は、音声や映像など大量情報を連続的に通信する事を目的に進化しており、IoTに要求される『低消費電力』と『長距離通信』を実現する方法は検討されてこなかった。

Wi-Fiや携帯電話などのデータ通信をIoTに使うと、消費電力や通信距離そしてコストが全くマッチングせず、結局はうまくいかない。従来の無線通信技術の進化方向が、 IoTの必要機能とは一致していないのである。

前回の提言で、デジタルトランスフォーメーション(DX)について触れ、第3のプラットフォームの解説をした。

IoTの実現する第3のプラットフォーム『モバイル・ソーシャル・ビッグデータ・クラウド』の4つの要素技術は、無線通信技術の進化を背景に、誰でもスマホを使えて、インターネットも地球規模で整備されたが、IoTに関しては、たった『1マイル(1.6km)』のセンサー情報通信技術の未発達が、移動体 IoT普及の足を引っ張っていたのである。

今年になって LPWA が注目され,1マイル通信を一気に解決する具体的なイノベーションが続々と誕生している。

LPWAとは、 Low Power Wide Area (省電力型広域無線網) のことで、低価格・低消費電力、かつ長距離通信が可能なネットワークのことであり、1マイル通信を完璧に可能にする IoT普及の切り札というべき待望の技術の誕生である。これは、IoT普及にとって最大のイノベーションであり、『IoT普及元年2017』と称しても過言ではないほどの大革命である。

100年以上も前にイタリアのマルコーニによって誕生した無線通信は、日本の歴史に大きな影響を与えた。日本は、日露戦争で無線通信を全艦艇に配備し実戦使用し、手旗信号に変わるモールス通信の威力を実証した。世界で初めての事である。

使用された国産の安中電機(現アンリツ)製三六無線通信機は世界で最も優れた無線機であったと言われている。以降日本は、無線通信の分野では世界のリーダー役を担ってきた。

また、日本の通信インフラにも目をみはるものがある。日本津々浦々で高速インターネットへの接続が可能であり、4G通信が国内あらゆるところで安定使用できるのは日本の底力である。

これらの高度に開発されてきた無線通信技術であるが、IoTとの不調和が今日まで未解決であったことは、非常に残念である。

LPWAは、完全にIoTに焦点を絞って IoT専用として新たに開発された無線通信技術である。主たる特徴は、データ容量が非常に小さいことがあげられる。センサー情報の通信には、大容量は不要である。音声も映像もない昔のモールス通信と同じで、ほんの少しの情報で十分大きな成果が得られる。

情報量が小さくなったことで、混信に強く長距離通信が可能になり、消費電力は極端に少なくなり、当然コストも大幅に削減される。ボタン電池で数年OK。1マイル通信OK。あらゆるセンサー接続OK。そして低価格など、商品化に必要な機能を完全網羅する。

LPWAの技術は、従来の無線通信技術とは一線を画するものであるが、アマチュア無線家が、IoT誕生のずーと前から『パケット通信』に、挑戦していた。これがLPWA技術の源流であろう。

LPWAのなかでも、非常に注目されている『LoRa』は、『スペクトラム拡散』というかつての米国軍需技術を使い安定的な長距離通信を実現している。周波数バンドも直進性の強い2.4GHzではなく、920MHzの活用で優位性が更に増している。

LPWAの誕生で『IoT普及元年2017』。一気に『IoT自転車・IoTおじいちゃん・IoTペット』が普及するのは間違いない。







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著者 高木俊郎

16:46 | オートメーション新聞寄稿記事 | コメント:0 | page top
2017/05/30 【2017 CeBITからの発信】・『デジタルトランスフォーメーションの衝撃』
以下は 2017年5月24日のオートメーション新聞 第110号に掲載された寄稿記事です)

【2017 CeBITからの発信】



ーー『デジタルトランスフォーメーションの衝撃』ーー

皆さんは、『デジタルトランスフォーメーション(DX)』という言葉をご存知だろうか?
DXとは、『人工知能など最新技術が活用できる企業』への脱皮を目的とするキーワードであり、クラウドシステムなどを活用したデジタル改革のことである。

中小製造業・町工場の経営者30人に質問した結果、DXを『全く知らない 』との回答が、30人中23名に及び、『聞いたことがある』との回答は9人と少数派であった。
DXを理解し実行に及んでいる経営者は、30人中たったの2人である。

日本ではあまり馴染みのないDXであるが、欧米は勿論のこと、アジアでも広範囲に浸透していることは日本の経営者への警告の一つでもある。

先般、ドイツハノーバーで行われたCeBIT(セビット)においては、『デジタルトランスフォーメーションに無限のチャンス』という謳い文句が、強調されており、DXが国際的な関心事になっていることを痛感する。

余談であるが、『DX (Digital Transformation)』は『DT』ではなく『DX』と訳される。『Trans 』は慣習的に『X』と表記されることが原因と思うが、真意は定かでない。

DXとは2004年、スウェーデンのウメオ大学の教授が提言した概念であり、『ITの浸透が人々の生活をあらゆる面で良い方向に変化させる』と解説されているが、この解説だけでは、なんのことか?さっぱりわからない。

では、デジタルトランスフォーメーション(DX : Digital Transformation)とはなにか?

