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2017/04/16 【日本発 『ソサエティー5.0』を世界発信】・『インダストリー4.0』を切り捨て御免【CeBIT 2017】
以下は 2017年4月12日のオートメーション新聞 第106号に掲載された寄稿記事です)

【日本発 『ソサエティー5.0』を世界発信】



ーー『インダストリー4.0』を切り捨て御免【CeBIT 2017】ーー

IoT, ビッグデータ、クラウド、セキュリティーなど、世間を騒がす新技術のITビジネスに特化した世界最大の商談展示会『CeBIT2017』(セビット/ 国際情報通信技術見本市)が閉幕した。

日本がパートナーカントリーとなった今年のCeBITは、日本にとって特別な見本市であった。開催日前夜には、安倍首相が駆けつけ、メルケル首相とともに 2000名のVIP参加者の前でスピーチを行った。安倍首相のスピーチは力強く自信に溢れていた。

冒頭『マシーンに新たな定義が必要になった』とのコメントから始まり『製造業は問題を解くインダストリーに変わる』と提言したオープンな国際協調と 『つながる』重要性を信条とし、イノベーションと日独協調を訴えたスピーチであったが、特筆すべきはそのスピーチの中で、日本政府が世界に発信する『Society(ソサエティー)5.0』に言及したことである。

『インダストリー4.0』のお膝元ドイツで・・メルケル首相の目前で・・日本戦略『ソサエティー5.0』を安倍首相がぶち上げたことは、驚愕であるが日本の(世界に向けたリーダ役としての)強い意思を感じる十分なコメントであった。

『ソサエティー5.0』は、未だ知名度も低く耳慣れない言葉であるが、今後重要なキーワードとなることは必至であり、日本の経営者にとっては極めて重要な概念となるだろう。『インダストリー4.0』の違いも非常に気になるところである。

『ソサエティー5.0』とは、日本政府が作った言葉である。
政府の総合科学技術・イノベーション会議が、2016年度から始まる「第5期科学技術基本計画」の重点テーマとして命名したが、安倍首相が世界に向けて発信した背景には、「諸外国の第4次産業革命に関する産業振興に遅れを取りたくない」と言った日本政府の強い意志が潜んでいる。

周知のごとく、『インダストリー4.0』はドイツで生まれ、現代の黒船として日本に来航し、大きな話題となった。ドイツ以外でも、米国の「先進製造パートナーシップ」、中国の「中国製造 2025」などが旗揚げされており、各国は産学官一体活動を行いながら、世界のリーダーとしてプレゼンス向上を狙っている。

残念ながら日本は、各国の動きに右往左往しつつも、閉鎖的なクローズド思想からの脱皮すらできず、世界に向けて発信するどころか、世界の流れにもついていけないのが現状である。
日本のこのような現状を打開し、独自の色を出すために定義した言葉が『ソサエティー5.0』である。安倍首相がCeBITの会場で声高に『ソサエティー5.0』を発信したのには、このような背景がある。

安倍首相はスピーチの最後に『人類の歴史に大きな節目が訪れた』と語り、『ソサエティー5.0の物語をドイツと日本、一から一緒に書いていこうではありませんか。』と日本主導の意思を明確にアピールした。終始一貫ドイツ発『インダストリー4.0』には全く触れなかったことに、驚きを覚えたのは私だけではないはずである。

『ソサエティ5.0』は、人類誕生の歴史から始まっている。安倍首相はスピーチの中で、『ソサエティー5.0』を次のように解説した。

  以下安倍首相スピーチ抜粋--
『森に出て狩りをした大昔。そこを人類史の第一章とすると、米や小麦で安定した食料を手にしたのが第二章。産業化の波が来て近代という名の第三章が幕が開け、通信とコンピュータの融合がまた新たな幕を開いて第四章。今私たちは、解決できなかった問題を解けるようになる第五章の開幕を目前にしている。ものが皆つながり、全てに技術が融合する時代、ソサエティー5.0の幕開けであります』
 --と解説し

そしてスピーチの最後を『メルケル首相、オープンでルールを尊び、自由で公正な世界を保つのです。そして強靭にするのです。その上で若者たちにイノベーションの広野へと思うさまかけていってもらおうではありませんか。人類史の第五章は、きっと光明降り注ぐ明るい世界になります。私達の力を信じて、前に前に、もっと進んでいこうではありませんか』と締めくくった。

