2022/07/27 劣化列島日本/希望と勇気⑦ーー【50年前にタイムマシン『日本列島改造論』】ーー
以下は 2022年7月27日のオートメーション新聞第297号に掲載された寄稿記事です)

​​劣化列島日本/希望と勇気⑦

『50年前にタイムマシン『日本列島改造論』

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『劣化列島日本』をテーマとした本年度シリーズ7回目は、田中角栄氏の列島改造論を振り返り、当時の「新しい国造り戦略」を検証する。半世紀前の列島改造論をあらためて見直すと、当時の活力と関係者の英知に驚愕する。今日とは雲泥の差である。50年の時の流れの中で、なぜ日本社会は誇りを失い、未来創造への自信を失ってしまったのか? 

これにはさまざまな要因があるものの、主たる原因の一つに、「出羽守(ではのかみ)」の存在が挙げられる。「出羽守」とは欧米崇拝の代名詞である。日本人は一般的に、欧米社会を崇拝する傾向が強いが、『アメリカでは……、ドイツでは……』といった「欧米かぶれ」を言う。欧米の論理を鵜呑みにし、グローバル化の旗印のもとで欧米を崇拝するグローバル主義者「出羽守」によって日本全体が劣化した。

グローバル化への崇拝は、1985年プラザ合意以降の円高をキッカケに日本社会に蔓延した。バブル崩壊以降の日本社会では、大企業の大半が自分たちの遺伝子への自信を失い、グローバル化への変革を推進したが、結果としてグローバル化の敗者となり、国際社会でのプレゼンスを失ってしまった。

「出羽守」が闊歩する前(バブル崩壊以前)の日本は、欧米よりはるかに優れた文化とビジョンを持っていた。この歴史的証明が50年前の「列島改造論」である。「列島改造論」とは、中高年以降の年配者であれば記憶に強く残っているはずである。「列島改造論」は50年前の1972年に日刊工業新聞社より出版された一冊の本から始まった。

著者は70%の支持率を誇った伝説的首相田中角栄氏であり、異例のベストセラーとして記録されている。出版当時の田中角栄氏は、通商産業省(現経済産業省)大臣であった。その後、首相に就任した田中角栄氏は、列島改造論を積極的に推進し『角栄流新しい国造り』と謳われ、当時の経済界は、列島改造論を成長の糧として飛躍的な発展を遂げた。

地方を見据え「過疎と過密」同時解消の打ち手として新幹線・高速道も全国に広められ、日本を狂乱的な発展に導いた。日刊工業新聞では、6月の記事に50年前の日本列島改造論の特集を組み、半世紀を経た今、さまざまな角度から列島改造論の検証をしている。日刊工業新聞のこの特集を読むと、田中角栄氏の政治的手腕のみならず、当時の通産省が発信した未来ビジョンが明確に見えてくる。

欧米の受け売りではなく、日本人が日本の誇りを持って未来を見据えたビジョンに感銘を覚える。日刊工業新聞では列島改造論を次のように評価している。『戦後の繊維などの軽工業から鉄鋼や化学といった重化学工業への転換を主導してきた通産省が「3の矢」として放った知識集約型産業への転換を国家戦略に据えている。

列島改造論の中では、強化すべき分野が具体的に提示されている。電子計算機・航空機・産業ロボット・情報処理サービス・システムエンジニア……、いずれも現在の日本経済を支えている産業群ばかり……列島改造論で謳われた「新たな日本」ビジョンの先見性に改めて驚愕する』(抜粋)。

また、田中角栄氏は列島改造論の最後に『敗戦の焼け跡から今日の日本を建設したお互いの汗と力、知恵と技術を結集すれば、大都市や産業が主人公ではなく、人間と太陽と緑が主人公となる「人間復権」の新しい時代を迎えることは決して不可能ではない』と結んでいる。国家戦略ビジョンの結びである。

列島改造論以降の日本では、列島改造論が中心軸となって、日本経済は大いに成長し、安全で豊かな日本が創造されたが、バブル崩壊以降の日本はグローバル主義を標榜し、国家戦略すらも見失った。かつては世界を席巻した電子技術も、Web1.0、Web2.0の時代の流れに乗り遅れ、GAFAに取って代わり、日本の出る幕もない。

列島改造論から50年。今まさに50年前の日本を学ぶ時である。数十年にわたり日本経済を苦しめてきた円高が消滅し、円安時代がやってきたが、今の日本では依然として出羽守に支配され続けている。その一例が異常なまでのSDGsへの傾注である。SDGsのみで未来を創造できないことは明白であるが、欧米由来のSDGsが重要戦略に位置づけられている。