近年、インターネットと通信の発展により、クラウドを活用したプラットフォームが急速に台頭してきた。この新しいプラットフォームは『第3のプラットフォーム』と呼ばれ、モバイル・ソーシャル・ビッグデータ・クラウドの4つを要素技術と定義している。

『第3のプラットフォーム』の上では、人工知能やVRなど最新デジタル技術が利用できる『仮想空間』が構築できる。仮想空間の誕生により想像を超えるデジタル革新が実現し、ビジネスモデルの大変革が起きると言われている。

各企業において、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する際には、『第3のプラットフォーム』の活用を意識することが非常に重要である。

ITの歴史を振り返れば、1964年のIBM System/360から始まった『メインフレームと端末』が大企業でのITの始まりとなったが、これが『第1のプラットフォーム』と呼ばれている。
90年台からダウンサイジングの流れにより『クライアント/サーバシステム』が中小企業にも普及した。これが『第2のプラットフォーム』である。現在各企業では、パソコンやWindowsソフトが活躍しているが、これが『第2のプラットフォーム』の成果物である。

各企業が、クラウドを軸とする『第3のプラットフォーム』に移行し、デジタル改革によって新しい事業モデルを創造することが、『デジタルトランスフォーメーション(DX)』の真髄である。

金融界の『FinTech』や製造業界の『インダストリー4.0』そして話題の『IoT』のすべてが、DXの範疇であり、DXとは全業種・全業界に広がる未来像である。『第3のプラットフォーム』には企業規模や国境などには全く関係なく、人類の活動を根本から変える魔力を備えている。

製造業界では、大企業のみならず、中小製造業・町工場においても、今日まで『第2のプラットフォーム』を活用し、デジタル化を推進してきた会社は数多く存在する。
一般的な中小製造業では、CAD/CAMシステムや生産管理システムなど優れたソフトウェアを導してきた。結果として、事務所には数多くのパソコンが設置され、事務所の社員全員がパソコンを操作して仕事をこなしている。

加工機も、CNC付きマシンや自動機・ロボットなど、PLCやコンピュータが搭載された機械が多く設備され、事務所とネットワークで繋がり、スケジュール化された自動運転システムも多く稼働している。

これらは全て『第2のプラットフォーム』での設備投資の結果であり、今後も継続的な競争力強化のために、パソコンやWindowsソフトを購入したり、新規の最新鋭機の導入も必要となる。

しかし、『第2のプラットフォーム』上での強化だけでは将来の企業競争に勝てず、将来に向けた有効投資は『第3のプラットフォーム』の活用であり、インダストリー4.0とは、『第3のプラットフォーム』によるDXの実現と言っても過言ではない。

『クラウドは危険だし、スピードが遅いから当社はクラウドは使わない』と仰る中小企業経営者に時々お会いするが、デジタルトランスフォーメーションの世界的潮流とその効果を知れば、考えが変わるはずである。

未来への扉を『開くか』『閉じるか』は、ちょっとした判断が分水嶺となる場合が多い。
例えば、クラウドの活用をちょっとした判断で拒絶してしまったら、『第3のプラットフォーム』への入口の扉を閉めてしまう結果となる。

使い慣れたWindowsパソコンとソフトだけでは、未来の扉が開かない事を『デジタルトランスフォーメーション』が示唆している。







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著者 高木俊郎

17:49 | オートメーション新聞寄稿記事 | コメント:0 | page top
2017/04/16 【日本発 『ソサエティー5.0』を世界発信】・『インダストリー4.0』を切り捨て御免【CeBIT 2017】
以下は 2017年4月12日のオートメーション新聞 第106号に掲載された寄稿記事です)

【日本発 『ソサエティー5.0』を世界発信】



ーー『インダストリー4.0』を切り捨て御免【CeBIT 2017】ーー

IoT, ビッグデータ、クラウド、セキュリティーなど、世間を騒がす新技術のITビジネスに特化した世界最大の商談展示会『CeBIT2017』(セビット/ 国際情報通信技術見本市)が閉幕した。

日本がパートナーカントリーとなった今年のCeBITは、日本にとって特別な見本市であった。開催日前夜には、安倍首相が駆けつけ、メルケル首相とともに 2000名のVIP参加者の前でスピーチを行った。安倍首相のスピーチは力強く自信に溢れていた。

冒頭『マシーンに新たな定義が必要になった』とのコメントから始まり『製造業は問題を解くインダストリーに変わる』と提言したオープンな国際協調と 『つながる』重要性を信条とし、イノベーションと日独協調を訴えたスピーチであったが、特筆すべきはそのスピーチの中で、日本政府が世界に発信する『Society(ソサエティー)5.0』に言及したことである。