『ドイツ発 インダストリー4.0 切り捨て御免』のスピーチであった。

インダストリー4.0の始まりは、石炭と蒸気による産業化の波『産業革命(インダストリー1.0)』である。これをソサエティ5.0では、第三章と位置づけている。続くインダストリー2.0は、米国で起きた石油と電気に大量生産工場誕生であるが、ソサエティ5.0ではこれも第三章の範疇(はんちゅう)である。

インダストリー4.0とソサエティー5.0は、その他定義の仕方に違いがあるが、最大の違いはインダストリー4.0が製造業の生産性向上に視点を置き、インフラや標準規格に焦点が当てられることに対し、ソサエティー5.0では具体的な問題解決といった社会構造に言及している点である。

CeBIT2017では、自動運転車も大きな注目技術であったが、インダストリー4.0では新技術が車作りを変え、マーケットと工場及びそのサプライチェーンとのつながりや工場のスマート化による生産性向上が実現する。

ソサエティー5.0では、自動運転車の誕生が事故や健康といった問題を解決することが重要である。具体的には、『交通事故』や『疲労運転・運転中の健康障害』など従来からの問題を解決し、事故のない新たな時代の到来を、人類の第五章『ソサエティ5.0』と定義している。

人生につきまとう健康問題や地球規模でのエネルギー問題などが、イノベーションによって解決されていく社会が『ソサエティ5.0』である。デジタルトランスフォーメーションとは、インターネットや人工知能を駆使した問題解決型の社会であり、製造業がその中核を担うことになる。

日本発の『ソサエティ5.0』で、日本が世界のリーダーとしての存在感が示せれるか?

日本のベンチャーと中小製造業のイノベーションにその命運がかかっている。







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著者 高木俊郎

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17:33 | オートメーション新聞寄稿記事 | コメント:0 | page top
2017/03/20 【『CeBIT 2017』ドイツでの開催目前】・中小製造業の『デジタル・トランスフォーメーション』
以下は 2017年3月15日のオートメーション新聞 第103号に掲載された寄稿記事です)

【『CeBIT 2017』ドイツでの開催目前】



ーー中小製造業の『デジタル・トランスフォーメーション』ーー

ドイツ・ハノーバーで、3月20日から5日間に渡って開催される『CeBIT2017』(セビット/ 国際情報通信技術見本市)に強い関心が集まっている。
IoT, ビッグデータ、クラウド、セキュリティーなど、世間を騒がす新技術のITビジネスに特化した世界最大の商談展示会であり、昨年度も出展者数3,300社、来場者数200,000人を超える超人気見本市であったが、今年の『CeBIT 2017』は我が国日本で特に注目度が高くなっている。

日本政府、経済産業省や総務省、JETRO(日本貿易振興機構)はじめ、産業界でも日本を代表する大手製造業各社の力の入れ方は半端ではない。日本は、パートナーカントリーとして日本を代表する大企業が、ジャパン・パビリオンに出展し、中小企業・ベンチャー企業を併せ日本企業の出展者数は、過去最大規模118社に達している。

当社、アルファTKGもベンチャー企業として小さなブースを構え、日本やアジアのお客様から評価を得ている『中小製造業向けIoTシステム(alfaDOCK)』を出展する。

19日夜に開催される前夜祭(ウエルカム・ナイト)には、安倍首相とメルケル首相が登場予定であり、世界中から2000名を超えるVIPが集結。日本からも大企業のTOPが揃う、前代未聞の前夜祭となりそうである。

これだけ大規模に各社が揃って IoTに関心が集中するのも、日本にとって前代未聞である。ドイツから始まったインダストリー4.0などには比較的鈍重であった日本の各社が、IoTに一気に踏み出す節目となることは、どうも間違いなさそうである。

これらの大きな流れが、日本の中小製造業にも影響を与えていくことは必至である。今回は、CeBIT開催目前に控え、中小製造業の焦点を当てた最先端技術の活用事例を予想してみたい。

今回のCeBITのトップテーマは、(d!conomy - no limit)。『デジタル・トランスフォーメーション の無限のチャンス』に焦点を当てている。

『デジタル・トランスフォーメーション』とは最近の重要なキーワードであり、簡単に言えばデジタル社会への移行を意味する言葉である。もっと直接的に言い換えれば、『デジタル化への移行ができない企業は消滅する』を意味し、中小製造業にとってデジタル化への移行こそが、企業の存続をかけた戦略であることを明言しているキーワードである。

世界中から出展する3000社超の企業が、様々な角度から『デジタル・トランスフォーメーション』すなわちデジタル化社会を構築する商品やサービスを提案するのが『CeBIT2017』である。

このような膨大な新技術から、中小製造業に強いインパクトを与えると思われるイノベーションをピックアップし、今まであまり語られていない中小製造業の未来工場を予見してみたい。