極端なSDGsの推進が「劣化列島日本」の象徴として、日本経済の破滅を導く危険を多くの知識人が指摘している。経団連フォーラムにおいても、スタートアップ企業の大幅増加や原発再稼働などの脱炭素を取りまとめ、官邸への答申を行っているが、50年前の列島改造論と比較したら、その中身の重みは誰の目からも明らかである。

出羽守の洗脳は強烈である。その一例として、今日SDGs旗印のもとで進められる太陽光発電は、森を切り倒し無機質なパネルを敷き詰める活動が正義とされる異様な社会を生み出している。CO2を吸収する森を消滅させ、美しい自然を破壊し、ゴミとなる無機質パネルを埋め尽す今日の戦略を、50年後の人々はどう評価するのだろうか? 

「人間と太陽と緑が主人公となる人間復権」は、50年前田中角栄氏の結びの言葉であるが、50年前の通産省はじめ、すべての関係者の英知と団結に感謝し、あらためてかみしめたい言葉である。








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著者 高木俊郎
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2022/06/29 劣化列島日本/希望と勇気⑥ーー『悪い円安』と『悪いリモートワーク』ーー
以下は 2022年6月29日のオートメーション新聞第294号に掲載された寄稿記事です)

​​劣化列島日本/希望と勇気⑥

『悪い円安』と『悪いリモートワーク』


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『提言!日本の製造業再起動に向けて』の本年度(2022年)は、劣化列島日本をテーマとしたシリーズを寄稿しているが、シリーズ6回目となる本稿では、突然日本に襲いかかる円安やコロナ禍によるリモートワークを取り上げ、中小製造業への影響や経営課題をテーマとしたい。異常事態というべき為替の急変が日本列島を揺れ動かしている。

『悪い円安』といった言葉が流行語となるなど、一部のメディアや野党政治家は、金利上昇を拒む日銀や政権を激しく批判している。当社(アルファTKG)も急速な円安が経営を直撃している。インドにある自社の開発センターでは、60人ほどの技術者がソフト開発に従事しているが、その人件費支払いの円安差損は膨大で、利益の大幅下方修正が余儀なくされている。

『悪い円安』の論調に同調し、恨み節を論じたいと思うが、突然現れた円安にどう立ち向かうのか?に立ち返り、円安の要因と中小製造業の今後の対応について考察したい。円安要因については、各メディアでは判を押したように「日米金利差」が指摘されている。

円安是正のために日本でも『金利を上げるべきだ!』との声も多く聞くが、劣化列島の現状を無視した(現実離れの)無責任論調ではないだろうか?一方では、労働形態を一変させる報道が話題をさらっている。

NTTがリモートワークを推奨し、勤務場所を自宅とし、『日本全国好きなところに行け! 出社は出張扱い。航空機利用もOK』との方針を発表した。『コロナ禍を先取りした英断』と称賛される一方で、『GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)など米国の情報技術企業に敗れ、今日も従業員の流出が止まらないNTTの苦肉の策』との声も聞く。

18万人の従業員を擁する巨大企業であり日本の労働意識を大切にすべきNTTの決断は、『人気取りの決断だ! 従業員のリストラの前哨戦だ!』と揶揄(やゆ)されても不思議はない。テスラ社のイーロン・マスク氏が従業員に対して、『出社かクビか』とリモートワークを完全否定した事の正反対である。

Web1.0で破れ、Web2.0ではGAFAに完全敗北したNTTが、Web3(ウエブ・スリー)で起死回生し、日本の再起動の役割を果たすべき巨大企業であることは明白である。このためには、社員が一丸となって(社員同士が協力し)共通目的に向かって事に当たることが必須であり、イノベーション実現にリモートワークが無力であることは明白のはずである。

NTTの従業員がこの話を真に受けて、『沖縄や北海道に家を買って……』を現実に行動に移したら、数年先に職を失い、路頭に迷う危険も考えねばならない。24年にはNTTが専用に築いたPSTN(公衆交換電話網)が、汎用IP網に変わり固定電話が終焉(しゅうえん)を迎える。NTTには膨大な従業員を抱え続ける経営秘策があるのだろうか?