『インダストリー4.0』のお膝元ドイツで・・メルケル首相の目前で・・日本戦略『ソサエティー5.0』を安倍首相がぶち上げたことは、驚愕であるが日本の(世界に向けたリーダ役としての)強い意思を感じる十分なコメントであった。

『ソサエティー5.0』は、未だ知名度も低く耳慣れない言葉であるが、今後重要なキーワードとなることは必至であり、日本の経営者にとっては極めて重要な概念となるだろう。『インダストリー4.0』の違いも非常に気になるところである。

『ソサエティー5.0』とは、日本政府が作った言葉である。
政府の総合科学技術・イノベーション会議が、2016年度から始まる「第5期科学技術基本計画」の重点テーマとして命名したが、安倍首相が世界に向けて発信した背景には、「諸外国の第4次産業革命に関する産業振興に遅れを取りたくない」と言った日本政府の強い意志が潜んでいる。

周知のごとく、『インダストリー4.0』はドイツで生まれ、現代の黒船として日本に来航し、大きな話題となった。ドイツ以外でも、米国の「先進製造パートナーシップ」、中国の「中国製造 2025」などが旗揚げされており、各国は産学官一体活動を行いながら、世界のリーダーとしてプレゼンス向上を狙っている。

残念ながら日本は、各国の動きに右往左往しつつも、閉鎖的なクローズド思想からの脱皮すらできず、世界に向けて発信するどころか、世界の流れにもついていけないのが現状である。
日本のこのような現状を打開し、独自の色を出すために定義した言葉が『ソサエティー5.0』である。安倍首相がCeBITの会場で声高に『ソサエティー5.0』を発信したのには、このような背景がある。

安倍首相はスピーチの最後に『人類の歴史に大きな節目が訪れた』と語り、『ソサエティー5.0の物語をドイツと日本、一から一緒に書いていこうではありませんか。』と日本主導の意思を明確にアピールした。終始一貫ドイツ発『インダストリー4.0』には全く触れなかったことに、驚きを覚えたのは私だけではないはずである。

『ソサエティ5.0』は、人類誕生の歴史から始まっている。安倍首相はスピーチの中で、『ソサエティー5.0』を次のように解説した。

  以下安倍首相スピーチ抜粋--
『森に出て狩りをした大昔。そこを人類史の第一章とすると、米や小麦で安定した食料を手にしたのが第二章。産業化の波が来て近代という名の第三章が幕が開け、通信とコンピュータの融合がまた新たな幕を開いて第四章。今私たちは、解決できなかった問題を解けるようになる第五章の開幕を目前にしている。ものが皆つながり、全てに技術が融合する時代、ソサエティー5.0の幕開けであります』
 --と解説し

そしてスピーチの最後を『メルケル首相、オープンでルールを尊び、自由で公正な世界を保つのです。そして強靭にするのです。その上で若者たちにイノベーションの広野へと思うさまかけていってもらおうではありませんか。人類史の第五章は、きっと光明降り注ぐ明るい世界になります。私達の力を信じて、前に前に、もっと進んでいこうではありませんか』と締めくくった。

『ドイツ発 インダストリー4.0 切り捨て御免』のスピーチであった。

インダストリー4.0の始まりは、石炭と蒸気による産業化の波『産業革命(インダストリー1.0)』である。これをソサエティ5.0では、第三章と位置づけている。続くインダストリー2.0は、米国で起きた石油と電気に大量生産工場誕生であるが、ソサエティ5.0ではこれも第三章の範疇(はんちゅう)である。

インダストリー4.0とソサエティー5.0は、その他定義の仕方に違いがあるが、最大の違いはインダストリー4.0が製造業の生産性向上に視点を置き、インフラや標準規格に焦点が当てられることに対し、ソサエティー5.0では具体的な問題解決といった社会構造に言及している点である。

CeBIT2017では、自動運転車も大きな注目技術であったが、インダストリー4.0では新技術が車作りを変え、マーケットと工場及びそのサプライチェーンとのつながりや工場のスマート化による生産性向上が実現する。

ソサエティー5.0では、自動運転車の誕生が事故や健康といった問題を解決することが重要である。具体的には、『交通事故』や『疲労運転・運転中の健康障害』など従来からの問題を解決し、事故のない新たな時代の到来を、人類の第五章『ソサエティ5.0』と定義している。

人生につきまとう健康問題や地球規模でのエネルギー問題などが、イノベーションによって解決されていく社会が『ソサエティ5.0』である。デジタルトランスフォーメーションとは、インターネットや人工知能を駆使した問題解決型の社会であり、製造業がその中核を担うことになる。

日本発の『ソサエティ5.0』で、日本が世界のリーダーとしての存在感が示せれるか?

日本のベンチャーと中小製造業のイノベーションにその命運がかかっている。







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著者 高木俊郎

17:33 | オートメーション新聞寄稿記事 | コメント:0 | page top
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