最大に注目すべきは、自動運転車両の動向である。自動運転技術とその進歩は様々な点から報道されており、来るべき時代には完全自動運転が実現されると言われている。

『CeBIT2017』では、来場者は運転手のいない自動運転技術を搭載したスイスポストの自動運転車両『スマートシャトル』に試乗し、会場内を回りながら先駆的技術を体験できるそうである。  と聞くと、なんとなくゴルフ場の電動カートの自動運転をイメージしがちだが、磁気誘導により軌道上しか走れないゴルフカートとは雲泥の差である。

ドライバー不要の自動運転は、米国の報道ではしばしば「Drive by themselves=クルマが自ら運転する」と表現され、ドライバーが認識、判断している作業を、車に搭載された人工知能が代替する完全自動運転技術として紹介されている。

周知のごとく自動運転技術は、Google社が ディープラーニング(深層学習)による人工知能を活用した意欲的なイノベーションにより、他社を圧倒している。また、センサーやカメラ技術など膨大な要素技術が自動運転車に必要となり、その大半が『CeBIT 2017』に集結するのである。

これらの技術が、中小製造業の工場に投入されたらどうなるか?
まさに『自動運転機械』『自動運転工場』の誕生である。従来の熟練工による段取り作業と加工は、機械に搭載された人工知能が自動で行う。そして、加工後の製品を自らが自動で搬出し、自らが自動で検査する『自動運転=スマートシステム』が誕生するであろう。

ベテランの運転手に変わり、あらゆる状況判断を車が自分で行い、車が自分で運転する『自動運転車』と機械が自分で加工する『自動運転機械』は類似系のイノベーションである。ノウハウに誇りを持つ熟練工に猛反発を受けそうな『自動運転機械』には、今まであまり語られない革新的なメリットが存在する。

それは、『事故の減少』である。製造業での『デジタル・トランスフォーメーション』のメリットの多くは、デジタル化による生産性向上として語られることが多いが、実は安全で事故のない快適工場の実現には、デジタル化・自動運転機械が非常に有効な武器となる。忘れてはならない、追求すべき課題の一つである。

現在、製造業での労災事故は全産業の4分の1を占めている。「はさまれ・巻き込まれ」事故が全体の約3割を占めており、この傾向は過去20年以上変わっていない。『デジタル・トランスフォーメーション』によって、製造業の労働災害ゼロが実現する日も近い。

生産性向上の観点ばかりではなく、リスクマネージメントの観点からも、『デジタル・トランスフォーメーション』は、安全で、人に優しい魅力的な工場づくりに大いに貢献するだろう。

『CeBIT2017』では、この点にも留意し、情報収集してみたいと思っている。







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著者 高木俊郎

10:42 | オートメーション新聞寄稿記事 | コメント:0 | page top
2017/02/09 【生産年齢人口減少に直面する中小製造業】・『IoTが少子高齢化と労働者不足を救う』
以下は 2017年2月8日のオートメーション新聞 第99号に掲載された寄稿記事です)

【生産年齢人口減少に直面する中小製造業】

ーー『IoTが少子高齢化と労働者不足を救う』ーー

米トランプへの反発が世界中で湧き上がり、移民問題に対する議論も深刻化している。
英国EU離脱の争点となった移民問題は、欧州各国に伝搬し、ドイツやフランスや欧州各国も揺れ、移民問題は世論を二分する『歴史的な大問題』に発展している。

米国を筆頭とする『国民第一主義』が世界のトレンドとなり、『製造国内回帰(リショアリング)』を国家戦略に掲げる国が増えている。この傾向により、労働者不足が世界中で深刻化するだろう。勿論、我が国にとって労働者不足は、直面する重要な危惧であり、その原因は少子高齢化による「生産年齢人口」の減少である。

「生産年齢人口」とは、労働する年齢層(15~64歳を世界で使っている)人口のことであり、日本の生産年齢人口は1995年をピークに、大幅な減少を続けている。総人口に対する割合も過去のピーク70%から、現在は60%を割り込んでいる。

労働者不足は、ローカルに根を張る中小製造業の経営を直撃し、会社の存亡も危惧される。東京一極集中が続けば、地方都市の荒廃も避けられず、地方に錨(いかり)を下ろす中小製造業にとっては致命的な労働者不足が待ち受けている。

中小製造業は、戦後の高度成長時代にゼロからスタートしたオーナー企業が一般的である。創業以来一貫して労働者の確保には苦労してきたが、幸いにして番頭さんや職人さん、優秀な社員に恵まれ、企業発展を実現した創業者にとって、最後の難しい人事課題は「後継者」であった。
首尾よく2代目3代目にバトンが渡った企業でも、新社長を支える人材確保は容易ではない。