国家的大企業NTTに限らず、戦後創業者によって築かれた大企業は、オーナー経営者からサラリーマン経営者に移行し、その経営判断には理解できないことが多い。円安の根本的原因には、大企業の経営劣化による日本の競争力低下が潜んでいるのではないだろうか。円安は、輸出型大企業に富をもたらす特効薬であり、日本のGDPを底上げする。

1985年のプラザ合意以降、米国主導の「日本いじめ」とも言える「円高誘導」で日本は国際競争力を失ってきたのは明白である。30年以上の年月をかけて再び復活した「円安環境」を『悪い円安』と批判するのは筋違いである。米国は中露戦略などの観点から、円安を容認する姿勢を貫いている。

「円安時代の到来」で日本製造業の再起動に活路が開かれているが、再起動への絶対条件は「強いイノベーションの推進」と「国内製造の強化」に尽きる。どちらも若いエネルギーの「強調と団結」によってもたらされるものであり、大企業がどっしりと腰を据えて日本国内に錨をおろし、次世代の新技術開発に情熱を注ぐことが必須条件である。

円安の恩恵を享受し、再び『JAPAN as №1』を目指すチャンスがやってきているのに、大企業のリモートワーク施策がその芽を摘んでしまいかねない。ところが幸いなことに、日本のマジョリティーは中堅・中小製造業であり、リモートワークなどお花畑的発想はまったくなく、多くの経営者はDX化による経営改革を率先垂範して進め、自動化を視野に入れた次世代工場の構築を急いでいる。

直接輸出する力が弱い中小製造業では円安の直接的メリットは少なく、逆に電気代や鋼材価格の高騰で、足元では経営を圧迫している側面が大きいが、円安時代の経営戦略に着手する企業も現れてきた。これらの企業での経営戦略の柱は、円安とDXを味方につけることであり、具体的には、『輸出型自社商品の開発』と『Web3』の先取り導入である。

当社も数社の中堅中小製造業のプロジェクトに参加しているが、これらの企業では社員のモチベーションも高く、若い社員が高い熱量を発散し推進している。前述のNTTでは、若い社員が退職し、GAFAに再就職する流れが止まらないと聞く。日本の大企業に勤務する社員が、海外企業に転職するのは真に国益の損失である。多くの若い優秀な社員が将来有望な中堅中小製造業に転職し、将来の日本を築き上げることを切に願う。











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著者 高木俊郎
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2022/05/25 劣化列島日本/希望と勇気⑤ーー『出羽守(ではのかみ)』に支配されたウクライナ報道ーー
以下は 2022年5月25日のオートメーション新聞第291号に掲載された寄稿記事です)

​​劣化列島日本/希望と勇気⑤

『出羽守(ではのかみ)』に支配されたウクライナ報道







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今年度(2022年)は劣化列島日本をテーマにシリーズで寄稿しているが、第5回目は、劣化列島日本の象徴とも言える『出羽守(ではのかみ)』に支配されたウクライナ報道を取り上げる。筆者はかねてより出羽守(ではのかみ)の弊害を提言してきた。出羽守(ではのかみ)とは、欧州では……、米国では……、と欧米の習慣や言動を常に引き合いに出す事を言う。

出羽守は『欧米は日本より優れている』との前提があり、日本を自虐的に攻撃する事が多く、日本の優れた文化を破壊し、日本のアイデンティティーを消滅させる非常に危険な言動である。ところが、テレビを筆頭とするメディアも、出羽守の影響を強く受けている。

テレビ・新聞などの劣化については過去に取り上げたので本稿では割愛するが、最近のウクライナに関する報道は、米英の言動をうのみにする「米英崇拝報道」が繰り返されている。報道の内容は、戦況やウクライナの惨状であり、『平和なウクライナに、暴力的なロシア軍が攻め込んだ』という概念で報道されている。

もちろん、大義も正義もないロシア軍によるウクライナへの軍事侵攻は許されるものではないが、ウクライナ国内の内乱事情や歴史的背景によるロシア視点には無関心で、戦況や惨状のみを報道するメディアのニュースソースは、すべて欧米からの受け売りである。日本政府は、ロシアへの各種制裁とウクライナ支援を一番乗りで決定した。

日本の国益を熟考することもなく、一瞬でロシアを敵国として表明した日本政府の結論に疑問を持つ報道は少ない。ロシア側の視点で見れば、ロシアの敵国は、米国・英国、そして日本との順番が決定したことは間違いない。日本の国益や安全保障の観点から、隣国ロシアを敵国とすることが正しい判断であったのか?を冷静に考え議論するテレビ報道も少ない。

世界はしたたかである。欧州各国や欧州以外の各国も、国際社会の声に同調し「ロシア制裁」を表明しながらも、本音ではロシアとの関係悪化を危惧し、慎重な対応に終始している。即座に米英に追従する日本の姿は、「アメリカのポチ」と揶揄(やゆ)される「劣化列島日本」の象徴ではないだろうか?