労働者不足の打ち手として、外国人労働者の活用(移民の促進)が叫ばれているが、この案は非常に容易な発想であり、現実的ではない。

外国人労働者の供給元と思われる中国・アジアの安い労働力が豊富に存在しているような錯覚が日本を支配しているが、事実とは違う。アジアの中小企業経営者は、ここ数年で労働者人件費が高騰し、鉄板など原材料が品薄高騰する予測をたてている。
この予測は、アジアでは常識とされており、日本の労働者不足を移民で補うことは難しいことが理解できる。

ここからは、日本のものづくりの歴史に遡って、労働者不足に対する特効薬を探してみたい。
日本は1968年に GDP世界第2位の経済大国に躍り出た。戦後20年の短い間に、日本は各企業が揃って設備投資を繰り返し、飛躍的な生産性向上を成し遂げた結果である。

1968年以前、日本の先を歩いていたのは当時の西ドイツである。日本と同じ敗戦国ドイツは、日本以上の工業技術力を持ち、日本より進んだ設備投資を行い急速な経済発展を行っていた。そのドイツを追い越す日本の原動力は、日本人の団結の力がものづくりに反映されていたからである。

意外と思うかもしれないが、日本人とドイツ人は非常に異なる価値観を持っている。個人の役割を明確にし、長期目標を組織的に着実に実行するドイツと、相手の立場も考えながら、目的遂行のためには身分を超えて協力し合い、目先の成果を追求する日本。

戦略型のドイツと戦術型の日本では、その遺伝子が全く違う。日本がドイツを追い越したのは、目的達成(戦術思考)で団結する力の勝利である。

戦後一貫して、日本の労働者不足を解決する方法は、外国人労働者ではなかった。日本のものづくりは、ずっと労働者不足だったが、移民に頼らず、日本人同士が団結し徹底的な設備投資とイノベーションを行い、最新設備を効果的に使う努力を続けてきた。

労働者不足を背景に、日本の工場はNC化・自動化が進み、世界最高峰のオートメーション工場が随所に誕生し、第3次産業革命を成し遂げたのである。

このような歴史認識に則って、これからの労働者不足への対応策は、『IoT活用でのイノベーション』である。
日本の遺伝子を蘇らせ、労働者不足をバネにするのは、かつてと同じであるが、かつてのNC化・自動化だけでなく、『ものづくりのサービス業務』に焦点を当てることが必要であり、この合理化を目標に、徹底的なIoTイノベーションを実現することである。

IoTや人工知能など第4次産業革命の最先端技術は、サービス産業に極めて有効な特効薬である。ものづくりの現場においては、▽顧客との打合せ ▽営業と技術の社内打合わせ ▽見積もり ▽エンジニアと生産現場との打合わせ ▽外注・調達 ▽加工段取り ▽検査 ▽出荷…など、意外なほど人手に頼った『サービス業務』が存在する。

ものづくりのイノベーションを、最新機械による『加工の進化』だけに焦点を当てた時代は終わった。これからのものづくりイノベーションは、加工を取り巻く『サービス業務』に焦点を当て、人海戦術から人工知能へ、アナログからデジタルへ、第4次産業革命の技術を労働者不足の特効薬としてものづくり現場に取り込むことが必要である。

特効薬には2つの種類がある。

【その1】『IoT戦略型イノベーション』…過去システム(レガシー)を否定し破壊的にイノベーションをすすめるので、大手企業が対象である。ドイツのインダストリー4.0の思想である。

【その2】『IoT戦術型イノベーション』…過去システム(レガシー)を破壊せず、段階的に成果を出しながらイノベーションを進めるので、中小製造業でも容易に導入が可能である。

今回の題目を・・IoTが少子高齢化と労働者不足を救う・・と題したが、この実現には、【その2】が有効的であることは、言うまでもない。







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著者 高木俊郎

17:22 | オートメーション新聞寄稿記事 | コメント:0 | page top
2017/01/13 【トランプ時代の 世界経済と ものづくり】・『グローバリズムの崩壊で日本の時代がやってくる』
以下は 2017年1月11日のオートメーション新聞  新年号に掲載された寄稿記事です)

【トランプ時代の 世界経済と ものづくり】


ーー『グローバリズムの崩壊で日本の時代がやってくる』ーー
(英国EU離脱、米大統領選…昨年は「まさか」の年)