2022年5月、日本は戦後最大と言うべき周辺国家の潮流変化に直面している。核保有の非友好国、中国・北朝鮮は日本にミサイルを向けており、ロシアも真の敵国に加わった。これからの日本は、世界に類のない「ぐるりを敵対国に囲まれた国家」として常に核の脅威にさらされる。

出羽守が信奉する米国が『いざとなったら日本を守ってくれる』というお花畑的発想が崩れ去っているのは明白であるが、「劣化列島日本」のメディアはこれも報道しない。また、中国経済指標が戦後最大というべき瞬間的異変を示しているが、この事実に対する解析もなく危機感は薄い。

驚くことに中国の統計でさえ4月度は前月から20%以上の急落となっている。トヨタの販売台数も30%以上の落ち込みとなっているので、実態は相当にひどい状態に突入したと推測される。これを『上海ロックダウンが原因』と断じるのは簡単であるが、5月に入って中国人の国外移動を極端に制限するなど、かつてはあり得ない国家規制が突然起きている。

不動産の急落も、2軒目・3軒目の個人投資に膨大な税金を課すといった規制が発端となっているので、明らかに中国政府の政策変化を感じざるを得ない。『風雲急を告げる』とはまさに今日の日本が置かれた状況である。奇跡的に訪れた130円時代をチャンスとして、日本のものづくりが復権する可能性も大きいが、半面で中国・北朝鮮・ロシアからの攻撃に直面し、予想できない大惨事に巻き込まれるかもしれない。

今、われわれ日本人に求められるのは、出羽守の呪縛から逃れ、日本人としての誇りを取り戻すことである。主権国家として自国の安全保障を(自国の力で)推進する一方で、130円という円安を武器に、「リショアリング(製造業の国内回帰)」を推進し、グローバル経済の発想を転換することで、世界一の製造強国への復権が可能である。

日本の大手製造業は130円時代を迎え、再び世界を席巻する実力を持っている。円安には輸入コストのアップなどによる悪影響はあるが、総合的な観点からは絶好のチャンスであり、日本が一流国を維持する特効薬である。筆者はかつて、ロシアの製造工場を何回にも渡り訪問した。民間企業の工場は、旧ソ連時代の国営工場の払い下げで成り立っている。

驚くことに、工場の地下には巨大なシェルターが(例外なく)設置されている。米国からの核攻撃に備えたソ連時代の産物である。今日のロシアは、かつての設置したシェルターが各都市に現存し、今でも核戦争への備えを持つ国家であり、いつ核戦争が起きても不思議ではない。日本は、こんな国を敵に回し、軍事衝突に発展するような愚策だけは絶対にさけなければならない。ウクライナ報道をテレビで見るたびに、出羽守(特に米英への盲従)に危険を感じている。









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著者 高木俊郎
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2022/04/20 劣化列島日本/希望と勇気④ ーー『東北新幹線地震脱線』と『M2M/IoT』ーー
以下は 2022年4月20日のオートメーション新聞第288号に掲載された寄稿記事です)

​​劣化列島日本/希望と勇気④

『東北新幹線地震脱線』と『M2M/IoT』


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本年度は「劣化列島日本」をテーマに連載しているが、シリーズ4回目となる本稿では、劣化列島日本の象徴とも言える『安全神話の崩壊』を取り上げる。3月16日夜間に福島沖を震源とする大きな地震が東北地方を襲った。幸い被害は少なく、11年前の悪夢再来は防げたものの、安全神話を崩壊させる2つの大事故が起きている。

1つ目は、東北新幹線の脱線事故。2つ目は、火力発電所の破損事故である。新幹線の脱線事故は今日まで、2004年の中越地震による上越新幹線の脱線、16年の熊本地震による九州新幹線の脱線が起きている。今回の東北新幹線の事故では、幸いにして人身被害はなかったが、メディアの反応は異様である。

『脱線事故、震災の教訓生きず』と、JRの安全対策を厳しく非難する報道の半面で、『大型地震にも関わらず負傷者を出さずに、地震対策は完璧であった』などとトンチンカンな報道メディアもあった。(事の重要性を考えない)お花畑メディアこそ「劣化列島日本」を象徴する報道の劣化を示している。