あけましておめでとうございます。

昨年は『まさか』の年であった。6月の英国のEU離脱に続き、11月米大統領選の『まさか』は世界を震撼させた。米国のCNNなど一流メディアや一流コメンテータは、考えられない結果に当惑し、『大衆迎合だ』とのコメント報道が精一杯で、その狼狽ぶりを世界中の暴露した。

米大統領選以降も『まさか』は世界中に伝搬し、地殻変動が続いている。イタリアではレンツィ政権が倒れ、オーストリア・ドイツ・フランスでも極右勢力が台頭した。

日本では、以前より『トランプは危険だ!』のイメージが強く、トランプが当選したら日本はヤバイ、『超円高・株安がやってくる』と言った報道が繰り広げられたが、この予想もすっかり外れ、蓋を開けてみれば、市場ではトランプの財政施策による『トランプ効果』で、世界同時株高に湧き、日米金利格差拡大も追い風となり想像を超える円安となった。

経済界ではトランプへの期待感を強めているが、楽観的な話でなく、昨年の『まさか』から始まった世界の地殻変動が日本を直撃していることを忘れてはならない。

トランプ当選は11月9日であったが、ベルリンの壁が崩壊したのも11月9日である。
27年前には11月9日をキッカケに、共産主義諸国が次々と倒れ、世界の姿が一変した。

昨年11月9日トランプ当選のマグニチュードは、ベルリンの壁崩壊に匹敵し、世界の姿も日本の姿も大きく変わっていくだろう。



1,『まさか』の本質
【大衆不満のマグマ: グローバリズムの崩壊】

『馬脚を現す』という言葉があるが、トランプ当選『まさか』は、米に潜む大衆不満が馬脚を現した結果である。この大衆不満マグマの爆発が、『まさか』の震源地である。

マグマの爆発の原因は、『グローバリズムの疲弊』が根底にある。
『グローバリズム』は、1980年代後半より米国が主導し日本を含む世界中の経済を支配した。日本の大手企業も、そろって『グローバル化』に傾注した基本的な思想である。

政府は市場に干渉せず、企業の自由競争を促す『新自由主義』が根底にあり、規制緩和により国境を超えたヒト・モノ・カネの自由な移動を促すのが、グローバリズムの基本思想である。

20年以上に渡るグロ―バル化により、世界経済は発展しグローバル企業が膨大な利益を稼いだが、一般国民に富は配分されず、格差が拡大した。グローバル化に深刻な後遺症が生じたのである。

昨年6月の英国EU離脱の『まさか』も、11月の米国トランプ当選の『まさか』も、グローバル化の後遺症が発症した結果である。

英国では、EU連合という理想的なグローバリズムがもたらす自由化により東欧移民が殺到し、移民に職を奪われ、EUに主権を奪われた国民の不満が爆発した。米国では、グローバル化による製造海外シフトで国内が空洞化し、貧困にあえぐ米国白人の不満が爆発した。『グローバリズム』に対する大衆の反逆こそが、『まさか』の本質である。

大衆の反逆が見事に成功し、世界の覇権国家米国にトランプ氏が大統領となって『反グローバリズム政権』が誕生したのである。歴史的な大事件である。

2017年に、全世界の潮目が大きく変わることは、間違いなさそうである。


2,日本の『まさか』
【20年間伸びないGDP: グローバリズム負け組の日本】


過去20年間の経済活動の成績で、日本は厳しい結果となった。先進国ではイギリス、アメリカ、ドイツは勝ち組、日本は負け組である。20年に渡りGDPが伸びなかった先進国は日本だけである。

グローバリズム台頭の1980年代以前は、国民中心主義の経済概念が世界を支配していたが、これは日本に非常にマッチしたものであった。

日本国内に錨を下ろした『ものづくり』は世界を席巻し、全世界GDPの20%を占める経済大国であったが、現在は5%そこそこまでその比率を下げ、もはや世界の一流国から脱落しそうな気配である。日本の『まさか』の脱落は、バブル崩壊とそれに続く『グローバル化』が原因である。

1990年台後半から日本の大手製造業は、揃って『グローバル化』に経営の舵を切った。
かつての国内市場でのシェア争いから脱皮し『世界市場に打ってでよう』と、日本から錨を上げ世界に翼をひろげる『グローバル経営』にシフトした。バブル崩壊や円高進行、内需縮小を背景に、海外に工場進出し、ヒト・モノ・カネの海外投資が始まった。

大手製造業の中には、グローバル化を盲信した企業も多い。米国の経営システムや考え方を模倣し、利益中心主義を美徳とし、日本古来の秩序や哲学をことごとく否定し破壊した。

20年以上が経過した今日、『まさか』のグローバル化による疲弊が日本企業を覆っている。日本大手製造業は、一部の業界を除き、グローバル化による成功事例は少なく、グローバル化を高らかに叫ぶ企業には、社風の悪い会社が多い。

苦労して海外進出しても、新興国で成功した例は殆ど無く、虎の子の技術を吸い取られ、裸一貫で逃げ帰ってきた企業もまれではない。

日本人は、グローバリズムに最も不向きな民族であり、グローバル化の負け組に日本が名を連ねている。


3,トランプ時代の世界経済
【日本に好機到来: 国民中心主義の再復活】


トランプ時代の世界経済は、グローバリズムが後退し、再び国民中心主義が中心となる。

日本は、国民中心主義では世界最強国である。日本人の持つ『協調と団結の遺伝子』や『日本語の力』を背景に、日本列島は見事に秩序正しくまとまることが出来る国家である。

日本にとって苦手な『グローバリズム』の後退は、奇跡と呼べる福音であり、日本の強みを活かす潮目の変化がやってきたと言っても過言ではない。

27年前に起きた世界の地殻変動は、ベルリンの壁は取り外すことから始まったが、今回の地殻変動は、トランプ氏が中心となって、壁を作るところから始まるだろう。米国では、目に見えない壁が構築され、国内重視の方針からの製造回帰が強まり、公共投資などの財政出動から、米国の国民中心主義による強い米国への変貌が始まる。

この米国の流れは世界中に伝搬するだろう。グローバリズムは影を潜め、各国が壁を作って自国の国民中心主義となると思われる。国民中心主義は、決して保護貿易による貿易の減少(スロートレード)をもたらすものではない。関税は、2国間協議で決めれば良いので問題はない。とトランプはいう。

日本にとっては、奇跡の吉報である。日本の政府が、トランプに見習って国内への投資、すなわち巨額な財政出動・公共投資に踏み切れば、内需が湧き上がり、日本経済の再起動はたやすい。

米・英と違って、日本には移民問題もないし、グローバリズムと反グローバリズムの対立もない。また、日本は中小製造業の集積国家である。海外にシフトした大手製造業を除けば、日本列島津々浦々にヒト・モノ・カネのものづくり経営資源が温存されている。

さらに、少子高齢化の現実をプラスに捉え、内需に視点を置き換えれば、高齢者向けサービスや商品の需要は膨大に有り、日本がハイテク福祉国家として世界をリードすることができる。

反グローバリズムによる『国民中心主義』の台頭で、日本は再びものづくりの最強国に再復帰できるビッグチャンスがやってきた


4,トランプ時代のものづくり
【摺り合わせ: よみがえる日本人のものづくり】


グローバリズムは、1986年に英国での『金融ビックバン』と呼ばれる金融規制緩和が源である。

かつての世界経済は日・米・欧、先進国10億人の市場競争であったが、その後のベルリンの壁崩壊によって、旧共産主義諸国が市場参入し、60億人の巨大市場と大競争時代が幕を開けた。

安い労働力を背景に、低価格商品が世界を席巻し『価格破壊』の勢いが世界を直撃した。
新興国を中心に、『組み合わせ型』と呼ばれるモジュール生産方式が確立され、韓国・中国などが彗星のごとく台頭し、日本の家電大手企業が、次々と負けていく姿を、我々日本人は見続けてきた。

新興国の台頭による国際水平分業や製造設備の高度化の結果、工業製品のコモディティ化(※コモディティとは、日用品のように一般化し品質での差別化が困難となる製品やサービスをいう)が顕著となり、価格破壊が進行した。品質と機能を重視する日本企業にとっては、逆風であったが、価格破壊もこれで終止符を打つだろう。

米国の製造回帰の流れで、グローバル化の代名詞『国際水平分業』は破壊され、モジュール生産方式の継続は難しくなる。この流れは、真に日本にとってのビッグチャンスである。

日本企業では、モジュール生産方式や国際水平分業があまり成功していない事が幸いする。日本古来のものづくり遺伝子は、『摺り合わせ型』である。世界の新潮流は『モジュール型』が後退し、『摺り合せ型』が再び脚光を浴びるであろう。

日本のものづくりが再び甦るチャンスが到来した。


5,トランプ時代のイノベーション
【人手不足の日本: IoT, 人工知能は日本で花開く】


日本では、完全雇用に近い低失業率が続いている。特に若年労働者の失業率は極めて低く、世界に類を見ない『まさか』である。GDPが伸びず長期デフレ基調の日本で、完全雇用という『まさか』の現象が起きている。その原因が、生産人口の急速減少であることは疑う余地はなく、これが日本の現実である。