また、電力供給問題にしても『火力発電は耐震性に弱い』ということは、かねてより専門家によって指摘されており、明らかに『想定内』の事故である。頼みの太陽光発電など直射日光のない寒空では役に立たないことも実証された。原発再稼働など本質的な対応を避けて電力供給対策を怠った結果、想定内の事故により国民に節電を呼びかける体質は、劣化を超えた無責任体質といえる。

揚水発電によって大規模停電危機を一時的に回避したものの、夏の電力需要増大に向けて本質的な問題は何も解決していない。前述2つの事故は、「国民の生命安全」と「エネルギーの安定供給」という国家的最重要課題を根底から揺るがす事故であり大事件であるが、『喉元過ぎれば熱さを忘れる』の通り、最近ではメディアの報道も消え、国民の関心も忘れ去っている。

本稿では、1つ目の新幹線脱線事故を取り上げ、安全確保のための手段として採用されているデジタル技術の現状や、今後のさらに重要度を増してくる「M2M&IoT」の正しい活用の方法を検証してみたい。M2MとIoTは、両者ともネットワークシステムであるが、M2M(Machine to Machine)は、閉じたネットワーク上で各センサーやデバイスが情報を交換するネットワークの仕組みである。

一方で、IoT(Internet of things)はインターネットを活用したネットワークシステムである。今回の新幹線脱線防止に大きく貢献する仕組みはM2Mの一環でもある「早期地震検知情報システム(ユレダス)」である。ユレダスは、地震の初期微動の波動(P波)を検出し、独自の高速ネットワークを使って新幹線を緊急停止させる仕組みである。

地震は通常、初期微動(P波)のあとに本格的な揺れ(主要動:S波)がやってくる。P波を検出し、本格的な揺れ(S波)が来る前に、高速で走行する新幹線の送電を自動停止し、非常ブレーキの自動作動により安全に減速停止させる仕組みであり、ユレダスによって新幹線の安全性を向上させているのも事実である。

おそらくユレダスは、日本が世界に先駆する最高技術であることは間違いない。ところが、今回の脱線事故はユレダスのみでは、地震脱線の防止ができない事が実証された。またユレダスの最大の弱点も指摘されている。その弱点とは、前述の通りP波とS波の時間的な差を利用したシステムであるが、直下型地震等の場合、P波とS波はいっぺんにやってくるので、ユレダスが機能せず新幹線は高速走行のまま脱線に至る危険がある。

首都直下型地震なども想定し、脱線を防ぐ方法は、ユレダスのさらなる信頼性向上も必要であるが、メカ側の対策、すなわち、車両本体と線路の両方に設ける脱線防止機構の改良と完全設置の徹底が必須である。線路側に設置する機構は、「逸脱防止ガード」と呼ばれるが、総延長に渡る逸脱防止ガードの設置には、膨大な費用がかかるとの理由で、JR各社は導入を渋っている。特にJR東日本の地震対策は遅れている。

事故直後の記者会見で、JR東日本の市川副社長は『脱線を完全に防ぐのは難しい』と述べている。頻発する東北地方の地震を横目に、無責任なコメントを発するのを、新幹線の乗客は許すのだろうか? 『カネがかかる』との理由で、安全対策を講じなければ、新幹線脱線による人身事故はいつか発生する。想定内の発生であり、乗客の誰かが犠牲者となる。

お客さまの安全より、企業利益を優先することが大企業JRの経営姿勢でないことを願うばかりである。本編の主役である、中堅中小製造業においても、労働災害防止は経営の絶対条件である。厚生労働省による安全衛生管理のガイダンス遵守もさることながら、経営トップ自らが安全理念と方針を明確化し、企業内の安全環境醸成の必要性を認識することで、企業の劣化が防止できると確信する。製造現場の安全基盤を再確認すれば、安全装置のさらなる設置など、メカ系の保安対策強化ポイントも多く発見できるはずである。








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著者 高木俊郎
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2022/03/30 劣化列島日本/希望と勇気③ーー『ソニー復活から学ぶ『輝かしい未来』ーー
以下は 2022年3月30日のオートメーション新聞第285号に掲載された寄稿記事です)

​​劣化列島日本/希望と勇気③

ソニー復活から学ぶ『輝かしい未来』





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劣化列島日本をテーマにしたシリーズの3回目は、「ソニーの復活」を取り上げる。まず、数十年前のソニー全盛時代を振り返りたい。20世紀後半、ソニーの世界的活躍はわれわれ日本人にとっての大きな誇りであった。世界中のあらゆる空港免税店では、ソニーの製品が一等地に並び、テレビやウォークマンなどソニー製エレクトロニクス製品に、世界中から羨望の目があてられていた。