業種によっては、深刻な人手不足が企業存続を脅かしており、移民による労働人口増加も検討されているようだが、移民で解決できるほど簡単な問題ではない。

多くのメディアは『人口減少で日本に未来はない』と報道しているが、ポジテイブ発想で考えれば、日本が直面する『人手不足』の現実こそ、日本のものづくり再起動の原動力となるはずである。

生産人口減少こそが日本経済の最大のチャンスと捉えることが出来るのである。

トランプ時代のイノベーションは、IoT / インダストリー4.0であることは明白であるが、インダストリー4.0を提唱するドイツの思想は、『グローバリズム』に立脚したオープン思想が根底にある。国際水平分業にはオープン思想は非常に重要であるが、日本にはなじまない。

日本でのイノベーションは、『人手不足解消』という明確な目的を持つことで、世界に先駆けた『IoT/インダストリー4.0のイノベーション』が実現する。IoTは労働不足を解消する天下の宝刀である。日本こそデジタル化・自動化に本格的に取り組む環境が整っている国は他にはない。

熟練工に恵まれた日本で、人工知能が花開き、生産人口減少を補うサポータとしての人工知能が大活躍する時代が、そこまでやってきている。


6,トランプ時代の成長戦略
【上りエレベータ: 日本のまさかのチャンス】


国民中心主義に潮目が変わるトランプ時代において『グローバル化』による成長戦略は、既に時代遅れとなった。トランプ時代において、グローバル化は『下りエレベータ』。国際化が『上りエレベータ』である。

『上り』に乗る3つの条件を列挙し、本稿の締めとしたい。

①【レガシーの再認識】
レガシーとは直訳すれば『遺産』。過去先人が作り上げた企業文化や企業の歴史再認識が『上りエレベータ』の入り口である。グローバル化の旗印のもとで、レガシーを忘れ、雰囲気の悪くなった企業も多い。これが反面教師であり、『下りエレベータ』の象徴である。

②【アイデンティティーの重要性】

国際化とは、日本人、日本企業であることを明確にすることである。小学生からの英語教育も重要だが、優秀な国際ビジネスマンとは日本語・日本の歴史・日本の文化に熟知し、日本人のアイデンティティーとプライドを強く持った人々である。

トランプ時代の『上り』は、アイデンティティーを失ったグローバル化ではなく、日本人の魂を持った国際化がパスポートである。

③【IoTイノベーション】

イノベーション無くして『上りエレベータ』には乗れないが、ドイツのオープン化を唱えるインダストリー4.0の思想は、トランプ時代では『下りエレベータ』の象徴となるだろう。オープン化は、グローバリズムに基づく国際水平分業をベースにした思想であり、新しい時代の必須条件ではない。

日本製造業の『上りエレベータ』は、人手不足解消の為のイノベーションである。オープン化に惑わされず、レガシーを大切にし日本の熟練工アナログ技術とデジタル技術の融合を図ることが真の日本式インダストリー4.0である。

2017年は、『まさか』の現実化により新しい時代が始まるが、日本の製造業にとっての奇跡のチャンスの訪れである。『To be changed ,Not to be changed』日本はものづくり遺伝子を持つ国家である。『変えていくもの、変えてはならないもの』を再認識する時である。







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著者 高木俊郎

15:38 | オートメーション新聞寄稿記事 | コメント:0 | page top
2016/12/11 【中小製造業IoTの1丁目1番地】・『情報の5S化』
以下は 2016年12月7日のオートメーション新聞 第93号に掲載された寄稿記事です)


【中小製造業IoTの1丁目1番地】





ーー『情報の5S化』ーー


UKブレグジットや米大統領選挙など大番狂わせの結果から、世界的にグローバル経済の行き詰まりが顕在化してきた。グローバル大企業は進路変更を余儀なくされ、中小製造業にも大きな変化が起きてくるであろう。そのため変化への対応が早急に必要である。


この手段として、第4次産業革命イノベーションの重要性を多くの経営者が認識しており、世間での話題も非常に活発になってきたが、思いの外、中小製造業経営者には『雲の上の話』として映っているようである。


『雲の上の話』と映る原因はなにか? を探求し、デジタル化・IoTの1丁目1番地というべき『情報の5S化』の重要性にスポットライトを当ててみたい。


数年前に、独インダストリー4.0によって幕が開いた『ものづくり第4次産業革命』は、今年になって日本でも本格化の兆しがみえてきた。


今年10月に独ハノーバーで『国際板金加工技術見本市(ユーロブレッヒ)が開催され、翌月11月には『FABTEC 2106』が米ラスベガスで開催。日本でも東京で『日本国際工作機械見本市(JIMTOF)が開催された。