当時、筆者も米国出張の際に最新のウォークマンを持参し、米国の友人に自慢したことが懐かしい。友人からは、『ウォークマンとは変な英語だが、製品は凄いな!』と羨ましがられたことを覚えている。確かにウォークマンなる英語は存在せず、『英語圏での商品名には馴染(なじ)まない』との声も現地からは出ていたらしいが、当時のソニー幹部は『世界中でウォークマンに名称統一』の決定を行った。

結果としてウォークマンなる言葉は、辞典に載る正式英語となった。エレクトロニクス大国として世界を席巻し、『Japan as №1』とまで言われた日本も、ソニーの凋落とともに「失われた30年」に突入し、今日に至っている。失われた30年は、1992年のバブル崩壊から始まっているが、バブル崩壊から10年が過ぎた2003年(約20年前)に、ソニーショックと呼ばれた大事件が勃発する。

米国や韓国・中国との戦いに敗れたソニーが突然、1000億円に及ぶ業績の下方修正を発表し、株式市場は大パニックに陥った。株価はストップ安の大暴落となり、日本の失われた30年を決定づける象徴的な事件であった。以降、ソニー神話は崩壊し、メディア各社はソニー消滅論をこぞって報道。メディア各社のソニー叩きは壮絶を極め、あらゆるメディアが自虐的にソニーの劣化を取り上げ、ソニーの復活を信じるメディアは皆無であった。

ソニーが最悪の業績であった12年に平井一夫氏が社長に就任した。平井氏にはプレステの業績回復などの実績があるものの、メディア各社の反応は驚くほど否定的であった。当時の記事を読むと、平井氏はソニーの本流であるエレクトロニクスから外れた傍流(ぼうりゅう)であり、傍流ではソニーの復活は不可能と断じ、ソニー消滅すら予測する始末であった。

筆者も平井社長就任には大いなる関心を持ち、ソニーの動向には注意を払っていた。プレステの生みの親で、平井氏の前任の久夛良木(くたらぎ)健SCE(ソニー・コンピュータエンタテインメント)前社長が、私の大学の先輩であったことも平井氏に興味を持つ一因であった。平井氏の社長就任はソニーの歴史そして日本の歴史に刻まれた「大復活」の源である。以降ソニーは業績を回復し、21年のソニー経営実績は、営業利益1兆円超の史上最高の利益を上げている。

ソニー復活の事実であり、未踏の世界に踏み出す大発展の兆候である。ソニー復活物語は、劣化列島日本で花開いた「希望と勇気」と言っても過言ではない。本稿では、不死身のように復活を成し遂げたソニーを取り上げ、われわれ日本人の誇りを取り戻す「希望と勇気」を検証したい。ソニー復活の要因は、かつてソニー消滅すら予測したメディアが、(手のひらを返し)賛美の報道をしているので、そのへんは割愛する。

私の個人的な視点で恐縮だが、私の趣味の一つはカメラである。何十年に渡り、ライカ、キヤノンなど高価なカメラとレンズに膨大な費用を投入してきた。私の撮影技術は全くの素人レベルであるが、カメラ購入の「沼」に嵌(は)まった典型である。現在はライカ、キヤノン、ニコンを卒業し、ソニー製のカメラ・レンズの沼に嵌(は)まっている。カメラ業界では無名だったソニーの挑戦は素晴らしい。

ソニーから新製品が出る度に、高額な費用を投入し購入を続けているが、その最大の理由はソニーの秘められた技術力による(他社を凌ぐ)新機能への感動であり、ソニーの(カメラ業界への)意欲的な挑戦への感動である。私が偉大な経営者である平井氏を評価することなどできないが、誤解を恐れず私見を述べさせていただくと、ソニー復活は日本のものづくり遺伝子に回帰した革命であり、お客さまの「感動」を旗印に、グローバル主義から脱皮した日本の誇りである。

もっと強い言葉を使えば、「欧米からの思想的奴隷解放」でもある。足元でなく未来を見る。傍流であるからできた平井氏の革命。学ぶことが多く、真に勇気づけられる「事実の物語」である。ソニーの復活こそ日本復活のお手本であり、日本の「希望と勇気」がここにある。劣化列島日本が侵された病は、「グローバル」という欧米発のウイルスであることは明白であり、この病の特効薬は「日本遺伝子への回帰」であることを「ソニーの復活」が物語っている。








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著者 高木俊郎
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