今年の見本市での顕著なトレンドは、明らかに『工作機械 メーカの IoT』である。
独ハノーバーでのユーロブレッヒでは、多くの工作機械メーカによって、独自のIoTコンセプトが発表され、魅力的なコンセプトが提案された。


ドイツの主力メーカは、大画面を活用し、分かり易くインパクトある訴求で話題を集めたが、中小製造業の経営者の反応は比較的鈍重である。ユーロブレッヒから帰った日本の中小製造業経営者は、口をそろえ、インダストリー4.0の進化を評価する反面、『自分では使えないだろう』とのマイナーな評価を下している。


ドイツは、インダストリー4.0のスタート時点から産学官が一枚岩となり大上段に構え、アピールをしてきた。そのアピールは、世界に大きな衝撃を与え、世界中の政財界をも動かしてきた。


構想発表から5年を経過し、日本の政界の動きも活発となってきた。
今年の『ものづくり補助金』には『中⼩企業者等が第四次産業⾰命に向けて、IoT・ビッグデータ・AI・ロボットを活⽤する⾰新的ものづくり・商業・サービス開発を⽀援する』と明記されており、これが採択の条件となっていることが伺える。


中小製造業に於いても、これらの前向きな環境を先取りし、現実的な取り組みを開始する事が得策であるが、残念なことに、IoTとは何か? IoTの投資で何がメリットなのか? がわからず、悩んでいる経営者が大半である。


世間が大きく取り上げるIoTは、中小製造業経営者にとっては『雲の上の話』である。


その理由のひとつに、レガシー(Legacy)に対する意識の違いがある。レガシーとは、直訳すれば『遺産』のことであるが、現在工場内に存在する電子デバイスや各種データをレガシーと呼ぶ。


中小製造業では、NC機の導入にあわせ、思った以上に工場事務所のデジタル化が進んでいる。CADシステムや自動プロ、見積ソフトや工程管理・生産管理に始まり、図面スキャナーなど、数多くの電子武装を行った結果、膨大な電子データが工場事務所内に存在している。


これが中小製造業を支える財産であり、こうしたレガシーを無視してIoTの構築は不可能である。工作機械メーカ各社が提唱する『つながる工場』で、機械同士がネットワークされても、中小製造業でのメリットは少なく、やはり『雲の上の話』に聞こえてしまう。


ドイツはじめとするインダストリー4.0推進部隊は、様々な素晴らしい青写真を示しているが、中小製造業のレガシーに着目していない。正確に表現すれば、着目しないのではなく、着目できないのである。


レガシーは歴史の結晶であり、過去の古いシステムや閉鎖的な独自システムも存在し、レガシーシステムを解析し理解するのは難しい。中小製造業の一社一社ごとのレガシーを前提として、IoTシステムを構築するのは容易ではないため、第4次産業革命と称し、レガシーを無視する『破壊的イノベーション』の発想が主流となる。


この現実が結果として、中小製造業の現状や思惑を無視した、絵空事となり『雲の上の話』になってしまう。


では中小製造業は、どのようなコンセプトを持ってIoTを推進すべきか。


この答えが、IoTの1丁目1番地と言える『情報の5S化』である。
トヨタ自動車によって提唱され、全世界に広まった5Sは、日本の中小製造業では、非常に高い水準で実施されているが、一旦『情報』に目を転ずると、とても5S化されているとは言いがたい。


事務所の片隅に昔の図面が山のように積まれ、提出済みの見積書は個人のパソコンに入りっぱなし。CADデータも自動プロのデータも、個人のパソコンの中でバラバラに管理されており、企業全体から見れば『情報のゴミ箱』と言っても過言ではない状況すら存在する。


情報が社有化され、会社のシステムとして情報が管理されない限り、会社存続にも重要な危惧が生じる。
中小製造業のIoTへの道のりは、経営者自らが『情報の5S化』の重要性を認識し、自社の実態を正確に把握しなければならない。IoTの1丁目1番地『情報の5S化』。


『情報の5S化』を念頭に置き、自社の工場事務所を自らが再点検することで、思わぬ『気づき』に出会うはずである。この『気づき』から自社のIoTの青写真が描けるはずである。


この青写真があれば、世間のバズワードに惑わされず、未来見向かう最適なソリューションを発見することが出来ると確信する。














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著者 高木俊郎


18:10 | オートメーション新聞寄稿記事 | コメント:0 | page top
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